SaaSのデータ移行不安を解消するには?顧客に効くコンテンツ7つの型
※本記事は2026/08/02時点での情報を基にしており、閲覧時点では内容や状況が変わっている可能性があります。
SaaSの商談やオンボーディングが、顧客のデータ移行への不安を理由に止まっていませんか? 「データが消えるのではないか」「現場が付いてこないのではないか」といった懸念は、商談の場での口頭説明だけでは、なかなか解消できないものです。
そこで本記事では、SaaS事業者の視点から、顧客の不安を解消するコンテンツ7つの型と作り方の5つの手順を解説します。
データ移行の不安がSaaS導入をためらわせる理由

提案内容には納得してもらえたのに、「今のデータを移すのが心配で」といった理由で、契約が先送りになる――SaaSの営業やカスタマーサクセスの現場では、このような停滞が起こります。ここではまず、データ移行の不安が導入の壁になっている実態と、コンテンツで先回りする考え方を押さえておきましょう。
SaaS利用は8割超でも、乗り換えの不安はなくならない
データ移行への不安は、クラウドそのものへの抵抗とは別のところにあります。クラウドを使うこと自体は、もう特別な選択ではありません。総務省の令和6年通信利用動向調査(企業編)によると、2024年にクラウドサービスを全社的または一部の事業所・部門で利用する企業は、合計80.6%でした。
一方、オンプレミス型システムから、SaaSへ乗り換えた企業を対象とするjinjerの調査では、移行時に苦労した点として「従業員や現場からのシステム移行に対する抵抗があった」が18.5%でした。「オンプレミス環境からSaaS環境へのデータ移行に時間がかかった」は16.7%です。
同じ調査で、SaaS導入後の業務効率化について「あまり満足していない」「非常に不満」の合計は11.1%でした。「非常に満足」「おおむね満足」の合計は51.8%です。
この調査からは、導入後の業務効率化を肯定的に評価する回答が半数を超える一方、乗り換えの局面では現場の抵抗や移行時間が課題になっていることが読み取れます。
※出典:令和7年版情報通信白書 クラウドサービス(総務省) / 令和6年通信利用動向調査 企業編 問3(1)クラウドサービスの利用状況(e-Stat) / オンプレミス型システムからSaaSへの乗り換えに関する実態調査(jinjer株式会社)
データ移行の不安を解消するコンテンツとは何か
データ移行の不安を解消するためのコンテンツとは、移行の全体像・手順・所要期間・データの扱いを、顧客が自分で確かめられる形に整えた資料・動画・FAQ・事例などです。
その対象には、契約前の商談で使う説明資料と、契約後のオンボーディングで使う案内の両方を含みます。コンテンツに関する不安は、契約の前後を通じて形を変えながら続くため、どちらか一方だけを整えても十分とは限りません。
言い換えると、営業担当者やカスタマーサクセス担当者が口頭で答えてきた内容を、顧客がいつでも見られる形に変えたものです。どのようなコンテンツが当てはまるのかは、後半で7つのコンテンツとして一つずつ取り上げます。以下、本記事ではこのコンテンツの定義を基に、顧客が抱く3つの不安と、それに対応する7つの型・作り方の5つの手順を順に見ていきます。
営業とCSの個別対応では不安解消が追いつかない理由
口頭での説明には、その場で疑問に答えられる良さがあります。しかし、個別対応だけに頼ると、同じ説明が商談のたびに繰り返され、回答の質も担当者によってばらつきが出る可能性があります。
さらに、担当者が退職や異動でいなくなると、積み上げてきた回答のノウハウごと失われかねません。顧客の側から見ても、聞かないと分からない状態そのものが心理的なハードルです。
説明をコンテンツにすれば回答は会社の資産として残り、顧客は自分のペースで確認できます。営業・CS・コンテンツの3者で役割を分担する体制することで、説明の繰り返しと担当者ごとのばらつきなどを減らせます。
SaaSのデータ移行で顧客が抱く3つの不安

「データ移行が不安」と一言でいっても、その実態は一様ではありません。上記の実態調査や移行時の論点を基に、顧客の不安を大きく3つに整理しておきましょう。
不安1: 大切なデータが消える・壊れるのではないか
データの移行に関して顧客が抱く不安として、まず挙げられるのが、データそのものに関する不安です。顧客名簿・取引履歴・過去の帳票は、顧客にとって事業の記録です。移行ミスによる消失や文字化け・項目ずれなどは、業務に悪影響を及ぼす可能性があります。
