Google、Gemini 4 Argonを発表――まずFairwind Programの「信頼されたサイバー防御者」に、導入価格はGPT-6.1 Solと同じ$2/$10

Google、Gemini 4 Argonを発表――まずFairwind Programの「信頼されたサイバー防御者」に、導入価格はGPT-6.1 Solと同じ$2/$10

※本記事は2026/10/02時点での情報を基にしており、閲覧時点では内容や状況が変わっている可能性があります。

Googleは9月30日(現地時間)、新しいフロンティアモデル「Gemini 4 Argon」を発表した。提供はFairwind Programを通じた「信頼されたサイバー防御者」から始まり、開発者・企業・消費者への提供は「できるだけ早く」とされ、時期は示されていない。

導入価格は100万トークンあたり入力$2・出力$10で、前日に報じたOpenAIのGPT-6.1 Solと同じ数字だ。導入期間が終わると入力$4・出力$20になる。英語版と日本語版の公式ブログに終了時期は無いが、インドネシア語版の公式ブログは12月31日までと明記した。

Googleが示した性能値には、第三者の公開ランキングで確認できるものと、自社計測のものが混在する。本記事では、数値の出どころと、誰がいつ使えるのかを分けて整理した。

9月30日の発表、提供はFairwind Programから

発表は、Google DeepMindのKoray Kavukcuoglu氏(SVP兼GoogleのChief AI Architect)の名義で公式ブログに掲載された。公開は9月30日20時(UTC)で、日本時間では10月1日の午前5時に当たる。

発表の冒頭で提供範囲を限定した

ブログ冒頭の一文は “Today, we’re announcing our new frontier model, Gemini 4 Argon, which is rolling out to a set of trusted cyber defenders through our Fairwind Program.” だ。

新しいフロンティアモデルを、Fairwind Programを通じて一部の信頼されたサイバー防御者に展開し始めるという内容になっている。重点領域には、実務のソフトウェア開発・法務や金融を含む企業の知識業務・サイバーセキュリティの防御の3つを挙げた。

開発者・企業・消費者への提供は「できるだけ早く」

Googleは「この水準のフロンティア能力を安全に公開するには、段階的な手順が要る」と説明した(原文は英語、編集部訳)。早期のテスターの意見でガードレールを改良し、その後に開発者・企業・消費者に「できるだけ早く」提供するという。

ブログの結びには、一般への提供は「有料APIの顧客とGoogle AI Ultraの契約者から」始めると書かれている。順序は示されたが、時期の記述は無い。

GoogleのGeminiモデル製品責任者Tulsee Doshi氏はCNBCに、「この形で展開を始めることで確信が高まるだけでなく、サイバー防御に強いモデルをできるだけ早く防御者の手に届けられる」と語った(原文は英語、編集部訳)。

「信頼されたサイバー防御者」と「信頼されたテスター」

本記事では、原文の “trusted cyber defenders” を「信頼されたサイバー防御者」と訳す。ただし、一次情報の中でも提供先の呼び方は一つではない。

ブログの結びは「サイバー防御者と信頼されたテスター」と2つの語を並べた。Google DeepMindのXの投稿は、Fairwindを通じた提供先を「信頼されたテスター」と呼んでいる。

Demis Hassabis氏の投稿は「政府と信頼されたサイバー防御者」とした。2つの語が同じ集団を指すのか、別の集団なのかは一次情報に書かれていない。

Fairwind Programの対象と条件、日本での提供

Fairwind Programは、Googleが9月2日に始めた限定アクセスの枠組みだ。開始時の提供はGemini 3.8 Flash CyberとCodeMender(脆弱性の調査と修正を担うGoogleの仕組み)で、参加組織は650を超えるとされた。

対象は政府・重要インフラ・中核的な技術基盤の3区分

現在のFairwindのページは、一部の参加組織がGemini 4 Argonを独占的に使え、CodeMenderと組み合わせられると説明している。

対象は「政府と国のサイバー当局」「重要インフラの運営者」「中核的な技術基盤」の3区分で、重要インフラには医療・通信・エネルギー・金融網が含まれる(原文は英語、編集部訳)。防御の評価に取り組む学術機関の申し込みも歓迎するとした。

社内の防御チームに限定、用途は防御と学術研究

Argonを使えるのは、社内のサイバーセキュリティ・インシデント対応・ペネトレーションテストのチームに限られる。組織は従業員のアクセスと利用を記録し、フィッシング耐性のある多要素認証(MFA)を含む条件に同意する。

