富士通、国産CPU「FUJITSU-MONAKA」を11月に販売開始――サーバの出荷は2027年4月以降
※本記事は2026/09/15時点での情報を基にしており、閲覧時点では内容や状況が変わっている可能性があります。
富士通が9月14日、国産次世代CPU「FUJITSU-MONAKA」と、それを搭載した国産サーバ「Fujitsu MONAKA Server」の販売を11月から開始すると発表した。
CPUについては、クラウド・データセンター事業者やサーバベンダー向けに、プロセッサ単体のビジネスを新たに始めるとしている。
CPUは米国・APACを含むグローバルに提供する計画だ。サーバ側は日本・欧州のデータセンター事業者、エンタープライズ、アカデミア・HPC分野に加え、防衛分野にも販売するとした。
もっとも、リリースには「11月」以外にも複数の時期が並ぶ。CPUの提供予定は2026年度第4四半期、サーバの一般出荷は2027年4月以降だ。販売開始と提供・出荷開始を同じ時期としては扱えない。
発表が掲げる「世界トップレベルのAI推論性能」や「他社CPU比2倍のスループット」には、9月14日リリース内で比較対象や測定条件が示されていない。本記事では、富士通の訴求と、公表資料から外部で確認できる範囲を分けて整理する。
富士通が発表したCPU・サーバの内容
9月14日リリースは富士通株式会社の単独名義であり、共同発表者の記載はない。内容はCPU単体の販売とサーバ製品の投入という2本立てで、どちらも販売開始を2026年11月としている。
プロセッサ単体のビジネスを新たに開始
リリースは、クラウド・データセンター事業者やサーバベンダー向けに、プロセッサ単体のビジネスを新たに始めると説明した。FUJITSU-MONAKAを自社サーバに搭載するだけでなく、CPU単体でも提供する計画だ。
CPUの提供先は米国・APACを含むグローバルとされ、サーバの販売地域である日本・欧州とは範囲が異なる。同じ11月の販売開始でも、対象顧客と地域は同一ではない。
9月14日リリースに記されたCPUの主な数値は、2nmプロセスとキャッシュ・I/O部の5nmプロセスを組み合わせた3D積層構造、最大動作周波数3.8GHz、メモリ転送速度8800MT/sだ。英語版は、2nmがコア部、5nmがキャッシュ・I/O部だと明示した。
一方、日英の同リリース内では、消費電力・TDP・電力効率の具体値や製造ファウンドリ名を確認できない。
1ソケット当たり144コア、DDR5の12チャネル、PCI Express 6.0といった仕様は、富士通の製品ページに掲載されている。
9月14日リリースには144コアの記載がなく、製品ページにも2026年9月15日時点で更新日の可視表示はない。このため、各仕様の初出時期は同ページだけでは特定できない。
2U・1UラックマウントとHPC向けマルチノードを用意
Fujitsu MONAKA Serverは、ソブリン用途向けとして国内で設計・開発し、笠島工場で製造する。富士通は、部品の出所や製造履歴を追跡できるトレーサビリティを確保し、サプライチェーンの透明性と信頼性を強化すると説明した。
ラインナップは、AIエージェントやAI推論向けの2Uサイズと1Uサイズのラックマウントサーバだ。2Uは2CPU、1Uは1または2CPUを搭載する。アカデミア・HPC分野向けには、1ノード当たり2CPU・計4ノードを搭載する2Uマルチノードサーバも用意する。
1UサーバはCDI/CXL技術を採用し、サーバの枠を超えてメモリ・アクセラレータを配備できるという。
富士通は、専用の冷却設備がなくても空冷で周囲環境温度40度、水冷で水温45度まで利用できると説明。サーバ冷却の電力消費量については最大80%削減を掲げたが、リリースに測定条件は記載されていない。
GPUについては、9月14日リリースに搭載の記載がない。同社は「本CPUサーバのみでAI推論基盤を構築可能」としており、CPUを中心に推論基盤を構成できる点を訴求した。これはGPU非搭載を意味する記述ではない。
11月の販売開始と製品の提供・出荷時期
9月14日リリースは、販売開始・CPU提供・サーバ先行提供・サーバ一般出荷を別々に記載している。11月の販売開始を、そのまま一般出荷の開始時期とは読めない構成だ。
リリースに記載された4つの時期
リリース冒頭の販売開始と、末尾の「今後について」に記された予定を並べると、次のようになる。
| 対象 | 時期 | リリース上の内容 |
|---|---|---|
| CPU・サーバの販売開始 | 2026年11月 | グローバルまたは日本・欧州で販売開始 |