移行後に一部のデータが欠けるような事態を避けるには、事前確認と移行後の検証方法をなどを、きちんと示す必要があります。どの項目をどう突き合わせれば移行が正しく終わったと言えるのか、その判断の基準を先に伝えておきましょう。
また、情報漏洩への心配も、この不安の延長線上にある論点です。総務省の通信利用動向調査では、クラウドサービスを利用せず今後も予定のない企業に対し、利用しない理由の一つとして、セキュリティへの不安を挙げるかどうかを継続的に尋ねています。
※出典:令和6年通信利用動向調査 企業編 問3(3)クラウドサービスを利用しない理由(e-Stat) / 平成26年通信利用動向調査 企業編 クラウドサービスを利用しない理由(e-Stat)
不安2: 自社だけで移行作業をやり切れるのか
データが無事かどうかに加えて、作業の負荷も顧客を悩ませる大きな要因の一つです。移行対象データの棚卸しや形式の変換・重複や表記揺れの整理は、専任のIT担当者がいない会社にとって重い作業です。
誰が・どれくらいの時間をかけて・何をすればよいのかが見えないままでは、負荷を見積もれず、判断が先送りされてしまう可能性があります。「自分たちの人員と知識でやり切れるのか」という見通しの立たなさが、2つ目の不安の正体といえるでしょう。
さらに、ベンダーがどこまで支援するのか、境界線が示されていないことも、顧客の見通しを悪くしてしまいます。作業分担が曖昧な提案では、顧客が自社の負担を判断できません。
不安3: 移行の間、業務が止まるのではないか
3つ目は、移行期間中の業務への影響です。受発注や勤怠のような日常業務を支えるシステムが止まってしまうと、その間の売上や社内対応に影響が出てしまいかねません。切り替え日の運用や停止時間の見込みが分からなければ、社内を説得する材料も揃わないでしょう。
加えて、現場の心理的な抵抗も、この不安を大きくします。前述の実態調査でも「従業員や現場からのシステム移行に対する抵抗があった」は18.5%でした。操作が変わること自体を、現場は負担と受け止めるためです。業務への影響を抑える計画と、現場が慣れるまでの支援をあらかじめ示すことが大切です。
※出典:オンプレミス型システムからSaaSへの乗り換えに関する実態調査(jinjer株式会社)
データ移行の不安を解消するコンテンツ7つの型

上記の顧客の不安を解消するには、その方法を、顧客がいつでも確かめられる形にしておくことが大切です。不安を解消するためのコンテンツは、以下の7つの型に整理できるので、詳しく確認していきましょう。
型1: 移行プロセス全体図で「いつ何が起きるか」を見せる
まずは、データ移行の全体像を1枚で示す図を用意しておきましょう。申し込みから利用開始までの期間や工程の流れをはじめ、顧客側の作業とベンダー側の作業の分担を、時系列で見えるようにします。
自社が社内で回している移行の手順を、そのまま顧客向けの1枚図へ変換する発想です。契約からデータの受け渡し・テスト・本番切り替えまでの工程を、顧客の目線で並べ直しましょう。
データ移行の全体図により、期間や分担が見えない状態を具体的な確認事項に変えられます。商談の早い段階で提示すれば、顧客は自社側の作業を検討しやすくなるでしょう。
型2: データ移行ガイドと事前準備チェックリスト
全体図で流れをつかんでもらったら、次は顧客側の作業を具体化します。移行対象データの洗い出し方・ファイル形式の整え方・事前に準備するものを、作業の順番に沿って文書化したものが移行ガイドです。
チェックリスト形式にしておくと、顧客は自社の準備状況を確かめられます。「この項目を埋めれば準備が整う」ことを示せるチェックリストは、上記の「やり切れるのか」といった不安への具体的な回答になります。
また、営業担当者にとっても、移行ガイドとチェックリストは、商談で提示できる説明材料です。ガイドの内容から、顧客はサポートの範囲を事前に確認できます。
型3: 移行手順のチュートリアル動画
文書のガイドを補うのが、実際の操作を見せるための動画です。CSVファイルの取り込みや項目のマッピング設定のような画面操作は、画面の遷移を動画で示すと確認しやすくなります。
実際の操作を見せることで、顧客は作業の流れを事前に確認できます。移行作業のつまずきやすい箇所ごとに、短い動画へ分ける方法も有効です。なお、ITツールの導入マニュアルを動画化する考え方と手順は、次の記事で詳しく解説しています。こちらも参考にしてください。
型4: 移行FAQとトラブル対処集
上記のように、移行ガイドや動画などを用意しても、顧客が個別に抱く疑問は残ります。「移行にどれくらいかかりますか」「古いデータはどうなりますか」といった質問は、商談で繰り返し尋ねられがちです。
