業務マニュアルはAIでどこまで作れる?作成手順と注意点を解説

業務マニュアルはAIでどこまで作れる?作成手順と注意点を解説

※本記事は2026/08/08時点での情報を基にしており、閲覧時点では内容や状況が変わっている可能性があります。

業務マニュアルを整備したいのに、日々の業務に追われて手が回らない——着手できないまま時間が過ぎていないでしょうか。

AIに任せられるのは下書き・整形・更新までで、業務の判断基準と最終確認は人間が担当する必要があります。本記事では、その線引きを踏まえた作成の5ステップを紹介します。プロンプトの書き方や入力ルールまで解説するので、ぜひ参考にしてください。

業務マニュアル作成でAIに任せられる3つの工程

AIと人の役割分担——AIが担う下書きの作成・資料の整形・更新時の書き換え・表記のチェックと、人が担う対象業務の選定・判断基準の決定・公開前の確認を整理

AIでマニュアルを作ると聞くと、指示を一度出せば一式が仕上がる様子を思い浮かべるかもしれません。しかし実際には、AIが引き受けられる作業と、人が引き受けるしかない作業がはっきり分かれます。まずは、その線引きから確認しておきましょう。

業務マニュアルづくりでは、下書きの作成・既存資料の整形・更新時の書き換えの3つをAIに任せられます。加えて、表記の揺れや分かりにくい言い回しを見つけるチェック作業にも使えるでしょう。

一方で、どの業務をマニュアル化するかを決めることと、書かれた手順が現場の実態と合っているかを確かめることは、人の仕事として残ります。

工程担い手具体的な作業
下書きの作成AIメモ・聞き取り記録から文章の初版を作る
資料の整形AI既存の資料を決まった型に整え直す
更新時の書き換えAI手順の変更を関連箇所へまとめて反映する
表記のチェックAI用語の揺れ・分かりにくい言い回しを洗い出す
対象業務の選定どの業務をマニュアル化するかを決める
判断基準の決定例外時の対応・担当者の裁量の範囲を決める
公開前の確認手順が現場の実態と合っているか確かめる

AIへ任せる3つの工程と人が引き取る工程は、着手前に決めておきましょう。線引きが曖昧なまま任せると、体裁は整っていても、現場では使えない文書になってしまう可能性があります。

なお、業務マニュアルそのものの役割や手順書との違いについては、以下の記事をご覧ください。

AIが得意なのは下書き・整形・更新の作業

AIは、手元にある情報を別の形に変換する作業を速く進めます。箇条書きのメモから文章の初版を作る、既存の資料を決まった型に整え直す、手順が一つ変わったときに関連する記述を書き換えるといった作業です。いずれも、与えられた材料を組み替える点は共通しています。

翻訳や要約も、ほとんど同じ性質の作業です。効果は文章を作る速さだけでなく、書き直しの往復をどこまで減らせるかにも表れます。

白紙の状態から書き始める負担がなくなるため、担当者は文章表現に悩む時間を減らせます。空いた時間は、内容が正しいかどうかを確かめる作業へ振り向けるとよいでしょう。

業務の判断基準と最終確認は人が担う

一方で、社内の合意が必要な領域は、AIだけでは確定できません。例外時の対応や担当者の裁量の範囲といった基準は、材料なしでAIに書かせると推測が混じります。

さらに注意したいのが、生成された文章が事実と違っていても、AIは違和感なく書ききってしまう点です。誤った手順が自然な日本語で書かれていると、読んだだけでは気付けません。

公開前に、その業務を実際に担当している人が読んで確かめる工程を必ず入れてください。この確認を省くと、誤った手順が業務で使われるおそれがあります。

※出典:AI事業者ガイドライン(第1.2版)(総務省・経済産業省) / Artificial Intelligence Risk Management Framework: Generative Artificial Intelligence Profile(NIST)

業務マニュアル作成にAIを使う3つの効果

AIで変わる業務マニュアル作成——下書きの着手が早くなる時間短縮・書きぶりの差を抑えやすい品質の安定・更新と展開が進めやすい運用負担の軽減の3つを、元になる情報がそろっている前提とあわせて整理

AIに任せられる範囲が見えたところで、実際に使うとどのような変化が起きるのかを整理しておきましょう。作成時間の短縮だけを期待していると、導入後に思ったほど楽にならないと感じることも少なくありません。ここでは、時間・品質・運用の3つの面から効果を確認しておきましょう。

