OpenAI・Anthropicを含む128組織がサイバー防御の共同行動を要請――公開書簡の三原則とは

OpenAI・Anthropicを含む128組織がサイバー防御の共同行動を要請――公開書簡の三原則とは

※本記事は2026/08/28時点での情報を基にしており、閲覧時点では内容や状況が変わっている可能性があります。

OpenAI・Anthropic・Googleを含む128の企業・団体が、サイバー防御の共同行動を求める公開書簡に署名した。書簡は8月27日(現地時間)、OpenAIのWebサイトに掲載された。

署名にはOpenAI・Anthropic・Google・Microsoft・AWS・CrowdStrike・Cloudflare・NTT DATAを含む128組織が名を連ねた。AIモデルの開発企業とセキュリティ企業に加え、金融機関や重要インフラを支える事業者まで広がった顔ぶれである。

書簡は「今後数カ月のうちに、世界中のモデルの能力が高まるにつれ、AIを用いたサイバー攻撃ははるかに広範かつ高度になる」と述べた。病院から浄水場、インターネットを支えるインフラまで、社会が依存する事業者と公共サービスが危険にさらされているという警告だ。

OpenAIのChris Lehane氏が8月23日(現地時間)に「継続的で持続的な」サイバー攻撃への備えを訴えたのは、個社の立場からの発信だった。今回は業界横断の連名という形をとる。記事内の英語による発言・記述は全て編集部訳である。

128組織が名を連ねた公開書簡

公開書簡はOpenAIのWebサイトに一枚のページとして掲載され、署名組織の一覧・三つの原則・主体別の要求という三つの部分で構成されている。特定の企業名を前面に出した発表ではなく、署名した組織が連名で呼びかける形式をとった。公開日は8月27日である。

OpenAIのWebサイトに掲載された共同声明の位置づけ

書簡の表題は「A call for collective action on cyber defense」で、副題には「世界規模でサイバー防御を急拡大させるための公開書簡」と記されている。本文の冒頭に置かれた見出しは「サイバー防御を強化できる時間は限られている」だ。

本文は、長年積み上がってきた弱点を修復する新しい手段が、現在のAIの進歩によって既に防御側に渡り始めていると述べた。その上で「断固として行動すれば、防御側に残された機会を生かしてデジタル世界をはるかに安全にできる」と主張している。

末尾では産業界と政府の指導者に対し、技術・資源・専門知識の総力をこの取り組みに投じるよう呼びかけた。危険な弱点の修正と検証、機能したものの共有を求める要請だ。

AI企業・セキュリティ企業・金融機関が並ぶ署名一覧

署名一覧には、OpenAI・Anthropic・Google・Microsoft・AWSといった、AIモデルを開発または提供する企業が並んだ。Hugging Face・Perplexity・Scale AI・Cerebrasも署名している。

セキュリティ分野からは、CrowdStrike・Palo Alto Networks・Fortinet・Okta・Zscaler・Darktrace・SentinelOne・Check Pointを含む企業が加わった。

インフラと半導体の側ではCloudflare・Akamai・Equinix・AMD・Arm・Broadcom・Cisco・IBM・Oracleが名を連ねる。金融機関からもVisa・Mastercard・Citi・Capital One・U.S. Bankが署名した。事業会社ではGeneral Motors・Uber・Shopify・Adobeが入っており、日本企業ではNTT DATAが確認できる。

「128組織」と「100社超」の関係

OpenAIの公開書簡ページに掲載された署名組織は、8月28日時点で128だった。ページに掲載された組織名を一つずつ数えた結果である。一方、この書簡を報じたTechCrunchの見出しは「OpenAI, Anthropic, Google, and 100 other companies」で、本文も「100社を超えるテクノロジー企業」と書いた。

TechCrunch本文の「100社を超える」は128組織と両立する。なお、本ニュースではOpenAIの公式一覧を優先し、8月28日の確認時点を添えて扱うこととする。

書簡が掲げた三つの原則

書簡は本文の中ほどで「集団的な対応のために次の原則を提案する」と述べ、三つの原則を並べた。原則はいずれも短い宣言文の見出しと、数行の説明で構成されている。個々の技術や製品ではなく、防御側全体の動かし方を対象にした記述だ。確認した公開書簡本文では、特定の脅威アクターや攻撃手口への言及は確認できない。

現状のセキュリティでは足りないという認識

書簡が最初に置いた原則は「現状維持のセキュリティでは足りないと認識せよ」である。長年放置されたバグ・過剰な権限・設定の誤り・安全でない未修正のソフトウェア・弱い認証・レガシーシステムの技術的負債が、システムを露出させてきたと指摘した。

その上で、特に重要インフラのセキュリティ担当チームは歴史的に資源が不足しており、ツールと資源の急激な増強が要ると述べている。

攻撃側の能力が上がったので守りを固めよ、と促すだけの記述ではない。既に積み上がった脆弱性と人材の不足を前提に、AIの進歩をその修復に充てる順序で議論が組み立てられている。

サイバー能力を持つAIを防御側に届ける

AIを防御側の手に渡すことも、書簡が掲げた原則の一つだ。原文の見出しは「サイバー能力のあるAIでより多くの防御側に力を与えよ」となっている。

説明では、AIが専門的な技能をより多くの防御側にもたらし、中核となるセキュリティ業務を速く・安く・良くすると書いた。さらに、ツール・実践的な知識・検証済みの修正を共有すれば、一つの組織の作業が他の多くの組織を守ることにつながると述べている。

