デジタル庁、政府の生成AI環境「源内」のOSS Ver 2.0を2027年2月頃に公開予定――配るのはコードと構築テンプレート
※本記事は2026/09/19時点での情報を基にしており、閲覧時点では内容や状況が変わっている可能性があります。
デジタル庁が9月18日、「ガバメントAI 源内OSS Ver 2.0の計画に関する全国オンライン説明会」の開催報告と当日資料3点を公開した。説明会そのものは8月25日に開かれており、9月18日に出てきたのは当日の資料と質疑応答である。
予告されたのは、政府職員向けの生成AI利用環境「源内(げんない)」を構成する資材を、令和9年(2027年)2月頃にオープンソースソフトウェアとして公開する計画だ。源内は、全府省庁の約18万人の政府職員を対象とする大規模実証で使われている環境にあたる。
配られるのはソースコードと構築テンプレートで、行政の文書を集めたデータセットや職員が作成したプロンプトは対象外とされた。基盤モデル本体も含まれない。
ただし資料には、公開予定の内容は「すべて開発中であり、今後の検討・調整等により変更する場合があります」との但し書きが付く。
本記事では開催報告ページ・当日資料3点・質疑応答から、公開される資材の範囲と、自社で動かす場合に前提となる条件を整理した。
源内OSS Ver 2.0の公開予定は2027年2月頃である
開催報告ページと当日資料が示したのは、源内の何をいつ配るのかという予告だ。公開時期は原文で「令和9年2月頃」、技術詳細編の注記では「2027年2月頃」と書かれている。
ここでいうVer 2.0は、OSSとして公開する資材の版を指す。源内本体の世代を表す番号ではなく、2026年4月24日に公開された一式がVer 1.0にあたる。源内そのものは、政府職員の日常業務にAIを組み込み、業務の質の向上と効率化を実現することを目的とした生成AI利用環境だ。
説明会の開催は8月25日、資料の公開は9月18日
説明会は令和8年8月25日の午後2時から午後3時30分まで、産業界・行政関係者・その他本取組に関心のある人を対象にオンライン方式で開かれた。扱われたのは、源内の現状と今後の展開計画・OSS Ver 2.0で公開する資材・AIエコシステム形成に向けた連携と協業の可能性の三部だ。
質疑応答は当初予定の約45分を超えて続いた。確認した開催報告ページと当日資料では、参加者数と申込数を確認できなかった。9月18日に起きたのは説明会の開催ではなく当日資料の公開であり、この2つの日付をひとまとめにすると情報の新しさを読み違えることになる。
公開予定の中身は全て開発中と明記されている
但し書きは開催報告ページと技術詳細編の両方に置かれた。技術詳細編の冒頭にも、公開予定の内容は全て開発中で「予告なく変更する可能性もございます」とある。
資材の一覧も公開時期も、この段階では確定ではない。確認した当日資料と開催報告ページには、Ver 2.0のライセンス種別と公開先のリポジトリ名が記載されていない。
手がかりになるのはVer 1.0の条件だ。2026年4月24日に公開されたのはdigital-go-jp/genai-webとdigital-go-jp/genai-ai-apiの2本である。
両リポジトリのLICENSEファイルはMIT Licenseを基本とし、ドキュメントと画像にはCreative Commons Attribution 4.0 International(CC BY 4.0)が適用されている。
genai-webでは、一部のLambda・CDKファイルがAmazon Software Licenseの対象だ。確認した資料には、Ver 2.0が同じ条件で公開されるとの記載はない。
約18万人は対象者数であり、利用者数ではない
源内をめぐる数字のうち、扱いを誤りやすいのが18万人という規模だ。開催報告ページの表現は「令和8年5月からは、全府省庁の約18万人の政府職員を対象とする大規模実証を実施しており」である。
約18万人は対象者数として公表された数字で、実際の利用者数を示す値ではない。確認した開催報告ページと当日資料では、大規模実証の実利用者数と利用件数を確認できなかった。
5月29日時点で約10万人が利用可能だった
大規模実証の期間は令和8年5月から令和9年3月までの予定で、3月6日に発表された。5月28日の発表では「5月29日時点では、約10万人の政府職員が源内を利用可能な状況となります」と書かれている。
内訳は展開済みが約10万人、今後展開予定が約8万人で、合計で約18万人だ。6月以降に順次展開する予定なのは、防衛省・文部科学省・厚生労働省・経済産業省・原子力規制庁・国税庁の地方部局・最高裁判所の残余分である。
それ以前の段階も公表されている。令和7年度はデジタル庁内の約1,200人以上が利用し、2026年1月からは19省庁に広がった。
国産LLM5社の試用と10月頃のAIエージェント環境
源内向けの国内モデルとして契約したのはNTTデータ(tsuzumi 2)・ソフトバンク(Sarashina3 mini)・日本電気(cotomi v3)・富士通(Takane 32B)・Preferred Networks(PLaMo 2.0 Prime)の5社だ。
