デジタル庁、熊本地震で緊急提供した「源内」の利用実績を初公表――全国で実行847回
※本記事は2026/08/31時点での情報を基にしており、閲覧時点では内容や状況が変わっている可能性があります。
デジタル庁は8月31日、「令和8年熊本地震に関する対応状況について(8月31日)」を公開し、被災自治体等に緊急提供しているガバメントAI「源内」の提供機能の内訳と利用実績を明らかにした。
実績は8月28日17時時点の集計で、全国の登録アカウント数は計247個・実行回数は計847回・AIエージェントの利用は計37セッションだった。熊本県内はそれぞれ計57個・計457回・計14セッションである。
デジタル庁が7月28日から公開してきた対応状況ページのうち、源内の提供機能の件数と利用実績が数値で載ったのは8月31日版が初めてだ。
公表された数値と機能の内訳を原文に沿って整理し、そこから何が分かり、何がまだ分からないのかを確認していく。
8月28日時点の利用実績として公表された数値
8月31日版の対応状況ページに載った提供実績は、全国・九州地域・熊本県内の3列で示されている。集計時点はページ冒頭にある通り8月28日17時00分現在で、ページの公開日である8月31日とは3日のずれがある。デジタル庁が示した6項目の数値は次の通りだ。
| 項目 | 全国 | 九州地域 | 熊本県内 |
|---|---|---|---|
| 登録アカウント数(※1) | 計247個 | 計77個(21機関・団体) | 計57個(7機関・団体) |
| 実行回数(※2) | 計847回 | 計481回 | 計457回 |
| (内訳)チャット実行回数 | 計665回 | 計376回 | 計357回 |
| (内訳)AIアプリ実行回数 | 計182回 | 計105回 | 計100回 |
| AIエージェント利用回数(※3) | 計37セッション | 計14セッション | 計14セッション |
| エージェント ターン数 | 計192ターン | 計48ターン | 計48ターン |
表に付された注釈は3つある。登録アカウント数は、被災自治体等に配布した利用アカウントのうちログインのあった数を指し、原文は「複数の担当者が一つのアカウントを使用する場合を含む」と説明した。デジタル庁職員のアカウントは数から除かれている。
実行回数はプロンプトの入力回数を指す。いずれの数値からも、デジタル庁職員がアプリ開発等のために試験的に使用した回数は除かれている。
実行回数は全国847回・熊本県内457回
全国の実行回数は計847回で、内訳はチャットが計665回・AIアプリが計182回である。熊本県内は計457回で、チャットが計357回・AIアプリが計100回だった。
九州地域は計481回で、チャットが計376回・AIアプリが計105回と示されている。全国の847回のうち熊本県内の457回が占める割合は54.0%で、この比率は編集部の算出による。
デジタル庁は3列を「全国」「九州地域」「熊本県内」の順に並べているが、九州地域が熊本県内を含むかどうかについての説明はページに載っていない。
登録アカウント247個は人数や団体数ではない
登録アカウント数は全国が計247個だった。九州地域は計77個で21機関・団体、熊本県内は計57個で7機関・団体と示されている。
注釈は登録アカウント数を「被災自治体等に配布した利用アカウントのうち、ログインのあったアカウント数」と定義した。「複数の担当者が一つのアカウントを使用する場合を含む」ともあり、この数値は利用した人数でも団体の数でもない。ページには「利用者の内訳」の見出しで、次の区分と数が並んでいる。
- 都道府県:39機関・団体
- 市:131機関・団体
- 町:33機関・団体
- 村:2機関・団体
- 特別区:3機関・団体
- 国(政府機関):26機関・団体
- 法人(大学・放送・社団法人等):13機関・団体
原文はいずれの区分も「機関・団体」の単位で記されている。7区分を合計すると247となり、全国の登録アカウント数と数値は一致するが、ページには両者の関係を説明する注記がなく、登録アカウント数の単位は「個」である。
AIエージェントの利用は37セッション・192ターン
AIエージェントの利用は全国で計37セッション・計192ターンだった。九州地域と熊本県内はいずれも計14セッション・計48ターンで、同じ数値が並んでいる。
注釈はセッションを「利用者がAIエージェントに一連の指示を行って進めた作業の単位」と定義した。ターンは「セッションの中で利用者がAIエージェントに指示を出した回数の単位」であり、AIエージェントは一つのターンの中で複数回の推論とツール実行を自律的に進めるとされる。
全国の192ターンを37セッションで割ると1セッションあたり約5.2ターン、熊本県内では48ターンを14セッションで割って約3.4ターンとなる。いずれも編集部が算出した。
8月31日版で初めて示された提供機能の内訳