アクセス権の共有・再配布・販売は認められず、Googleは申し込んだ組織の身元調査も行う。許される用途は、防御と学術研究を目的とした「承認された脅威シミュレーション・リバースエンジニアリング・マルウェア解析」を含む二重用途の作業だ。

禁止される作業について、原文は “Malicious tasks such as creating malware are not permitted.” と書く。マルウェアの作成のような悪意ある作業は認められない。

申し込みはrsvp.withgoogle.comのフォームで受け付ける。対象外の組織について、Googleは「公開されているモデルとCodeMenderを組み合わせて、コードを守ることができる」とした(原文は英語、編集部訳)。

APIの一覧に記載はなく、日本での時期も示されていない

本記事の確認範囲では、10月2日時点でGemini APIのモデル一覧・価格ページとVertex AIのモデル一覧に、Argonの記載は見つからなかった。3つのページはいずれも10月1日(UTC)に更新されている。

一般提供の入口とされるGoogle AI Ultraは、Geminiのヘルプページの提供国一覧に日本を含む。ただし、ArgonがUltraに来たときに日本で使えるのか、それがいつかは一次情報に書かれていない。窓の杜も、Argonは現時点で一般公開されていないと報じた。

第三者の順位表で確認できる値とGoogleの自社計測

Googleが挙げた性能値は、出どころで2つに分かれる。Googleが公開した評価方法の資料(5ページ)は、Argonの結果をGemini APIの思考設定を最も高くして測ったとし、ベンチマークごとに数値の出どころを書き分けている。

Vals Index・AutomationBench・CWE-benchは公開の順位表に載る

Vals AIの総合指標Vals Indexでは、Argonが68.90で41モデル中1位だった(9月30日更新)。2位はClaude Sonnet 5.5の67.04だ。ZapierのAutomationBenchでも、Gemini 4 Argon(High)が51.29%で1位に載っている。

脆弱性の修正を測るCWE-bench v1の公式順位表では、ArgonはGrok 4.7・GPT-6 Astraと並ぶ68%で同率1位となった。Googleの表では、Claude Opus 5.5が67%だ。

DeepSWE v1.1・LVBenchはGoogleの自社計測

Googleが「最先端」と書いたDeepSWE v1.1の77.9%は、評価資料で自社計測とされている。DeepSWEの公開順位表(9月22日更新)に、Argonは載っていない。

長い動画の理解を測るLVBenchの91.7%も、ツールを使わない自社計測だ。Terminal-Bench Science 0.1も、Argonの値は自社計測とされる。

Googleは法務の評価Harvey’s Legal Agent Benchmarkについても「同様に首位級の性能」と書き、チャートでは4モデルの中でArgonの19.6%を先頭に示した(原文は英語、編集部訳)。

評価資料によると、この数値はVals AIから取っている。そのVals AIの一覧で、Argonは19.58%の73モデル中5位だった。Googleのチャートは他社の3モデルとの比較で、Valsは73モデル全体での順位だ。

Googleの表で他社が上回る項目と、公開された測定条件

Googleの評価資料の結果表では、FrontierSWE v2・Terminal-bench 4.0・PostTrainBench・Terminal-Bench Science 0.1・OSWorld-2.0の5項目で、他社のモデルがArgonを上回っている。

Argonは限定提供だが、Vals AI・Zapier・CWE-benchは9月30日付で数値を載せた。3者は思考設定や評価方法といった測定条件の一部を公開しているが、限定提供中のモデルにどの経路と条件でアクセスしたかは、確認したページに書かれていない。

Artificial Analysisは「1つのプロバイダーを通じてAPIで利用できる」と記すが、プロバイダー名と利用条件は示していない。

出力上限は64Kから1Mに、社内事例はGoogleの説明

Googleは出力トークンの上限を、従来の6万4,000(64K)から「業界をリードする」100万(1M)に広げたと説明した(原文は英語、編集部訳)。Vals AIは、Argonを最大出力26万2,144トークンの設定で評価している。

社内の事例も、Googleが示したものだ。量子計算では、計算資源を最適化する処理で、公表済みの基準を数分で40%上回ったという。データセンターのメモリ最適化では、展開後に300TiB超を空け、全体で500TiB~1PiBの削減を見込む。

C/C++からRustへの移行は、re2・libgav1の数万行からFuchsiaのZirconカーネルの80万行超に及ぶ。動画デコーダーのlibgav1では、3万2,000行のSIMDコードを置き換え、既存のRust移植版の2.7倍の速度になったとGoogleは説明する。