AIを使う効果は、作成時間の短縮にとどまりません。書き手による書きぶりの差が縮まること、更新と多言語対応の負担が軽くなることも、実務では変化として表れます。

ただし、いずれも元になる情報がそろっているときの話です。材料がない状態からAIに書かせると一般論に偏りやすく、自社の役に立つ文書にはなりにくいでしょう。

下書きにかかる時間を減らせる

AIを使うと、担当者の仕事は「書く」から「直す」へ移ります。白紙を前にして構成を考え、言い回しを整える作業の一部を任せられるため、着手しやすくなるでしょう。

実際に効いてくるのは、一度で完成させられることではありません。粗い下書きを用意し、現場の意見を聞きながら直していく進め方を取りやすい点です。

削減率を掲げる記事は多く見られますが、業務の複雑さと元資料の状態によって結果は変わります。数字を当てにするより、自社のどの作業が置き換わるかで判断する方が確実です。

書き手による書きぶりの差を抑えられる

部署ごとに担当者が書くと、説明の細かさも言い回しもそろいません。読み手は文書ごとに読み方を切り替えることになり、必要な情報を探しにくくなります。

同じ指示文で生成し、同じ表記ルールで整えると、この差を抑えやすくなるでしょう。用語の統一や語尾の調整は、AIに指示しやすい作業です。

形式がそろうと、部署をまたいで異動した従業員も文書の構成を把握しやすくなります。その結果、内容の理解に集中しやすくなるでしょう。

更新と多言語への対応が軽くなる

マニュアルが使われなくなる原因の一つに、内容が古くなったまま放置されることがあります。作成時だけでなく、更新時の負担も運用を左右する要素です。

手順が変わったとき、関連する記述を洗い出して書き換える作業にもAIを使えます。変更点を伝えれば影響しそうな箇所の候補を挙げられるため、担当者は更新箇所を確認しやすくなるでしょう。

外国籍の従業員が働く現場であれば、翻訳の下書きにも利用できます。日本語版を更新してから各言語版を作り直し、内容を人が確認する流れにすると、版のずれを見つけやすくなります。

AIで業務マニュアルを作る5つのステップ

業務マニュアルの作り方ロードマップ——対象業務を選ぶ・元情報をそろえる・読み手と構成を指示する・現場で試して確認する・置き場所と更新担当を決めるの5ステップを、AIを使う場面と人が確認する場面に分けて整理

効果が見えたところで、実際の進め方を確認しておきましょう。AIを使うときも、骨格は従来のマニュアル作成と変わりません。違いは、材料を集めた後の工程でAIを使えることと、集める段階の不足が品質に影響することです。ここでは、一つの業務を対象に、着手から運用までを5つのステップで見ておきましょう。

STEP1 マニュアル化する業務を一つ選ぶ

全業務を一度にマニュアル化しようとすると、途中で止まりやすくなります。担当者が一人しかいない業務・問い合わせが繰り返し発生している業務から選ぶと、効果を確かめやすいでしょう。

選ぶときは、その業務が止まったときの影響の大きさを確認してください。担当者が休むと他の人が動けなくなる業務であれば、優先度の高い対象です。また、最初の1本は、AIの使い勝手を測る試験も兼ねています。期間が短く、手順の決まった定型業務の方が、出来上がりを評価しやすいでしょう。

STEP2 AIに渡す元の情報をそろえる

形式が整っていなくてもよいので、その業務について社内にある記述をひとまとめにします。何を集めればよいかは、次の4種類を目安にしてください。

そろえる材料探す場所見つからないときの代わり
既存の手順書・マニュアル共有フォルダ・担当者のパソコン担当者への聞き取りメモ
過去のやり取りメール・チャットの検索履歴問い合わせを受けた人に書き出してもらう
画面や現場の様子スクリーンショット・作業の録画作業中の画面をその場で撮影する
判断基準・例外時の対応明文化されていないことが多い担当者の口頭説明を録音して文字起こしする

材料が何もないときは、担当者に作業しながら口頭で説明してもらい、録音を文字起こしする方法があります。文字起こしサービスを使えばテキスト化できますが、固有名詞や専門用語の誤認識は人が確認してください。