デジタル庁は8月31日版で、源内の提供機能を(1)から(4)までの4つに整理して示した。AIアプリとプロンプト集には件数が付き、対話AIには具体的なモデル名が並ぶ。7月29日の緊急提供の告知では「チャット(対話型AI)、一部のAIアプリ、プロンプト例」と書かれるにとどまり、件数もモデル名も載っていなかった。
災害対応向けのAIアプリ16件とプロンプト集80件
提供機能の(1)には「災害対応業務に有用なAIアプリ:16件(うち被災自治体等からの要請に基づき緊急に開発・提供したもの:3件)」と記されている。(2)は「災害対応向けユースケース集・プロンプト集:80件」だ。
プロンプト集の80件は、松本デジタル大臣が8月25日の記者会見で述べた数と重なる。大臣は「我々も当然必要なプロンプトは今80ぐらい準備して、それごと提供しています」と説明していた。
7月29日の告知には「一部のAIアプリ」「プロンプト例」との記載しかなく、件数は示されていなかった。8月31日版で初めて、提供中のアプリとプロンプトの規模が数で分かる形になった。
現場の要請で緊急に開発された3件のアプリ
16件のうち3件は、被災自治体等からの要請に基づき緊急に開発・提供したものと説明されている。緊急に開発・提供した3件として挙げられているのは次の3つだ。
- 検索したい物資を入力すると、新物資システム(B-PLo)で定義されている正式な項目及び単位を回答するアプリ
- 普段の言い回しのまま入力した必要物資の申告について、AIが物品名を正規化してB-PLoが読み込める形式に整理・出力するアプリ
- 災害時保健医療福祉活動支援システム(D24H)が出力するラピッドアセスメントシート(Excel)のダッシュボード化・データ分析ができるアプリ
緊急提供の告知にも「被災自治体のニーズに応じたAIアプリの緊急の内製開発および源内上での提供についても対応いたします」と記されており、現場の要請を受けて開発する枠組みは当初から示されていた。
対話AIの4モデルとエージェントチャット
提供機能の(3)は通常のチャット(対話AI)機能だ。原文が挙げるモデル名は「Claude Opus 4.8、Claude Sonnet 4.6、Claude Haiku 4.5、Nova Lite」の4種である。
AnthropicのClaudeが3種類・AWSのNova Liteが1種類の構成になる。ページはモデルの選定理由や使い分けについて説明していない。
(4)はAIエージェント利用環境「エージェントチャット」で、原文は「利用者がAIエージェントを使用して複数の作業を連続実行させ、データの整理・調査・分析やファイル操作・生成を行うことができる機能」と説明した。
エージェントチャットは7月29日の告知に記載がなく、8月31日版で提供機能として明記された。告知の時点で提供されていたかどうかについて、デジタル庁は説明を加えていない。
件数と実績が載った版は8月31日が初めて
デジタル庁は7月28日から8月31日までに、熊本地震の対応状況ページを7本公開した。このうち源内の提供機能の件数と利用実績が載ったのは8月31日版だけで、それ以前の版には数値が書かれていない。
8月27日版までの各版に数値の記載はない
8月27日版までの対応状況ページには、源内の提供機能の件数も利用実績も書かれていない。7月28日版に源内の項目はなく、7月29日版で「臨時にガバメントAI 源内を被災自治体、関係自治体、災害対策機関等に提供します」との記述が加わった。その後の版でも源内の記述は、提供を開始した事実と告知ページへのリンクが中心だった。
8月20日版からは「源内の緊急提供期間につきましては、当初3週間程度で終了予定としておりましたが、9月30日まで延長します」の一文が加わり、8月27日版も同じ文言のままだった。
8月31日版では冒頭の一文も書き換えられ、「臨時に」の語が外れて「緊急提供を開始しました」との表現になった。
提供期間の延長は8月19日に告知されていた
源内の緊急提供は7月29日11時頃に始まり、当初は3週間程度で終了する予定だった。デジタル庁は8月19日に緊急提供の告知ページの「2. 時期」を更新し、提供終了を9月30日と定めた。
8月20日版以降の対応状況ページには、当初3週間程度で終了予定だったものを9月30日まで延長する旨の一文が載っている。8月31日版の記述も同じ文言で、延長そのものは8月31日の新しい発表ではない。
松本デジタル大臣は8月25日の記者会見で、延長の理由を「使用の継続が見込まれるので9月末までご利用いただけるように、今のところしている」と説明した。
同じ会見で大臣は、8月24日時点の利用状況として熊本県内7団体・災害支援を行う他の自治体等109団体を挙げ、109団体にはボランティア団体も含まれると述べた。熊本県内で利用する7自治体の名前は、自治体に迷惑がかかるとして、公表を控える考えを示している。
政府職員向けの環境が被災自治体に開かれた経緯
熊本地震は7月28日16時27分頃に発生し、熊本県熊本地方を震源として最大震度7を観測した。源内はもともと政府職員向けの生成AI利用環境で、地震の対応にあたって被災自治体等にも開かれた。