3月6日の選定結果では15件の応募から7件を選んだが、その後2社から辞退の申し出があり、契約は5社となった。国内モデルの能力評価は2026年8月頃から2027年3月まで実施する予定である。
一部のモデルは、ガバメントクラウドで唯一の国産クラウドである「さくらのクラウド」上で稼働させる計画だ。政府がガバメントクラウド上で「さくらのクラウド」を実利用する初の事例(第一号案件)にあたる。
さらに本年10月頃には、政府職員が自らの業務に応じてAIエージェントを構築・活用できる環境を源内に導入する予定である。ここでの「本年」は令和8年、すなわち2026年10月頃を指す。
配られるのはコードと構築テンプレートである
Ver 2.0で公開する資材は、開催報告ページで6項目が挙げられた。技術詳細編には、Ver 1.0との対照表として別の切り口で整理した9項目がある。
公開範囲に含まれるのは、ソースコードと構築テンプレート、そして利用実績の書き出しと分析の仕組みである。一方、源内が扱っている文章やデータそのものは対象外だ。
Ver 1.0とVer 2.0で公開される資材の対照
次の表は、技術詳細編の対照表に記載された9項目と記号を転記したものだ。
| 資材 | Ver 1.0(2026年4月) | Ver 2.0 |
|---|---|---|
| 源内Web(本体) | ○ | ○ |
| エージェントチャット | - | ○ |
| 源内工房 | - | ○ |
| 基盤モデル実行環境構築キット | - | ○ |
| 源内マルチテナント管理システム | - | ○ |
| ダッシュボードアプリ | - | ○ |
| 源内マーケットプレイス | - | ○(予定) |
| 源内AIアプリ(汎用・行政実務用) | △(一部) | △(一部) |
| データセット | × | × |
源内Webは利用者がAIを使うWebアプリケーション本体で、AWSのGenerative AI Use Cases(GenU)をベースに機能追加と改修を加えたものだ。
エージェントチャットは、技術詳細編が「有償のChatGPTやClaude Cowork等に相当するAIエージェント利用環境」と説明した。自然言語で指示すると、ウェブ検索・資料生成・コード実行・スキルの作成と実行を組み合わせて処理する。実行基盤はAmazon Bedrock AgentCore Runtimeである。
源内工房は個人専用サーバ上に整備するコーディングAI環境で、技術詳細編はこれを「Claude Codeに相当」と書いた。Deep Research・プロトタイプの開発・スキルのカスタマイズができる。
開催報告ページで「基盤モデル実行環境構築テンプレート」、技術詳細編で「構築キット」と呼ばれる資材は、さくらのクラウド上に基盤モデルを配置し、源内から安全に接続するためのものだ。基盤モデル自体は対象外である。マルチテナント管理システムは大規模展開向けとされ、小規模利用では不要と説明された。
ダッシュボードアプリは利用状況の集計と分析を担い、源内マーケットプレイスは企画・構想段階にある。行政実務用RAGはVer 1.0で公開済みで、Ver 2.0での大幅更新は予定されていない。20以上のアプリが府省庁の業務で稼働しており、利用者の声として「職員からの問い合わせ件数を10%程度削減できた」が挙がっている。
データセットとプロンプトはOSSの対象外
配られないものについては理由も示された。データセットは「著作権・利用許諾等の権利処理、継続的な更新・差替え・削除管理が必要となるためOSSの対象外」とされている。
プロンプトとAgent Skillは、機微な情報が含まれるためOSSとして公開しない予定だ。運用中の政府内のログデータ類も非公開で、利用実績データの資材は書き出しと分析の仕組みを配るにとどまる。ログや分析結果そのものを公開するものではない。
官報79年10カ月分を含む政府共通データセットもOSSでは配られず、行政実務用RAGもテンプレートは公開される一方でRAGの中身の文章は非公開だ。データセットの規模は推計1,800万ページ以上(36万ファイル・155億文字相当)とされる。
公開範囲からみれば、入手できるのは政府が使っている環境の参照実装であり、政府が使っている知識そのものではない。導入組織側では、自組織のデータ・業務手順をスキルに落とした資材・基盤モデルの調達と運用を別途用意する必要がある。
デジタル庁が示す民間向けの3つの商用モデル
開催報告ページは、民間企業・大学・研究機関・各種団体等においても自組織のニーズに応じて自由に利用できると説明した。商用利用の形については、デジタル庁の公式noteが3つの想定を示している。
- 複数の行政機関へのSaaS提供:事業者が源内をベースにしたSaaSを提供する形で、調達導線としてはデジタルマーケットプレイス(DMP)の活用が挙げられた。
- 源内をベースにしたシステムの調達:地方自治体・独立行政法人・企業や団体が、源内をベースとしたシステムをオーダーメイドで調達する形だ。
- AIアプリ単体の開発・販売:源内WebのAIアプリ登録機能を使い、開発したAIアプリをAPIとして接続して提供する。noteは「3つのモデルの中で、行政のAI活用促進という観点から特に可能性を感じているのがこのモデル」と書いた。
ただし3番目には順序の前提がある。モデル1とモデル2による構築案件が積み重なることで、AIアプリ単体の市場が生まれるという説明だ。
