Bending Spoons、Airtableを12億8,500万ドルで買収・Nasdaq上場後で初
※本記事は2026/08/05時点での情報を基にしており、閲覧時点では内容や状況が変わっている可能性があります。
イタリアのBending Spoonsは8月4日、米Airtableを買収する最終契約を結んだと発表した。全額現金の取引で、企業価値は12億8,500万ドルとなる。
Airtableは、表計算の使いやすさとデータベースの機能を組み合わせた業務基盤を提供する。2021年の資金調達前評価額は110億ドルだった一方、今回の取引が示す株式価値は約22億5,000万ドルだ。
全額現金で発行済み株式の全てを取得
発表によると、Bending SpoonsはAirtableの発行済み株式の100%を取得する。Airtableの純現金・現金同等物残高を加味した株式価値は、約22億5,000万ドルとなる。
企業価値12億8,500万ドルの取引
取引は全額現金で行われる。企業価値の12億8,500万ドルに、Airtableの純現金・現金同等物残高を反映した結果が、株式価値の約22億5,000万ドルだ。最終額は、取引完了時の通常の価格調整を受ける。
Bending SpoonsのCEO兼共同創業者であるルカ・フェラーリ氏は、Airtableをチームのデータ整理と重要な業務手順の管理を作り替えてきたブランドだと位置付けた。
Airtable共同創業者兼CEOのハウイー・リウ氏は、Bending Spoonsとの提携により、構想を進めるための資源と長期的な関与を得られると説明した。いずれもSECへ提出された発表資料に記載された説明である。
Airtableは表計算の操作感とデータベース機能を組み合わせる
Airtableが提供するのは、表計算ソフトに近い操作感とデータベースの機能を組み合わせた業務基盤だ。案件管理・在庫・採用の進捗といった業務に合わせ、コードを書かずにアプリを構築できる。
作成したアプリには、情報を受け付けるフォームや自動処理を組み込める。専任の開発者を待たず、業務を担うチームが用途に合わせて仕組みを調整できる点が製品の特徴だ。
完了は2026年内の見込み
取引の完了には、規制当局の承認と通常の完了条件の充足が必要となる。SEC提出資料によると、完了は2026年内を見込むが、予定通りに完了する保証はない。
両社は完了までそれぞれ独立して事業を続ける。Bending Spoonsは、チームと業務手順を一つの柔軟な作業空間にまとめるAirtableの中核機能へ、長期的に投資する方針を示した。
リウ氏は、将来のAIネイティブな基盤を構築する意向にも言及している。ただし、確認したForm 6-Kと添付リリースの範囲では、買収後の具体的な製品計画は示されていない。
Nasdaq上場後で初の買収
Bending Spoonsの株式は7月1日、Nasdaqで取引を開始した。今回のAirtable買収は、同社の発表によると上場後初の買収に当たる。
同社はEvernote・WeTransfer・Eventbrite・Vimeoなどを買収してきた。SECへ提出した発表資料では、これらを現在の主要事業として挙げている。
2021年の資金調達前評価額は110億ドル
今回の取引は、Airtableが2021年の資金調達時に示した評価額との差でも注目される。ただし、二つの数字は評価の時点と条件が異なるため、単純な下落率だけで捉えるには注意が必要だ。
2021年には7億3,500万ドルを調達
Airtableは2013年に創業した。2021年12月には、投資会社XNが主導するシリーズFで7億3,500万ドルを調達。公式発表による資金調達前評価額は110億ドルで、累計調達額は13億6,000万ドルとなった。
今回公表された株式価値は約22億5,000万ドルである。一方、2021年の110億ドルは新たな資金が入る前の評価額だ。どちらもAirtableの株式価値に関する数字だが、算定時点と取引条件は同じではない。
なお、110億ドルに調達額を加えた資金調達後の評価額は約117億ドルに当たる。報道ではこの水準を当時の最高値として扱うものもあり、110億ドルと117億ドルはいずれも同じシリーズFを指す。
評価差だけでは要因を切り分けられない
2021年の資金調達前評価額と今回の株式価値には大きな差がある。ただし、公表された二つの評価額だけでは、市場環境・成長見通し・収益性など、どの要因がどの程度影響したかを特定できない。