この材料の具体性は、生成される下書きの精度を大きく左右します。ここを飛ばしてAIに指示を出すと、どの会社にも当てはまる一般論に偏りやすくなるでしょう。集めた材料をそのままAIへ入力してよいかは、社内のルールを決めてから判断します。

STEP3 読み手と構成をAIに指示する

材料がそろったら、誰が読むのか・どこまで知っている人向けか・どの形式で出すのかを指示に含めてください。この3点を渡さないと、意図とは異なる読み手を想定した文章になるかもしれません。

新人向けと経験者向けでは、同じ業務でも書くべき分量が変わります。前提知識をどこまで省いてよいかは、自社の基準としてAIへ伝えてください。加えて、形式の指定も忘れないようにしましょう。番号付きの手順にするのか、チェックリストにするのかで、現場での使われ方が変わってくるためです。

STEP4 現場で手順通りに動けるか試す

生成された下書きは、机上で読むだけでは誤りに気付きにくくなります。文章として整っている分、抜けている前提を見落とすことがあるためです。

その業務を知らない人に渡し、書かれた通りに作業してもらうと、社内でしか通じない略語や、暗黙のうちに省かれた手順が浮かび上がります。この工程で出た指摘は、次に同じ業務をAIへ書かせるときの指示文に反映できます。

試す相手は、新しく配属された人や他部署の人に頼むとよいでしょう。長く担当している人は、書かれていない手順を無意識に補って読むことがあるためです。

STEP5 置き場所と更新の担当を決める

完成したマニュアルをどこに置くか、誰がいつ見直すかは、公開と同時に決めておきましょう。担当者が普段開いているツールの中に置かないと、存在を知られないまま忘れられてしまう可能性があります。

更新は、見直し日だけでなく、業務手順の変更や問い合わせの発生にも紐付けるとよいでしょう。定期確認と変更時の修正を組み合わせると、実態との差を見つけやすくなります。

手順を変えた人が、その場でマニュアルも直す形が理想です。この流れを作れると、更新の遅れを抑えやすいでしょう。なお、社内の文書が見つけてもらえない原因は置き場所だけではありません。マニュアルや資料が探せない状態を整理する視点については、以下の記事で解説しています。こちらも参考にしてください。

マニュアルの精度を上げるプロンプトの書き方

実務で使える指示文の設計ポイント——役割と読み手と目的の先出し・資料を渡してから書かせること・出力形式の指定・未確認の明示の4点と、そのまま使えるプロンプトの型を整理

手順の中でも、生成の質を左右するのが指示文の書き方です。生成AIへの指示は、長く書けばよいわけではありません。役割・読み手・目的・制約・出力形式の5点を先に渡すと、意図した形式へ出力を寄せやすくなります。ここでは、指示の型と実際に使える例文を確認しておきましょう。

役割・読み手・目的を最初に伝える

マニュアルの下書きをAIに書かせるときは、指示文の冒頭に役割・読み手・目的の3点を置くようにしましょう。この3点を先に伝えると、専門用語の使い方と説明の細かさを調整しやすくなります。

役割を与えない指示文では、想定と異なる説明文が出力されがちです。結果として、新人には難しく、経験者には冗長な文章になりかねません。

例えば「あなたは製造現場の教育担当者です」「読み手は入社1カ月の新人です」「目的は一人で作業できるようになることです」といったように、AIの立場・読む人・到達点をそれぞれ一文で書き添えてください。

目的の書き方にも幅があり、「マニュアルを作る」ではなく「読み手が一人で作業を終えられるようにする」と書くと、完了までの手順を含んだ下書きが返ってきます。

手元の資料を渡してから書かせる

STEP2で集めた材料は、指示文と一緒に貼り付けます。その上で「この内容だけを根拠に書いてください」と条件を付けると、余計な補完を抑えるための条件になります。

資料に無い箇所については、「未確認」と出すように指定しておくとよいでしょう。この一手間で、人が確かめるべき部分を見つけやすくなります。

材料が多いときは、一度に全てを渡さず、作業の区切りごとに分けて渡すとよいでしょう。サービスごとに、一度に渡せるファイル数・容量・情報量の上限は異なります。使う前に、提供元の公式サイトで上限を確認してください。

そのまま使えるプロンプト例

実際の指示文は、次のような形になります。〔 〕の部分を自社の業務名に置き換えれば、そのまま使えるでしょう。まずは、新人向けの手順マニュアルを作る例です。

あなたは〔製造現場〕の教育担当者です。
読み手は入社1カ月の新人で、〔対象業務〕の経験はありません。
目的は、読み手が一人で〔対象業務〕を最後まで進められるようになることです。