そこで、繰り返される質問と回答をFAQとして公開すれば、顧客は聞く前に自分で答えを確認できます。社内で使う用語ではなく、顧客が実際に口にした言い回しで質問を並べると、読み手は自分の疑問を見つけやすくなります。営業・CSが回答内容を共有する用途にも使えるため、担当者による説明のばらつきを抑える助けにもなるでしょう。
型5: 移行を乗り越えた導入事例と顧客の声
顧客に説明を尽くしても、「自社でも進められるのか」という疑問は完全には消えないものです。そこで、同じ規模・同じ業種の会社が移行した過程を、きちんと伝えるための導入事例を用意しましょう。
事例に移行期間・データ量・つまずいた点と対応などを記載しておけば、読者は自社の条件と比較しやすくなります。成功した結果だけではなく、途中の判断や対処も判断材料になるためです。
顧客の声を載せるときは、移行前に何を不安に感じていたかも確認しましょう。これから検討する読者が、自社との共通点を見つけやすくなります。
型6: お試し移行で移行後の画面を先に見せる
他社の事例を読んでも、自社のデータが移行後にどう見えるかまでは分かりません。そこで、本番前に一部のデータをテスト環境に移し、項目の対応・表示結果・処理時間を、顧客自身に確かめてもらう方法があります。
実施できる範囲は、製品仕様・契約・データの機密性によって異なります。実データを扱うなら、利用目的や保管期間、削除方法についても事前の合意が必要です。テスト移行を実施できれば、言葉だけでは確認しにくいデータの整合性や操作の見通しを具体的に確かめられます。
※出典:Execute migration to cloud(Microsoft Learn) / Cut over(AWS Prescriptive Guidance)
型7: セキュリティとデータの扱いを説明するページ
お試し移行まで用意しても、預けたデータがどう扱われるのかという不安は残ります。データの保管場所・暗号化の方式・バックアップの分担・解約時の返却方法を、専門用語をかみ砕いて説明しましょう。
クラウドサービスでは、事業者と利用者がそれぞれ責任を担います。ただし、責任の境界はサービスや契約によってさまざまです。どこまでを事業者が担い、どこからが顧客の役割かを明示すると、セキュリティに関する確認事項が具体的になります。
第三者認証の取得状況やデータ保護方針の公開は、顧客が安全性を検討する際の確認材料になり得ます。取得している認証の範囲や対象サービスも併記して、誤解を避けることが大事です。
ここまで挙げた7つのコンテンツを、対応する不安と合わせて一覧にしました。どれから制作するかを検討する際の、早見表として活用してください。
| コンテンツ | 主な形 | 対応する不安 |
|---|---|---|
| 移行プロセス全体図 | 1枚図・スライド | 不安2・不安3 |
| 移行ガイド・チェックリスト | 文書・PDF | 不安2 |
| チュートリアル動画 | 動画 | 不安1・不安2 |
| 移行FAQ・トラブル対処集 | Webページ | 不安1~3全て |
| 導入事例・顧客の声 | 記事・動画 | 不安1~3全て |
| お試し移行の案内 | 体験プログラム | 不安1 |
| セキュリティ説明ページ | Webページ | 不安1 |
※出典:Shared responsibility in the cloud(Microsoft Learn) / クラウドサービス(SaaS)のサプライチェーンリスクマネジメント実態調査(IPA)
データ移行の不安解消コンテンツをつくる5つの手順

制作するコンテンツが決まったら、次は作り方のポイントを押さえておきましょう。顧客対応の記録を起点に、最小構成で作って効果を測るまでの5つの手順を紹介します。
手順1: 商談と問い合わせの記録から不安の言葉を集める
コンテンツをつくり始める前に、まずは材料を集めましょう。顧客の不安は推測で書かずに、商談メモ・問い合わせ履歴・失注理由の記録から、実際に使われた言葉のまま拾う必要があります。
「データが消えないか心配」「移行はそちらで全部やってもらえるのか」といった表現は、コンテンツの見出しや本文の候補になります。顧客が使った言葉を基に制作すれば、実際の疑問に沿った内容を作りやすくなるでしょう。データの収集先は営業とCSの両方です。契約前と契約後では、出てくる不安の種類が変わるためです。
手順2: 不安の種類と顧客接点をひも付ける
商談メモや問い合わせ履歴から集めた顧客の言葉は、そのままではコンテンツになりません。拾った不安を「消える・壊れる」「やり切れない」「業務が止まる」といった種類に仕分けして、「どの接点で解消すべきか」を決めておきましょう。接点は商談前・商談中・契約後の3つで考えると、整理しやすくなります。
