経営者の4割が「生成AIの評価で取引先を判断」——企業信用の新しいインフラになり始めたAI検索

※本記事は2026/06/07時点での情報を基にしており、閲覧時点では内容や状況が変わっている可能性があります。

6月6日、リサーチ・コンサルティング会社のIDEATECHは、生成AIを業務利用している中小企業経営者を対象にした調査結果を公開した。キーマンズネット(ITmedia)が同日報じたこの調査は、生成AIが企業間の信用判断にまで影響を及ぼし始めているという実態を、具体的な数値で初めて示したものだ。

調査は2026年5月13~14日にインターネットで実施。従業員5~299人の中小企業に所属し、月に数回以上業務で生成AIを利用している経営者・役員311人から回答を得た。

結果として最も注目される数値は二つある。取引先や検討先の企業を生成AIで調べた経験を持つ経営者が55.7%に上ること、そしてそのうち41.1%が選定判断に何らかの影響を受けたと答えたことだ。

「候補から外した」14.5%、「優先度を下げた」26.6%

41.1%という数値の内訳を見ると、事態の深刻さがより鮮明になる。生成AIで調べた結果をもとに、取引先候補を「選定から外した経験がある」と答えたのは14.5%。「優先度を下げた経験がある」は26.6%。合わせると、生成AIを使って企業を調べた経営者の4割超が、その結果を起点に相手企業の評価を下げる方向に動いたことになる。

これは生成AIが「便利な検索ツール」にとどまらず、企業選定の入口として機能し始めていることを示している。商談の前段階、あるいは問い合わせの前段階で、生成AIが企業の第一印象を形成する場面が広がりつつあるといえるだろう。

どのツールで、何を調べているか

業務で使われている生成AIツールはChatGPTが76.8%でトップ。次いでGemini(53.1%)、Microsoft Copilot(35.0%)と続く。ChatGPTとGeminiが経営者の日常的な情報収集ルートとして定着していることが読み取れる。

生成AIへの相談テーマとしては、「ビジネス戦略・計画」が23.5%で最多。「マーケティング・その他」(23.2%)、「営業・販売戦略」(22.8%)が続く。一方で「特に注力しているテーマはない」という回答も31.2%あり、利用の広がりにはまだ個人差が大きい。

注目すべきは相談テーマの質だ。これらはいずれも意思決定の上流に位置するテーマであり、生成AIが「調べる道具」から「考えるパートナー」として使われ始めていることを示している。取引先の選定という判断もその延長線上にある。

最大の構造的問題——自社の「AI上の顔」を誰も管理していない

自社や自社サービスが生成AIでどのように表示されているかを「確認したことがない」と答えた経営者は52.7%。自分で試しに聞いたことがある経営者は24.8%にとどまり、定期的にモニタリングしているのはわずか9.6%だ。数値が示す最も深刻な非対称性は、ここにある。

つまり、取引先候補の4割超を「AIの評価をもとに」ふるい落としている経営者が存在する一方で、自分の会社が相手方に、どう見えているかを把握している経営者は1割にも満たない。評価する側と評価される側の情報格差が、この調査によって初めて可視化された形だ。

この非対称性が生む実害は小さくない。生成AIが回答に使うのは、インターネット上に存在する情報のスナップショットだ。古くなった情報や他社との混同・不正確な要約・情報量の絶対的な少なさ——いずれも、経営者が問い合わせや商談に至る前の段階で、自社への評価を静かに損なう原因になり得る。

AIの回答が「不十分・不正確」と感じたとき、経営者はどこへ向かうか

生成AIから得た企業情報が不十分または不正確だと感じた際、経営者がとる行動も調査で明らかになっている。「Google等で追加検索する」が54.3%、「企業の公式Webサイトを直接確認する」が46.3%だった。

この数値は、AIの回答が最終判断の根拠になるわけではなく、企業選定における「一次フィルター」として機能していることを示している。

逆に言えば、生成AIの回答がポジティブであれば追加調査のフェーズへ進み、ネガティブまたは情報量が乏しければその時点で評価が止まる可能性が高い。AIを通過した企業だけが、公式Webサイトや担当者と対話できる次のフェーズへと到達できるという構造だ。

「GEO」という概念が現実になりつつある

マーケティング・広報の領域では、SEO(検索エンジン最適化)に並ぶ概念として「GEO(Generative Engine Optimization)」が急速に注目を集めている。生成AIの回答に自社が正確かつ好意的に含まれるよう、情報の質・量・鮮度を管理するという取り組みだ。

これまでGEOは、先進的なマーケターや大企業の話題として扱われることが多かった。しかし今回の調査が示すのは、GEOが抽象的な将来課題ではなく、現在進行中の中小企業間ビジネスにおける実害として顕在化しているという現実だ。

取引先候補の企業情報をChatGPTで調べ、4割の経営者がその結果に基づいて判断を変えている——この事実は、生成AIへの露出管理(AI Presence Management)が、従来型の広報・マーケティング活動の延長として経営の議題に上がる必要があることを意味する。

「79.8%が重要性を認める」という現実とのギャップ

調査ではもう一つ注目すべき数値が報告されている。経営層の79.8%が、経営判断における生成AIの「重要性が高まっている」と回答したという点だ。

生成AIを意思決定の重要な情報源として、位置付けている経営者が8割に迫る一方で、自社のAI上での表示を定期的に管理しているのは1割未満。この約70ポイントに及ぶギャップが、日本の中小企業における現在地だ。

クラスメソッドが2026年6月1日に公開した「国内企業 AI活用実態調査2026」でも、競合他社のAI活用に危機感を持つ企業は83.3%に上っており、AI活用が「社内効率化」の文脈から「競争優位と企業評価」の文脈へと拡張されていることが複数の調査から裏付けられつつある。

生成AIは、かつてのWebサイトやSNSと同様に、企業が管理・運用の対象として向き合わなければならないインフラへと変わりつつある。「自社がAIにどう語られているか」という問いが、経営の実務課題になる日は、すでに来ている。

※出典:約4割が「生成AIの評価で取引先を判断」 経営判断での生成AI影響高まる(キーマンズネット / ITmedia、IDEATECH調査) / 企業規模だけでは説明できないAI活用度 中堅・中小企業にも存在する「先進層」(キーマンズネット / クラスメソッド調査)

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