| CPU単体の提供 | 2026年度第4四半期 | クラウド・データセンター事業者やサーバベンダー向けに提供予定 |
| サーバの先行提供 | 2026年度下期 | 金融・通信・製造分野の一部顧客に先行提供 |
| サーバの一般出荷 | 2027年4月以降 | 日本・欧州向けに順次出荷予定 |
富士通の決算期は3月末であるため、2026年度第4四半期は2027年1~3月に当たる。サーバは2026年度下期に一部顧客に先行提供し、一般出荷を2027年4月以降に始める計画だ。先行提供の目的にはユースケースの拡充を挙げている。
価格と販売目標は9月発表に記載なし
9月14日リリース本文では、具体的な価格・出荷目標台数・売上目標を確認できない。末尾には、記載された製品の価格・仕様・サービス内容などは発表日現在のものだとする定型の但し書きがあるが、価格の数字は示されていない。
富士通の製品ページにも、2026年9月15日時点で価格の表示は見当たらない。現時点で公表資料から確認できるのは、販売・提供・出荷の予定時期と対象地域・顧客層までだ。
「他社CPU比2倍」の根拠として示された範囲
リリースの性能訴求の中心は、AI推論のスループットである。富士通は他社CPU比2倍とする一方、9月14日リリースには比較対象や測定条件を記載していない。
9月14日リリースに性能値の注釈はない
富士通は、AI推論で他社CPU比2倍のスループットと高い電力効率を実現し、同等の処理量に必要なサーバ台数と消費電力を半減すると説明した。さらに、行列演算のハードウェア支援・SVE2ベクトル演算・ソフトウェア最適化を組み合わせるとしている。
日英リリースの注釈は、NEDO・コンフィデンシャルコンピューティング・CDI/CXLの3本だ。性能値に対応する注釈はなく、比較対象のCPU名・ベンチマーク名・AIモデル・精度・測定時点・ソケット構成・測定主体も書かれていない。
過去の公式記事は別指標を同社推定値と説明
富士通の2025年5月29日付公式記事は、2倍のアプリケーション性能と電力効率を同社の性能推定値としている。想定時点は2027年のリリース時期だ。
これは9月発表のAI推論スループットと同じ指標だとは確認できないが、過去の2倍性能が同社推定だったことを示す情報である。
したがって、9月発表のAI推論スループット2倍について、詳細な測定方法を外部から再現できる情報は確認できない。一方で、公開資料全体に性能値の性質を示す手がかりが一切ないともいえない。
2026年9月15日までに確認した富士通の公式資料では、独立機関によるベンチマーク結果も見つからない。「サーバ台数と消費電力を半減」も、2倍のスループットに結び付けた富士通の公称値として読む必要がある。
日本語版と英語版で異なる最上級表現
日本語版と英語版では、「世界初」に当たる表現の有無が異なる。英語版にも world-class はあるが、first を含む表現は確認できない。
英語版に「世界初」相当の語はない
日本語版のサブ見出しは「世界初の2nm3D積層CPU」を掲げる。一方、英語版は world-class AI inference performance と Japan-developed 2nm 3D-stacked CPU を組み合わせた内容だ。
英語版には world-first・world's first・world first のいずれも使われていない。
ただし、日英のサブ見出しは構文が異なるため、「世界初」が「日本で開発」に一対一で置き換えられたとは断定できない。確認できるのは、日本語版にある「世界初」相当の語が英語版にはないという差だ。
日本語版本文は「CPU単体で世界トップレベルとなる高い演算性能とデータ供給能力」「世界トップレベルとなる最大動作周波数3.8GHz、メモリ転送速度8800MT/s」と説明している。英語版は対応箇所で world-class を使用した。
最上級表現の比較範囲は示されていない
9月14日リリースには、「世界初」「世界トップレベル」の調査主体・調査時点・比較範囲を示す注釈がない。このため、いずれも富士通の評価表現として扱うのが妥当だ。
評価表現が誤りだと確認されたわけではない。2nmコアダイを3D積層した商用CPUの全製品を網羅し、世界初かどうかを外部から確定することは難しい。引用符や富士通への帰属を外すと、確認済みの客観事実として読まれる点には注意が要る。
9月発表と過去資料で確認できる情報
FUJITSU-MONAKAの主要仕様の一部は、2026年3月のMWC Barcelona 2026での展示時点ですでに報じられていた。一方、9月14日発表は販売開始時期と、Fujitsu MONAKA Serverの具体的なラインナップを示している。