以下の資料だけを根拠に、業務マニュアルの下書きを作成してください。
資料に書かれていない箇所は、推測で補わずに「未確認」と記載します。

【出力形式】
・作業の区切りごとの見出し
・番号付きの手順(一つの手順に一つの動作)
・間違えやすい点があれば、各手順の末尾に注意書き

【資料】
〔既存の手順書・メモ・聞き取り記録を貼り付ける〕

散らばった記録を整理したいときは、次の形が使えます。整形を頼むときほど、内容を足させない条件を明示しておく必要があるでしょう。

以下は〔対象業務〕について社内に散らばっていた記録です。
重複を整理し、作業の順序通りに並べ直してください。

内容を追加したり脚色したりせず、書かれている事実だけを使います。
順序が判断できない箇所は、判断できない旨を記載します。

【出力形式】
・作業の全体像を3行で要約
・番号付きの手順
・判断が必要な箇所は「判断基準:要確認」と明示

【記録】
〔メールの抜粋・チャットのやり取り・手書きメモの文字起こしを貼り付ける〕

AIで作る前に決めておく4つのこと

AIで作る前に決めておく4つのこと——目的とマニュアルの範囲・対象読者と利用シーン・情報の出どころと入力ルール・体裁と表記ルールの4点を例つきで整理

指示文が整っても、社内のルールが決まっていないまま使い始めると、後から困る事態になりかねません。総務省の令和7年版情報通信白書では、生成AI導入時の懸念として「効果的な活用方法がわからない」が30.1%で最多でした。

「社内情報の漏洩等のセキュリティリスク」は27.6%で、これに次ぐ回答です。ここでは、着手前に決めておくべきポイントを押さえておきましょう。

※出典:令和7年版 情報通信白書「企業におけるAI利用の現状」(総務省)

AIに入力してよい情報の線引きを決める

個人情報保護委員会は、個人情報取扱事業者が個人情報を含む指示文を入力するとき、特定した利用目的を達成するために必要な範囲内かを十分に確認するように注意喚起しています。マニュアルの材料には顧客名や取引条件が混ざりやすいため、事前の線引きが必要です。

まず、入力する必要がない氏名や取引先名・単価などを取り除きます。必要に応じて伏せ字に置き換えることも検討しましょう。入力してよい情報と避ける情報を一覧にした上で、担当者間で共有しておくことが大事です。

加えて、利用するサービス側の設定も確認しておきましょう。入力した内容がモデル改善に使われるかどうかは、サービスや契約プランによって扱いが異なります。

※出典:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等(個人情報保護委員会) / Data Controls FAQ(OpenAI) / Updates to Consumer Terms and Privacy Policy(Anthropic) / Gemini Apps Privacy Hub(Google)

誤りを見つける確認担当を決める

AIの出力に誤りが混じることを前提に、公開前に誰が確認するかを決めておきます。その業務を現在担当している人に任せると、抜けや取り違えに気付きやすいでしょう。作業の実態を知らない人だけでは、誤りを見落とす可能性もあります。

確認が形骸化しないように、見る観点を整理して渡しましょう。例えば、手順の順序・使う道具・例外時の扱いの3点を示す方法が一例です。

「全体を確認してください」と依頼するだけでは、見る基準が曖昧です。確認にかかる時間も、あらかじめ業務時間として見込んでおきましょう。

既存資料の著作権と社外資料の扱いを確認する

メーカーの取扱説明書や購入した研修資料をAIに入力し、社内文書へ作り替える行為は、利用条件と著作権の両面で確認が必要です。まずは、自社が権利を持つと確認できた文書から着手すると進めやすいでしょう。

その自社で作成した資料にも、外部素材や委託先が作った著作物が含まれていることがあります。誰が著作権を持つか、契約でどこまで利用できるかを確認してください。

社外の資料を使う段階になったら、発行元の利用条件と許諾の要否を確かめます。社内で使うだけなら問題ないと考えられがちですが、仕事での複製は私的使用のための複製には当たりません。権利制限規定の要件を満たすかどうかは、利用行為ごとの判断です。

※出典:著作権テキスト 令和8年度版(文化庁)