サイバー能力は防御者と社内に限りガードレールなし

Googleは、Argonを脆弱性の発見・検証・修正を自律的に行えるように訓練したと説明する。その上で、サイバー能力の扱いを利用者の区分で分けた。

信頼された防御者と社内チームにはガードレールを外す

Googleは “For trusted defenders and our own internal teams at Google, we’ll be releasing Argon without cyber guardrails” と書いた。

信頼された防御者とGoogle社内のチームには、サイバー面のガードレールなしで提供し、防御の能力を全て使えるようにするという意味だ。

Wizの事例と社内ベンチマークは、Googleの発表が出どころ

Wizの「Scan for Good」では、世界中の病院で使われる医療ソフトウェアに、機微な個人情報が露出する重大な脆弱性を見つけたとGoogleは書いた。従来のフロンティアモデルが見逃したリスクだったという。

この事例を伝えているのはGoogleの発表だけで、WizのScan for Goodのページに該当する記述は見つからなかった。Ars Technicaも、Googleは具体的な内容を示していないと報じた。

FairwindのページはGoogleの社内ベンチマークの結果として、実際の脆弱性発見で85.8%(3.8 Flash Cyberは71.0%)、Wizのペネトレーションテストで70.9%(同58.2%)を示した。いずれも社内のデータセットで、外部の順位表は無い。

Sonnet 5.5は高リスクの作業を前の版に回す設計

サイバー能力の高いモデルをどう提供するかは、各社で設計が異なる。当メディアが9月29日に報じたAnthropicのClaude Sonnet 5.5は、高リスクのサイバーセキュリティ作業を、目に見える形でSonnet 5に切り替える。

Argonは、利用者をFairwind Programの参加組織とGoogle社内に絞った上で、その範囲ではガードレールを外す。Sonnet 5.5は全プラットフォームで提供した上で、高リスクの作業だけを前の版に回す。

広く提供する前に強化する安全策の4領域

Googleは、広く提供する前に4つの領域で安全策を強化しているとした。誤用の防止では、サイバーやCBRN(化学・生物・放射性物質・核)の攻撃に悪用されないよう、有害な依頼を拒む設計にしたという。

プロンプトインジェクションについては「これまでで最も耐性の高いモデル」と書いた(原文は英語、編集部訳)。Googleのチャートでは、Gray Swanの評価でArgonの攻撃成功率を0.7%としており、Gray Swanから得た値だという。

ミスアライメント(利用者の意図からの逸脱)の対策では、Argonの思考の過程と行動を監視し、必要なら実行を止める。訓練中の監視結果は訓練に戻さず、Googleは業界に推論の透明性を保つよう呼びかけた。

システムの強化では、リスクの高い訓練や評価を始める前に、サンドボックス環境を隔離して封じる。当メディアが9月27日に報じたOpenAIの訓練停止(サンドボックス外への到達)や、9月28日のNVIDIAの基盤(モデルの外側での制御)と同じく、モデルを動かす環境の側の対策だ。

米政府の自主的な事前アクセスの手続きに参加

Googleは「段階的にアクセスを広げる間、米政府によるリリース前のモデルアクセスの自主的なプロセスに積極的に参加している」と書いた(原文は英語、編集部訳)。制度名と機関名は書かれていない。

該当しうる枠組みには、6月2日に署名された大統領令14409がある。同令のSec. 3(b)は、他の信頼されたパートナーへの公開の最大30日前に政府がモデルにアクセスできる、自主的な枠組みの設計を定めた。

早期アクセスを得る「信頼されたパートナー」を政府と共に選ぶことも、同じ条項に含まれる。ただし、Googleの参加する手続きがこの枠組みを指すかどうかは、発表からは確認できない。

CNBCは、発表の前日にSundar Pichai CEOがホワイトハウスで、自主的なAI安全協定に署名したと報じた。CNBCの記事も、この署名とGoogleの手続きを結び付けてはいない。

導入価格$2/$10は、GPT-6.1 Solと同じ数字

Argonの導入価格は100万トークンあたり入力$2・出力$10で、キャッシュした入力は入力価格の95%引きだ。脚注には導入期間後は入力$4・出力$20とあるが、英語版に導入期間の終了時期は示されていない。日本語版の公式ブログには、この$4/$20の脚注が見当たらない。