| 接点 | 顧客の状態 | 合うコンテンツ |
|---|---|---|
| 商談前 | 情報収集しながら比較している | 移行FAQ・導入事例・セキュリティ説明ページ |
| 商談中 | 稟議と意思決定の材料を探している | 移行プロセス全体図・お試し移行 |
| 契約後 | 実際の移行作業を進めている | 移行ガイド・チュートリアル動画 |
はじめから全ての接点を埋める必要はありません。自社の商談でつまずきが多い接点から、1つずつ用意していきましょう。なお、契約後に使うコンテンツを商談前から大量に渡すと、情報過多で顧客を迷わせる可能性があります。接点ごとに渡す量を絞り込むのも、この紐付け作業の狙いです。
手順3: 手元の資料から不安解消コンテンツを最小構成で作る
どの不安をどの接点で解消するかが決まったら、制作に入りましょう。ただし、ゼロから書き起こす必要はありません。営業が使っている説明資料・サポートの回答メール・マニュアルの該当章は、既にコンテンツの素材です。
既存の資料を顧客向けの言葉に整え直せば、制作工程を短縮できます。社内向けの表現や専門用語を、顧客が理解できる言葉に置き換えるだけでも価値があります。完成度を追って公開が遅れるよりも、小さく出して顧客の反応を確かめながら直していきましょう。
手順4: 作ったコンテンツを商談前と契約後の導線に置く
コンテンツには、必要とする顧客まで届ける導線が必要です。作って公開しただけでは、不安を感じている顧客の目に届かないことも考えられます。
例えば、料金ページの近くに移行プロセスの全体図を置くようにすると、料金を調べに来た顧客が、そのまま移行の流れまで確認できます。商談後のフォローメールには移行FAQを添え、契約直後の案内にはガイドと動画をひも付ける、といった具合です。
顧客が不安を感じる接点に合わせて配置することが原則です。営業とCSのメンバーに「どの場面でどれを渡すか」を共有すると、日々の顧客対応で使いやすくなります。
手順5: 問い合わせ数と移行完了率でコンテンツの効果を測る
置いた後は、効果の確認に移りましょう。移行に関する問い合わせ件数・同じ質問の反復数・オンボーディング完了までの日数・移行フェーズでの離脱率を、コンテンツの閲覧・利用状況と併せて確認します。最初から全部の指標を追う必要はありません。問い合わせ件数と同一質問の反復数の2つだけでも、変化の手がかりはつかめます。
また、公開前後の比較だけでは、変化の原因をコンテンツに特定できません。対象顧客が実際に閲覧したか、顧客属性や他の施策に違いがないかも確認しましょう。営業・CSの記録やユーザーインタビューも組み合わせてください。測るべき指標と確認方法を最初に決めておくと、コンテンツを継続的な改善の対象にできます。
※出典:Measuring the success of your service(GOV.UK) / How user research improves service design(GOV.UK)
データ移行の不安解消に動画を生かす方法

操作の流れを見せる場面では、動画が持ち味を発揮します。実際の画面の動きをそのまま示せることは、文書にはない動画の強みです。
ただし、動画だけで顧客の購買不安まで解消できるとは限りません。文書・FAQ・個別支援と組み合わせて、問い合わせの変化を確かめながら生かしていきましょう。
※出典:A comparison of paper-based and video tutorials for software learning(Computers & Education) / Supporting motivation, task performance and retention in video tutorials for software training(Educational Technology Research and Development) / The effect of the segmentation of video tutorials on user's training experience and performance(Computers in Human Behavior Reports)
操作画面を見せると顧客は作業の流れを確認しやすい
データ移行のような複数の画面をまたぐ作業では、静止画のマニュアルだけでは画面間の動きが伝わりにくいことがあります。実際のマウスの動きと画面の切り替わりを収めた動画なら、顧客は自分の作業の流れを事前に確認できるでしょう。