デジタル庁の政策ページは「ガバメントAIとは、政府職員が安全・安心にAIを活用できる基盤です」と定義し、源内をガバメントAI構築の「第一歩」と位置づけている。源内の読みは「げんない」で、政策ページに明記されている。
源内は2025年5月にデジタル庁内で運用が始まった
デジタル庁は2025年5月に、全職員が利用できる生成AI利用環境「源内」を内製開発で構築して運用を始めた。政策ページは、国会答弁検索AIや法制度調査支援AIなど複数のアプリケーションを提供し、行政現場での検証を進めてきたと説明している。
2026年1月からは一部省庁で試験的な利用が始まり、規模は全体で数百人とされた。2026年5月から2027年3月までは、全府省庁の約18万人の政府職員を対象とした大規模実証が行われている。
デジタル庁は2027年度に源内の本格的な利用を開始する予定だ。2025年12月19日の第3回人工知能戦略本部では、高市内閣総理大臣から「令和8年5月から10万人以上の政府の職員が活用できるように」との指示が出ている。
利用対象の6区分と現地に入ったD-CERT
緊急提供の対象は6つに区分されている。被災自治体・全ての都道府県・全ての市区町村・ボランティア団体や災害支援団体・政府機関・指定公共機関で、指定公共機関は災害対策基本法に基づく公共的機関及び公益的事業を営む法人を指す。
申込は専用ページから行うと、申込者のメールアドレス宛に利用リンクが即時送付され、ワンタイムパスワードによる認証で利用できる状態になる。
デジタル庁は7月29日から災害派遣デジタル支援チーム(D-CERT)も現地に派遣している。活動内容は2件で、新物資システム(B-PLo)の入力効率化ツールの提案と、民間船舶「はくおうⅡ」の一時下船受付アプリの開発・運用だ。松本大臣によればD-CERTは2025年夏に官民共同で設けられ、熊本地震が初出動になった。
効果の検証を残したまま示された利用実績
デジタル庁が8月31日版で公表したのは機能の内訳と数値であり、同ページには利用効果の評価が載っていない。過去の対応状況ページには同じ形式の利用実績がなく、増減を比べる材料にはならない。公表された数値から何が読み取れて、何が読み取れないのかを確かめておく。
熊本県内の「7」も時系列比較には使えない
松本大臣は8月25日の記者会見で、8月24日時点の熊本県内の利用を7自治体と説明した。8月31日版の8月28日実績では、熊本県内の登録アカウント数に7機関・団体との括弧書きがある。いずれも数値は7だが、公式資料は対象と集計基準が同じかを説明していないため、増減の比較には使えない。
ほかに時系列で比べられる数値も、確認した公表資料には見当たらない。対応状況ページは8月27日版まで実績を載せておらず、8月31日版が最初の公表だ。今後も同じ形で実績を公表するかについて、ページに記載はない。
そのため、利用が広がったのか、想定より少ないのかを、公表された数値だけで判断することはできない。デジタル庁も比較の対象を示していない。
効果の検証は「一定期間活動が終わった時点」
松本大臣は8月25日の記者会見で、効果について「これから、どれぐらい活用して何に役立ったかというのは、ある程度一定期間活動が終わった時点で検証したい」と述べた。政府として効果を評価した見解は、8月31日版の対応状況ページには載っていない。
一方で大臣は、活用してもらう意義について「かなり高いのではないか」と述べた。被災自治体の職員について「わざわざ電話しなくてもプロンプトを打ち込むだけで答えが返ってくる」と述べ、作業効率の改善につながっているのではないかと語っている。
緊急提供の期間は9月30日までだ。9月末までの利用がどこまで積み上がるのか、デジタル庁が数値の公表を続けるのかは、9月以降の発表を見るまで分からない。
※出典:令和8年熊本地震に関する対応状況について(8月31日)(デジタル庁) / 熊本地震の被災自治体等へ、ガバメントAI 源内を緊急提供します(更新)(デジタル庁) / 松本大臣記者会見(令和8年8月25日)(デジタル庁) / ガバメントAI「源内」(デジタル庁) / 全府省庁の約18万人の政府職員を対象としたガバメントAI(源内)の大規模実証を開始しました(デジタル庁) / 全府省庁の約18万人の政府職員を対象としたガバメントAI(源内)の大規模実証を開始します(デジタル庁) / ガバメントAI 源内における国産クラウド上での国産基盤モデルの試用開始について(デジタル庁) / 令和8年熊本地震に関する対応状況について(8月27日)(デジタル庁) / 令和8年熊本地震に関する対応状況について(8月20日)(デジタル庁) / 令和8年熊本地震に関する対応状況について(8月4日)(デジタル庁) / 令和8年熊本地震に関する対応状況について(7月31日)(デジタル庁) / 令和8年熊本地震に関する対応状況について(7月29日)(デジタル庁) / 令和8年熊本地震に関する対応状況について(7月28日)(デジタル庁) / 「令和8年熊本地震」について(第3報)(気象庁)