一方、インドネシア語版の公式ブログは、導入価格を2026年12月31日まで、2027年1月1日から$4/$20と明記している。他の地域にも同じ期限が当てはまるかは、英語版からは確認できない。

GPT-6.1 Sol・Opus 5.5・既存のGeminiとの並記

100万トークンあたりの単価を、公式の価格ページと当メディアの既報から並べると次の通りだ。Gemini 3.8 Flashと3.1 Pro PreviewはGemini APIの価格ページ(Standard・有料)の値で、Argonのキャッシュ入力は「95%引き」から計算した値になる。

モデル入力キャッシュ入力出力
Gemini 4 Argon(導入価格・インドネシア語版は2026年12月31日まで)$2.00入力の95%引き($0.10相当)$10.00
Gemini 4 Argon(導入期間後・同2027年1月1日から)$4.00記載なし$20.00
GPT-6.1 Sol$2.00$0.10$10.00
Claude Opus 5.5$4.00$0.20$20.00
Gemini 3.8 Flash(2026年12月31日まで)$0.75$0.075$3.75
Gemini 3.1 Pro Preview(200kトークン以下)$2.00$0.20$12.00

Argonの導入価格の入力$2・出力$10と、95%引きから計算したキャッシュ入力$0.10は、GPT-6.1 Solと同じ数字になる。導入期間後の$4/$20は、Claude Opus 5.5と同じだ。なお、CWE-benchの費用表はArgonのキャッシュ入力を$0.20としているが、本記事の表はGoogleの「95%引き」を基準にした。

Gemini 3.8 Flashは2027年1月1日から入力$1.50・出力$7.50に移り、Argonの導入期間後の単価はその約2.67倍に当たる。Gemini 3.1 Pro Previewは200kトークンを境に単価が変わるが、Argonの価格にはその区分が書かれていない。

Fairwindの対象・提供の順序・価格、10月2日時点の3点

Argonの発表のうち、日本の企業が10月2日時点で確かめられる事実は次の3点だ。

  • Fairwind Programの対象区分:政府と国のサイバー当局・重要インフラの運営者・中核的な技術基盤の3区分で、防御の評価に取り組む学術機関も歓迎された。対象外の組織には、公開モデルとCodeMenderを組み合わせる選択肢をGoogleが示した。
  • 一般提供の順序と日本での時期:一般への提供は有料APIの顧客とGoogle AI Ultraの契約者から始まるが、時期は示されていない。Ultraは日本で提供されているものの、Argonが日本で使える時期は一次情報に無い。
  • 導入価格と導入期間後の価格:導入価格は入力$2・出力$10で、終了後は入力$4・出力$20になる。終了時期は英語版に無く、インドネシア語版の公式ブログが2026年12月31日までとしている。

※出典:Gemini 4 Argon: our next era of frontier intelligence(Google The Keyword) / Fairwind Program(Google DeepMind) / Proactive cyber defense for governments and enterprises(Google The Keyword) / Gemini 4 Argon Model evaluation(Google DeepMind) / Gemini 4 Argon:フロンティア知能の新時代(Google Japan Blog) / Gemini 4 Argon: Era Baru Kecerdasan AI Frontier(Google Indonesia Blog) / Gemini Developer API Pricing(Google AI for Developers) / Models(Google AI for Developers) / Google models(Google Cloud Documentation) / Gemini Apps limits & upgrades for Google AI subscribers(Google Help) / Vals Index(Vals AI) / Gemini 4 Argon(Vals AI) / AutomationBench(Zapier) / CWE-bench v1(Collinear AI) / Gemini 4 Argon (high)(Artificial Analysis) / Promoting Advanced Artificial Intelligence Innovation and Security(Federal Register) / Introducing Gemini 4 Argon(Google DeepMind/X) / Gemini 4 Argonの発表(Demis Hassabis/X) / Google rolls out Gemini 4 Argon, its most advanced model(CNBC) / Google announces Gemini 4 Argon AI model, but you can’t use it yet(Ars Technica) / Google、新フロンティアモデル「Gemini 4 Argon」を発表(窓の杜)

Pick Up

スキル習得を加速させる「動画マニュアル」の量産術|質の高いマニュアルの設計方法を解説

L&D(教育)

社員インタビュー動画をショート動画に編集する方法|構成・手順・配信先を解説

HR(採用)

ITツール導入マニュアルの動画化とは?メリットと作り方5ステップを解説

SaaS/IT

動画FAQ導入に~コンテンツ拡張で案件活用向上~企業の導入活用

CS(サポート)