「作る側」への本気——Microsoft Build 2026・2日目。GitHub Copilot刷新、Microsoft IQ完全体、Azure Agent Meshの発表など

※本記事は2026/06/04時点での情報を基にしており、閲覧時点では内容や状況が変わっている可能性があります。

現地時間6月3日、Fort Mason Center(サンフランシスコ)で開催されたMicrosoft Build 2026の2日目は、前日の大型発表とは打って変わり、開発者が実際に手を動かすための実装フォーカスのセッションで構成された。

メインセッションは午前9時(PT)から始まった「GitHub, Copilot, VS Code, and More: Live from San Francisco(LIVE104)」。ライブコーディングとデモを中心に、前日発表されたMAIモデル群・エージェント基盤・開発者ツールがどう統合されるかが具体的に示された。

午後には「GitHub Copilot in Visual Studio: Agents That Debug, Profile, and Test(BRK207)」も開催され、Visual Studioにおけるエージェント活用の実演が行われた。以下、2日目の主要発表・深掘り内容を整理する。

GitHub Copilot——8月にGPT-4 Turboから自社モデルへ切り替え

Project Polaris(=MAI-Code-1-Flash)が8月にデフォルト化

2日目の最大の実務的インパクトは、GitHub CopilotのデフォルトモデルがGPT-4 TurboからMicrosoftの自社開発モデルに置き換わる時期が明確になったことだ。

前日発表されたMAI-Code-1-Flash(コードネーム:Project Polaris)は、2026年8月をもって全Copilotサブスクライバーに対してデフォルトのエンジンとして展開される。OpenAIのGPT-4 Turboへの依存を終わらせ、GitHubおよびVS Codeへの統合を前提に最適化した自社モデルに一本化する形だ。

2日目のライブデモでは、MAI-Code-1-FlashのVS Code統合の詳細が披露され、コード補完・リファクタリング・テスト生成の場面での動作が示された。既存のCopilot SDK利用チームはGPT-4フォールバックの移行ウィンドウとエージェントの動作変化を事前に検証する必要があるとされており、8月の切り替え前に評価を行うことが推奨されている。

マルチエージェントサポートとCopilot SDK拡張

VS Code向けのGitHub Copilotにはマルチエージェントサポートが実装された。開発者が独自のエージェントスキルやカスタム動作を追加できるCopilot SDKの拡張機能も発表され、Copilotエージェントをフレームワークに組み込み、Azure OpenAI・Anthropic・その他プロバイダーのエージェントと単一パイプライン上で構成できる仕組みが整備された。

Copilot WorkspaceもGA(一般提供)に到達した。また、GitHubのIssueアサインが直接Azure上のエージェントパイプラインをトリガーし、コード記述・テスト実行・プルリクエスト作成をGitHubインターフェースを離れることなく完結させる統合も確認された。

なお、Copilotの利用計測モデルがCopilot Creditsへ移行し、6月1日に新課金体系が稼働済みであることも改めて紹介された。

Visual Studioのエージェント:デバッグ・プロファイル・テストに参加

午後のBRK207セッションでは、Visual Studioにおけるエージェント活用が具体的に示された。エージェントはライブランタイムの動作を使ってバグを根本原因まで特定し、パフォーマンスのボトルネックを検出し、リグレッションを事前に防ぐためのテストカバレッジを構築する。

これはコーディングアシスタントとしてのCopilotから、開発ライフサイクル全体に参加するエージェントへの進化を示すものだ。既存のデバッガ・プロファイラ・テストツールが持つ深い洞察を、エージェントが実際のアクションに変換するという位置づけで設計されている。

Microsoft IQ——4層が揃い「企業知識を持つエージェント」が現実に

Work IQ・Fabric IQ・Foundry IQ・Web IQの完全体

1日目に概要が示されたMicrosoft IQの全体像が、2日目のセッションで詳細に説明された。Microsoft IQはエージェントにコンテキストを提供するための統合インテリジェンスレイヤーで、4つのコンポーネントで構成される。

Work IQは、Microsoft 365上で実際に起きている業務の流れ——人物・メール・ドキュメント・会議・組織の関係性——をエージェントに把握させるワークプレイスインテリジェンス層だ。Work IQ APIは6月16日にGAとなり、組織内の知識へのプログラムアクセスが開発者に開放される。

Fabric IQは構造化されたビジネスデータに対する共通のセマンティック基盤を提供し、Foundry IQはエンタープライズ知識とライブWebにまたがる検索計画を可能にする。そして新たに発表されたWeb IQが加わることで、エージェントはリアルタイムのWeb情報を最速でgroундingに使えるようになった。

Microsoft IQはGitHub Copilot・Microsoft Foundry・Copilot Studioのすべてにわたり、この日GAが確認されている。

「企業を知っているエージェント」というインパクト

Work IQ APIのGAが持つ意味は大きい。これまでのエージェントは「インターネットを知っている」にとどまっていたが、Work IQによってエージェントは「自社の組織・プロセス・人間関係を知っている」状態に近づく。