費用と対象範囲を先に見積もる

主要な汎用生成AIの個人向け有料プランには、現時点で月額数千円程度から試せるものがあります。ただし、円換算額・税・地域・契約経路によって価格は変わるでしょう。マニュアル作成に特化したツールも、利用人数や契約条件によって費用が異なるため、見積もりの前提を先に決めてください。

最初から全社導入を前提にする必要はありません。一つの業務で試し、続けられる範囲かを確かめてから広げると、支出の判断材料を得られます。

試した結果は、社内で予算を通すときの材料としても有効です。どの業務のどの作業が何時間変わったかを記録しておくと、次の判断がしやすくなるでしょう。

※出典:What is ChatGPT Plus?(OpenAI) / Pricing(Anthropic)

生成AIとマニュアル作成ツールの使い分け

生成AIとマニュアル作成ツールの使い分け——生成AIが得意な文章作成や多言語翻訳・情報整理と、ツールが得意なレイアウト整備・構成管理・更新や権限の管理を左右に並べたうえで、AIに読ませる情報資産として設計するための構造化・用語統一・具体的な記述・メタ情報・更新維持の5点を整理

費用の話が出たところで、そもそもどちらの方法を選ぶかを整理しておきます。AIでマニュアルを作る方法は、汎用の生成AIを使う方法と、マニュアル作成ツールに搭載されたAI機能を使う方法に分かれます。ここでは、どちらが自社に合うかの判断材料を確認しておきましょう。

観点汎用の生成AIマニュアル作成ツール
向く用途文章中心のマニュアル画面操作・動画の手順
始めやすさ利用中のサービスで試せる契約と初期設定が必要なことがある
費用の目安月額数千円程度から利用人数・契約条件で変動
作成後の管理自社で保管・更新するツール内で版と権限を管理できるものがある
向く段階1本作って効果を確かめる段階複数部署で継続的に作る段階

文書のマニュアルは生成AIから試せる

文章中心のマニュアルを、まず1本作って効果を確かめたい段階では、汎用の生成AIが選択肢になります。既に利用中のサービスがあれば、社内ルール・契約プラン・データ取扱条件を確認した上で試せるでしょう。

ただし、作った文書の保管と更新は自社で管理することになります。置き場所と版の管理を決めないまま作り続けると、どれが最新版か分からなくなります。

共有フォルダの命名規則を決める、更新日を文書の先頭に書くといった手当ては、最初の1本を作る段階から入れておくとよいでしょう。

画面操作や手順の記録はツールが向く

画面の操作を自動で記録して手順書にする、閲覧状況を把握する、権限を分けて配布するといった機能を備えたマニュアル作成ツールがあります。

作る本数が増え、複数部署で共有する段階に入ったら、専用ツールを検討する時期です。一方で、作成本数が少ない段階では、必要な機能と費用が見合うかを確かめてください。

作成の手間よりも管理の手間が上回ってきたら、導入を考える時期でしょう。誰がどの版を見ているか分からなくなってきた状態が、一つの目安になります。

※出典:閲覧履歴はどのように確認できますか(Teachme Biz)

動きを見せたい手順は動画という選択肢もある

手を動かす作業や、文章では伝わりにくい力加減・順序は、動画で示す方法があります。文書と動画のどちらかを選ぶのではなく、同じ手順を文書で残しつつ、つまずきやすい箇所だけ動画にする組み合わせも選択肢です。

動画化を検討するときも、先に元となる手順を整理しておくことが前提です。撮影してから内容を考えると、撮り直しが増える可能性があります。

全編を動画にする必要はありません。文章だけでは伝えにくい箇所を短い動画で補う方法もあるでしょう。動画を作るときの準備の進め方は、以下の記事にまとめました。

マニュアルはAIに読ませる情報資産として設計する

AI活用につながるマニュアル設計——社内AIの参照元になる・書き方をそろえる・更新情報を明示する・画像だけに頼らないの4点と、資料が少ない場合に1業務の録音と文字起こしから始める進め方を整理

ここまでは、AIでマニュアルを作る方法を見てきました。ただし、AI活用の話は作る段階で終わりません。社内で生成AIの利用が広がると、マニュアルは人が読む文書であると同時に、社内の検索やチャットボットが参照する材料です。ここでは、後から活用しやすい形で作るための条件を押さえておきましょう。