仕様と性能表現の公表時期を切り分ける
各資料に記載された内容を比べると、次のように整理できる。
| 事項 | 確認できた資料 | 留意点 |
|---|---|---|
| 144コア・Armv9-A・SVE2 | 3月3日付PC Watch、富士通製品ページ | 9月14日リリースには144コアの記載なし |
| 2nmコアダイと5nm SRAM・I/Oダイの3D積層 | 3月3日付PC Watch、9月14日富士通発表 | 9月発表は開発・商用化の文脈で説明 |
| DDR5 12チャネル・PCI Express 6.0 | 3月3日付PC Watch、富士通製品ページ | 9月14日リリースには記載なし |
| 最大3.8GHz・8800MT/s | 9月14日富士通発表 | 3月3日付PC Watchの記事には記載なし |
| 2倍性能 | 9月14日発表、2025年5月29日付富士通公式記事 | AI推論スループットとアプリケーション性能・電力効率で指標が異なる |
| 笠島工場での国内製造 | 2月12日富士通発表、9月14日富士通発表 | 9月以前から公表済み |
| Fujitsu MONAKA Serverの具体的な製品構成 | 9月14日富士通発表 | 1U・2U・HPC向けマルチノードを記載 |
| 販売開始時期・対象顧客 | 9月14日富士通発表 | CPUとサーバで提供地域が異なる |
FUJITSU-MONAKAの新技術がNEDOの補助事業の成果に基づく点は、9月14日リリースの注1に記されている。
NEDO資料は事業名を「グリーンイノベーション基金事業/次世代デジタルインフラの構築/次世代グリーンデータセンター技術開発」とし、実施期間を2021年度から2028年度としている。
9月14日リリースに「富岳」「A64FX」の語はない。本文は、富士通がプロセッサやサーバの開発で培った国産技術の結集と表現している。
3月報道と9月発表の出荷時期は直接比較できない
3月3日付のPC Watchは、富士通の説明員の話として、MONAKAを2027年度に商用出荷する計画だと報じた。一方、9月14日リリースは、CPU単体を2026年度第4四半期に提供し、Fujitsu MONAKA Serverを2027年4月以降に出荷すると分けている。
3月記事の対象はCPUであり、9月発表の「2027年4月以降」はサーバの出荷だ。対象と用語が一致しないため、両者から出荷計画が変わっていない、または早まったと結論付けることはできない。9月発表によって、CPU提供とサーバ出荷の予定が別々に具体化されたという整理が適切だ。
ソブリンAIについて、9月14日リリースに定義文はない。2月12日の富士通発表は、ITインフラのソブリン性として、データ流出リスクの最小化・自律的な運用・国内法への準拠・セキュリティリスクの透明性確保・テクノロジーのコントロールを挙げている。
2026年9月15日時点で確認できるのは、CPUとサーバを11月から販売する計画、提供・出荷の予定、公表仕様の範囲だ。性能面では富士通の公称値が示されたが、9月発表に詳細な測定条件はなく、確認した資料には第三者のベンチマーク結果もない。
国内で設計・製造し、供給網を追跡できる点は、経済安全保障の観点で評価軸になり得る。ただし、これはAI推論性能の裏付けとは別の軸だ。具体的な価格も、9月14日リリースと同月15日に確認した製品ページには掲載されていない。
※出典:世界トップレベルのAI推論性能を実現する国産次世代CPU「FUJITSU-MONAKA」とソブリンAI基盤を実現する国産サーバ「Fujitsu MONAKA Server」販売開始について(富士通) / Fujitsu launches made-in-Japan next-generation CPU FUJITSU-MONAKA and Fujitsu MONAKA Server for sovereign AI infrastructure(Fujitsu) / FUJITSU-MONAKA(富士通) / AIの電力問題に立ち向かう、富士通の省電力技術3選(富士通) / ソブリニティを実現するAIサーバの国内製造開始(富士通) / インフラ&ソリューション 富士通(株)/比類なき省電力と計算性能を両立 省電力CPU “FUJITSU-MONAKA”(NEDO) / 「富岳」超えを狙う2nmプロセッサ。富士通「MONAKA」の実物ウェハが公開(PC Watch)