Frontier Tuning(プライベートプレビュー)と組み合わせれば、自社データでMAIモデルをファインチューニングしながら、コンプライアンス境界内でドメイン特化型エージェントを育てていくことが可能になる。

Microsoft Foundry——本番運用の仕組みが一気に揃う

Hosted Agents GA、Microsoft Agent Framework 1.0 GA

Microsoft Foundryが本番運用を見据えた機能を複数GAとした。Hosted Agentsは6月末をめどにGA予定で、ハイパーバイザー分離・エージェントごとのEntra ID・azdによるソースコードデプロイ・組み込みコンテンツセーフティ・Voice Live・WebSocketに対応する。

Microsoft Agent Framework 1.0もGAに到達。Agent Control SpecificationとAdaptive Evaluationsはプレビュー段階で、エージェントの動作定義と評価の標準化を推進する。Microsoft Discoveryもこの日の一般提供が確認された。

Azure Agent Mesh——エッジ・クラウド・オンプレを横断するフェデレーション管理

新発表として注目されたのがAzure Agent Meshだ。エージェントの実行をオンプレミスのWindowsサーバー・Windows 365クラウドPC・Azure Arc対応エッジデバイスにわたってフェデレーション管理するコントロールプレーンとして機能する。

開発者はローカルフレームワークAPIと同じ構文でAgent Meshをターゲット指定でき、各タスクはレイテンシとGPU可用性に基づいて最適なコンピュートノードに自動ルーティングされる。

GAは2026年Q4を目標としており、大規模なマルチエージェントシステムを分散環境で安全に運用する基盤として設計されている。

VS Code・Windows開発者体験の強化

Aion 1.0によるローカルエージェント実行

前日のProject SolaraとRTX Spark Dev Boxに合わせる形で、Windows上のローカルAIエージェント実行環境としてAion 1.0 InstructとAion 1.0 Planの詳細が示された。

クラウドへの接続なしにエージェント機能の一部を実行できる設計で、VS Codeへの新設定オプションとともに提供される。

OpenClaw + WindowsネイティブのサンドボックスとMXC

OpenClaw(オープンソースのAIエージェント基盤)とWindowsのネイティブ統合デモも披露された。エージェントを隔離環境で動作させる**MXC(Windows Agent Containment)**との組み合わせにより、意図しない操作やデータアクセスを防ぎながらエージェントを安全に動作させる構成が示された。

Windows Development Configurationsはこの日GAに到達。単一の設定ファイルで新規マシンを即座に開発可能な状態(WSL・PowerShell 7・Git・GitHub CLI・VS Code・Pythonほかプリロード済み)にセットアップできる機能だ。

Intelligent Terminalなど新しいAIファーストのターミナル体験もVS Codeに統合され、シェル操作の摩擦を減らす設計が示された。

MAIモデル群の詳細——音声・文字起こし・画像の仕様

2日目のセッションでは、1日目に一括発表された7本のMAIモデルの詳細仕様が補足された。

  • MAI-Transcribe-1.5:43言語に対応する高精度の音声認識モデル
  • MAI-Voice-2:15言語以上の新ボイスを追加した音声生成モデル
  • MAI-Image-2.5:マルチモーダル対応の画像生成モデル
  • MAI-Code-1-Flash:GitHub/VS Code統合に特化したコーディングモデル(8月デフォルト化)
  • MAI-Thinking-1:高度推論に特化したフラッグシップモデル

いずれもAzure AI Foundryから利用可能で、OpenAI・Anthropic・Mistral・DeepSeekなど外部モデルとの併用・切り替えにも対応している。

Build 2026が示した「エージェントを動かす技術スタック」の全体像

2日間のBuild 2026を通じて、Microsoftが描くエージェントコンピューティングの技術スタックが明確に輪郭を現した。

Microsoft IQでコンテキストを与え、Microsoft Foundryで構築・実行し、Agent 365でガバナンスを管理し、Azure Agent Meshで分散実行を制御し、Copilot Creditsで利用を計測する——このライフサイクル全体を自社プラットフォームで完結させようとするMicrosoftの意図は、2日目の実装レベルの発表によって裏付けられた形だ。

8月のGitHub Copilotデフォルトモデル切り替え、6月16日のWork IQ API GA、6月末のHosted Agents GA——直近数か月で実際に動き始めるタイムラインが具体的に示された点で、Build 2026は「将来構想の発表会」ではなく「実装フェーズの開始宣言」として機能した2日間だったといえる。

※出典:What’s Coming Next in Visual Studio: Our Microsoft Build 2026 Announcements(Visual Studio Blog) / Microsoft Build 2026 Highlights: From MAI-Code-1 to Project Solara(Gizbot) / GitHub Copilot Replaces GPT-4 With Project Polaris, Ships Multi-Agent VS Code at Build(TechTimes) / Microsoft Build 2026: Be yourself at work(Microsoft Official Blog) / Microsoft Build 2026 Recap — All AI Announcements(A Guide to Cloud & AI)

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