動画は、画面の変化や操作の順番を具体的に示す手段です。不安2の「やり切れるのか」を検討する材料になります。移行手順に限らず、ソフトウェアの操作説明動画そのものの作り方は、以下の記事で詳しく解説しています。
画面が変わるたびに動画を作り直さない仕組みも用意する
操作の流れを伝えられる動画ですが、作って終わりにはできません。SaaSはアップデートで画面が変わり続けるため、移行手順の動画も古くなっていく点は避けられないでしょう。実際の画面と食い違うと、顧客を迷わせる可能性があります。
そこで、動画をシーン単位で分割しておけば、画面変更の際に修正範囲を絞りやすくなります。AI音声に対応するツールなら、テキストを修正して音声を更新できるため、録り直しの負担も抑えられるでしょう。アップデートに対応するチュートリアル動画の運用方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
※出典:How to use the text to speech feature(Microsoft Support)
少人数のCSチームでも動画を内製できる範囲がある
移行手順の基本的な動画は、画面収録ツールとAI音声を使って作る方法があります。ただし、実際の顧客データや本番画面を使うなら、社内の承認手順とデータの取り扱いルールが必要です。
1本の動画に1つの作業だけを収める短い形式なら、CS担当者が通常業務と並行して増やせます。顧客のつまずきが多い場面から短い動画を作り、利用状況を見ながら改善していきましょう。上記の手順5の効果測定と組み合わせて、動画を見た顧客の問い合わせや移行状況を確認してください。
データ移行コンテンツで注意したい3つの失敗パターン

費用や期間を小さく見せて契約につなげても、移行後に見積もりと違えば信頼を損ないかねません。良い面だけを見せていると、顧客の不安を解消するどころか、不信の種になる可能性があるので注意しましょう。
また、移行の完了をゴールに設計してしまうのも、つまずきやすいポイントです。データを移し終えても、現場が新しいシステムを使いこなせるとは限りません。コンテンツには、移行後の定着支援まで含めて用意しましょう。
加えて、経営層向けの説明に偏らないように注意が必要です。稟議用の資料だけでは、実際に操作する現場には届きません。誇張を避けて、移行後の定着まで扱うことが大事です。現場向けの案内もきちんと用意しておきましょう。
※出典:オンプレミスからSaaS移行の注意点(ジョーシス) / オンプレミス型システムからSaaSへの乗り換えに関する実態調査(jinjer株式会社)
SaaSのデータ移行不安に関する質問(FAQ)
Q. 移行費用はどこまで開示すべきですか?
A. 概算の幅と、金額が変わる要因まで示す方法があります。データ量やカスタマイズの有無で費用が変わるなら、その条件も示すことで、顧客は予算を検討しやすくなるでしょう。
見積もりに入っていなかったコストが後から出て予算を超えることは、移行でつまずきやすい点です。確定額を提示できない段階でも、費用が変動する条件は説明できます。
Q. 顧客から解約時のデータ返却を聞かれたらどう答えるべきですか?
A. 返却できるデータの形式・対応できる期間・費用の有無を、あらかじめ明文化しておきましょう。実際の回答は、自社の契約条件や製品仕様と一致させる必要があります。
契約終了時のデータの返還・消去に関する条件は、契約で定めるべき重要な論点です。セキュリティの説明ページにも、解約時のデータの扱いを含めるようにしましょう。
Q. 不安解消コンテンツを作る余裕がないときは何から始めますか?
A. データ移行についてよく聞かれる質問と回答を、1ページにまとめるところから始めましょう。商談と問い合わせの記録をたどれば、繰り返し尋ねられる質問と、既に営業やCSが答えてきた回答が揃います。そのページで顧客の反応を確かめてから、移行プロセスの全体図や操作の動画へ広げるかを検討しましょう。
移行不安の解消コンテンツは営業資産になる
顧客のデータ移行の不安を解消するコンテンツは、サポート文書の延長にとどまらず、契約前の商談から契約後の定着まで使える営業資産です。不安を「消える・壊れる」「やり切れない」「業務が止まる」といった種類に分解し、7つのコンテンツから自社に合うものを選んで、不安を解消するためのコンテンツを制作しましょう。
コンテンツの素材は商談メモや問い合わせ履歴にあります。日々の顧客対応で蓄積してきた回答を、顧客が自分で確かめられる形に変えることが大事です。まずは、直近の商談で聞かれたデータ移行への不安の言葉を書き出してみましょう。それがどのコンテンツで対応できるかを考えるのがスタートです。