評価額の比較では、企業価値と株式価値の違いにも注意が要る。今回の企業価値は12億8,500万ドルで、純現金・現金同等物残高を反映した株式価値は約22億5,000万ドルとされる。
年間経常収益は約4億8,000万ドル
評価額の変化とは別に、Airtableの年間経常収益は前年同期から増加している。少なくとも、この指標は事業規模が前年を上回ったことを示す。
前年同期比で20%を超える伸び
Bending Spoonsの発表によれば、Airtableの年間経常収益は2026年6月時点で約4億8,000万ドルに達した。前年同期比で20%を超える伸びとなる。
年間経常収益は、現在の契約・料金・顧客が続く前提で、継続収益を1年分に換算した指標だ。会計基準に基づく売上高とは異なる非GAAPの指標であり、企業全体の収益性を単独で示すものではない。
Airtableは、50万を超える組織とFortune 100企業の80%が利用していると説明する。これらはAirtableと買収当事者が公表した自己申告値である。
ARRの伸びと評価額は別の情報を示す
ARRの増加は、継続課金による収益規模が前年同期を上回ったことを示す。一方、取引時の評価額には将来の成長見通し・収益性・取引条件なども関わる。
そのため、ARRが伸びている事実だけでAirtableの事業全体を評価することはできない。反対に、評価額が2021年を下回った事実だけで事業の縮小を断定することもできない。
AirtableはSuperagentを公開
Airtableは2026年1月27日、複数のAIエージェントが連携して調査や分析を進める「Superagent」を公開した。同社によると、複数エージェントの連携を基盤とする初の単独製品に当たる。
AirtableはSuperagentの発表で、自社をAIネイティブな基盤へ再構築する方針を示した。今回の買収発表でもAIネイティブな将来像に言及したが、買収後にどの機能へ投資するかは確認した資料の範囲で明らかにしていない。
買収後の運営方針で残る確認点
利用企業にとっての焦点は、取引完了後に料金・機能・データの取り扱いがどうなるかだ。現時点では、両社が独立運営を続けることと、Bending Spoonsが長期投資の方針を示したことが公表されている。
Bending Spoonsが説明する買収後の運営
Bending SpoonsはSEC提出資料で、買収した事業に深い変革と継続的な最適化を加え、収益を持続的に拡大する戦略を採ると説明した。また、重要な事業を売却したことはないとしている。
過去の買収後には、人員や製品を大きく見直した事例が報じられてきた。ただし、確認したAirtable買収のForm 6-Kと添付リリースには、具体的な人員計画・料金変更・機能統廃合は記載されていない。
料金・機能・データ方針は今後の確認事項
Airtableは、業務データに加えてフォームや自動処理を組み合わせて使われる。買収後に料金・機能・データ方針が変更された場合、影響の範囲は各組織の利用状況次第だ。
取引は規制当局の承認と通常の完了条件を残しており、完了までは両社が独立して運営される。利用企業に関する具体的な条件は、取引完了後を含む今後の公式発表が判断材料となる。
※出典:Form 6-K(米国証券取引委員会) / Bending Spoons has entered into a definitive agreement to acquire Airtable for $1.285 billion(Bending Spoons/SEC提出資料) / Airtable secures $735M to invest in its connected apps platform(Airtable) / Introducing Superagent: The Multi-Agent System That Delivers Finished Work(Airtable) / Templates(Airtable) / Building and sharing forms in Airtable(Airtable Support) / Airtable Automations(Airtable) / Bending Spoons S.p.A. announces closing of initial public offering(Nasdaq) / Understanding Monthly Recurring Revenue and Annual Recurring Revenue(Stripe)