作ったマニュアルは社内AIの参照元になる

社内からの問い合わせに自動で答える仕組みでは、多くの場合、AIが既存のマニュアルやFAQを参照します。参照資料がなければ、AIは社内固有の事情を根拠に回答しにくくなるでしょう。

マニュアルが整理されていない会社は、この段階であらためて資料の整備から始める必要が出てきます。今からマニュアルを整えておくことも、将来の参照資料を用意する選択肢です。

社内向けのAIを入れる予定がまだ無くても、人が読みやすいように見出しやテキストを整えることには意味があります。検索で必要な箇所を見つけやすくなるためです。社内の資料をまとめて活用する考え方は、以下の記事で詳しく扱っています。

※出典:How Amazon Bedrock knowledge bases work(AWS)

AIが読み取りやすい形にする3つの条件

後から機械的に扱いやすい文書にするには、次の3点を守っておきます。一つの文に一つの手順だけを書くこと、社内で呼び方が割れている用語を一つに決めること、最終更新日と担当を各文書の先頭に置くことです。

意味のまとまりを分け、更新情報を明示しておくと、後から必要な箇所を探すときに効いてきます。特別な技術は要らず、書くときの習慣を少し変えるだけで済みます。ただし、実際の読み取り方は利用する検索・AIシステムの仕様によって異なる点にご注意ください。

画像内の文字をOCRやマルチモーダルAIで処理できるサービスもありますが、対応範囲と精度は同じではありません。重要な手順はテキストでも残し、画像だけに依存しない形にすると確認しやすくなります。

※出典:Chunk large documents for RAG and vector search(Microsoft)

資料が無い会社は1業務の記録から始める

元になる資料が社内にほとんど無い会社でも、始め方はあります。使用頻度の高い業務を一つ選び、担当者に作業しながら説明してもらう様子を録音するとよいでしょう。

文字起こしをAIに渡せば、初版の下書きを作れます。完璧な1冊ではなく、直せる状態の1本を目指してください。

不完全でも文書の形になっていれば、現場からの指摘を受けて直していけます。録音は数分で終わる業務からでも構いません。頭の中にしかない状態から、確認できる下書きへ変えることが最初の一歩です。

業務マニュアルとAIに関するよくある質問(FAQ)

Q. 無料のAIツールでも業務マニュアルを作成できますか?

A. 無料の範囲でも、下書きの作成はできます。ただし個人向けサービスでは、入力内容をモデル改善に利用するかどうかを設定で選べるものがあります。社内情報を入れる前に、設定・利用規約・プライバシーポリシーを確認してください。人が確認してから公開する前提は、有料・無料を問わず変わりません。

Q. AIが作ったマニュアルをそのまま配布してよいですか?

A. そのままの配布は避けます。誤った手順や社内では通じない表現が含まれる可能性を考え、担当者が読んで確かめてから配布してください。確認していない文書を配ると、誤った手順が業務に使われるおそれがあります。

Q. 紙のマニュアルしかない場合はどうすればよいですか?

A. 全てを入力し直す必要はありません。使用頻度の高いものから撮影して文字に起こし、AIで整形していきます。電子化する前に、どの文書が正本で最新版かを確認し、参照する版を一つに決めておくとよいでしょう。

Q. 社内の情報をAIに読ませても安全ですか?

A. 使うサービスの設定と、社内で決めた入力ルールによって変わります。個人情報を含むときは、利用目的を達成するために必要な範囲かを確認してください。法人向けプランには、入力・出力をモデル学習に使わない方針を明記したサービスもあります。なお、社内利用では契約内容と最新の公式説明をあわせて確認しましょう。

※出典:Business data privacy, security, and compliance(OpenAI)

業務マニュアルのAI活用は一つの業務から試そう

AIには、下書きの作成・資料の整形・更新時の書き換えを任せられます。一方で、対象業務の選定・判断基準の決定・公開前の確認は人の仕事として残ります。この線引きを持っておくと、期待と結果のずれが小さくなるでしょう。

AIの性能だけでなく、渡す材料と確かめる人も成果を左右します。まずは属人化が気になっている業務を一つ選び、手元にある資料を集めてAIに下書きを作らせるところから試してみるとよいでしょう。

作った文書は、将来、社内AIの参照資料として活用できる可能性があります。一つの業務から始めた記録を更新し続けることが、会社の情報資産を整える一歩になるでしょう。

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