調達仕様書で源内OSSを指定すると要件定義を効率化できる
ベンダー側に直接効くのは、2番目のモデルに添えられた記述だ。noteは「調達仕様書の作成時に源内OSSを参照・指定することで、要件定義の効率化とベースラインの品質確保ができます。事業者側も根幹部分の再開発を省き、業務固有の要件への対応にリソースを集中できます」と書いている。
4月24日のOSS公開ページも、調達仕様書で源内のOSSを参照・指定するとAIの実装が容易になるという同じ趣旨を示した。
AIアプリを売る側にとっては、APIの継続性も条件になる。noteは後方互換性を保つ方向で進めたいとし、一度この仕様に沿って開発したAIアプリが源内のアップデート後も動き続けることの重要性を挙げた。
質疑応答では、民間が源内OSSで開発したAIアプリをDMPのサービスカタログに掲載できるかという問いに、源内OSSの画面と合わせてSaaSとして公表できる趣旨だと答えた。
歓迎の表明とpull requestの受付停止
デジタル庁が企業に期待する役割は4つだ。省庁の業務改革とAIエージェント実装の支援・データと知識基盤の整備・AIエージェントの品質と安全性の評価支援・各省庁のAI基盤の構築と源内との接続である。
質疑応答の答えは歓迎の側に寄る。自治体固有のデータを取り込む仕組みについては「源内はOSS公開しており、事業者にカスタマイズ・事業化いただくことを歓迎します」、安全対策の設計・設定については「安全対策は組織ごとに要件が異なる新しい領域で、事業者による支援を歓迎します」と答えた。
一方で、開発そのものへの参加導線は限られている。GitHubのissueは受け付けており改修実績もあるとする一方、pull requestの直接の受付は開発体制が限られ運用を組めていないため、現時点では見送っていると明記された。
確認した開催報告ページと資料では、意見・要望の窓口としてデジタル庁のメールアドレスが示されており、公募や意見募集の枠組みは確認できなかった。
導入規模・責任範囲・自治体での適用条件が前提になる
参照実装として配られる以上、導入時には確認が必要な条件がある。資料と質疑応答が示したのは、必要な規模感・責任の所在・自治体での扱いの3点だ。
5,000人程度なら標準的な構成で足りる
導入規模については質疑応答に数字が出ている。「規模によりますが、5,000人程度なら標準的な構成で足ります。デジタル庁では1環境で2万~2.5万人に提供できた例もあり、特別に大きな設備は不要です」という回答だ。
政府の18万人という数字から想像する設備とは、前提が異なる。ガバメントクラウド上での動作についても、デジタル庁で運用しており技術的な支障はないと答えている。ただし利用用途はガバメントクラウド担当への確認が要るという。
扱える情報の範囲には線がある。デジタル庁が提供する源内のサービスで機密性3情報を扱う予定は、現時点でないとされた。
責任は導入組織が負い、自治体での適用には工夫が必要
理念を説明したスライドは「OSSの公開は安全性及び品質を担保するものではなく」とした上で、導入・利用する組織はインフラストラクチャ・アプリケーション・基盤モデル・アクセス制御・ログ管理・保守運用に関する責任を各自で負うと明記した。
自治体についての記述は、質疑応答でさらにはっきりしている。「源内は政府機関の職員向け環境です。自治体は業務や扱う情報が異なるため、そのままの提供は難しく適用に工夫が必要です」と答え、共通エージェントの計画は現在ないとした。
一方で源内は、熊本地震の被災自治体等へ緊急提供されてきた。期間を区切った例外的な措置で、恒常的な展開とは別の枠組みである。
接続方式も結論は出ていない。閉域環境での実行は複数組織から要望があるものの具体的な開発計画は固まっておらず、マイナンバー系やLGWAN経由の利用も検討段階だという。
制度の側では、人工知能基本計画(令和8年7月14日閣議決定)が「源内」のオープンソース化の取組を通じて自治体のAI導入支援を進めると明記している。
なお、確認した開催報告ページと当日資料には、Ver 2.0のライセンス種別と公開先のリポジトリ名が記載されていない。何がどの条件で出てくるかは、2027年2月頃の公開時点で確認することになる。
※出典:ガバメントAI 源内OSS Ver 2.0の計画に関する全国オンライン説明会を開催しました(デジタル庁) / 源内OSS Ver2.0の計画に関する全国オンライン説明会(PDF・デジタル庁) / ガバメントAI 源内 OSS Ver2.0説明会 技術詳細編(PDF・デジタル庁) / ガバメントAI 源内OSS Ver 2.0説明会 当日の質疑応答(FAQ)(PDF・デジタル庁) / ガバメントAI「源内」をOSS(オープンソースソフトウェア)として公開しました(デジタル庁) / 全府省庁の約18万人の政府職員を対象としたガバメントAI(源内)の大規模実証を開始しました(デジタル庁) / 全府省庁の約18万人の政府職員を対象としたガバメントAI(源内)の大規模実証を開始します(デジタル庁) / 源内オープンソース(OSS)の商用利用での想定(デジタル庁公式note) / 人工知能基本計画(内閣府) / digital-go-jp/genai-web(GitHub)