AIによって防御側の専門能力を広げ、一つの組織の成果を他の組織にも共有する発想が置かれた。資源の限られた重要インフラ組織への支援が、書簡全体で強調されている。

集団的な対応の動員と各主体の即時着手

「集団的な対応を動員せよ」と題した原則は、サイバー能力の進歩が世界中で起きている事実を前提に置く。書簡はこれを差し引きでは前向きな変化になりうるとした上で、「単一の企業が未来を支配すべきではない」と明記した。

能力の広がりは世界規模の対応を必要とするとも述べている。安全基準を引き上げ、新たに生まれるサイバー脅威への解決策を見つけるために、新しい提携が要るという主張だ。

三つの原則に続き、「私たち一人一人が今すぐリスクを減らせる」との呼びかけが置かれた。全ての組織・セキュリティ企業・技術パートナー・政府・AIのフロンティア企業に重要な役割があるとし、ツール・資金・実地の支援で防御側の優先事項を加速せよと求めている。予算の限られた重要インフラの組織が、支援の対象として名指しされた。

四つの主体に振り分けられた要求

原則を示したあと、書簡は「次に何が起きる必要があると私たちは考えるか」との見出しを置き、要求を四つの主体に振り分けた。01があらゆる組織・02がセキュリティ企業と技術パートナー・03が政府・04がフロンティアAI企業である。番号は原文の表記に従う。

あらゆる組織に求めた経営レベルの即時対応

01のあらゆる組織に向けた要求は「サイバー防御を経営の即時の優先課題にせよ」から始まる。セキュリティ基準を引き上げ、重要な事業運営を除く全てに優先するインシデント並みの緊急度と連携で、その基準に応えよと書いた。

具体的な行動としては、最もリスクの高い弱点を修正し、必須のサービスを止めずに結果を検証することを挙げている。止めずに修正できないシステムには、代替の統制を適用して検証せよとした。

購入・構築・展開するもののセキュリティ水準を、AIが生成したコードを含めて引き上げるようにも求めた。システムは、最小権限・強固なアクセス制御・多層防御を組み込む形に更新するか置き換えよと記している。

モデルの使い分けにも触れており、広い範囲には低コストで能力のあるモデルを充て、最も難しい問題にフロンティアの能力を適用するよう促した。

セキュリティ企業と技術パートナーに求めた支援

02のセキュリティ企業と技術パートナーには、AIを用いた持続的な攻撃への対応を主導する役割を求めた。フロンティアのサイバー能力に対して防御を継続的に試験すること・既存のツールをAIで強化すること・技術パートナーと組んで隙間を今すぐ塞ぐことが、その中身として挙がっている。

重要インフラの運用者がAIによる防御を利用・展開できる状態にすることも要求に含まれた。ツールの展開と修正の検証を実地で手伝い、サプライチェーンの製造者やシステムインテグレーターと協力して、修正と暫定的な指針を出すよう書いている。脅威情報と検証済みの手順書を共有することも挙げた。

政府に求めた資金供給と攻撃者へのコスト賦課

03の政府に対しては、地方・国・国際の各層でサイバー防御を調整するよう求めた。実行可能な脅威情報を共有する既存の政府・産業の経路を強化し、最も深刻なリスクに優先順位を付け、世界規模でインシデント対応と復旧を調整することを挙げている。

資金面では、対応に必要な人材や予算を欠く必須サービスから順にサイバー防御へ資金を投じよと書いた。信頼できるアクセスプログラムの拡大を急ぐことも求めており、重要インフラのサプライチェーンを優先対象に挙げている。

病院・水道事業者・地方自治体には、能力のある防御用AIと認可された試験を届けるよう記した。項目の末尾には「攻撃者にコストを課せ」という一文が置かれている。

フロンティアAI企業に求めたモデル提供と追跡可能性

04のフロンティアAI企業には、責任あるモデルへのアクセス・相当規模の資金・訓練・実地の支援を提供するよう求めた。資源の乏しい重要インフラの防御側を、優先すべき対象として名指ししている。

観測可能性とセキュリティのツールを構築することに加え、エージェントの識別情報を追跡可能で説明責任のある状態にすることを挙げた。継続的な監視のベストプラクティスの共有も含まれる。

認可された試験・非公開での脆弱性開示・検証済みの修正への投資も要求に入った。政府・セキュリティのパートナー・オープンソースの保守担当者に対し、ツール・手順書・脅威評価を共有せよと書いている。さらに、署名一覧にはOpenAI・Anthropic・Google・Microsoftも入った。04の項目は、書簡に名を連ねたフロンティアAI企業自身に向けた要求でもあるようだ。

個社の警告から業界横断の要請へ

AIのサイバー能力をめぐる発信は、8月下旬の数日で個社の警告から連名の要請に移った。8月23日にOpenAIのChris Lehane氏が示した見解と、8月27日の公開書簡では、呼びかける主体も要求の宛先も異なっている。

8月23日のLehane氏の警告と今回の書簡の距離

OpenAIのグローバルアフェアーズ最高責任者を務めるChris Lehane氏は8月23日(現地時間)、英The Guardianのインタビューで、AIによる「継続的で持続的な」サイバー攻撃に社会が備える必要があると警告した。

Lehane氏は防御側にも高度なAIモデルが要るとの見方を示した上で、公開・配備の前に安全性の証明を義務付ける米国法の制定と、将来的な国際枠組みの構築を提唱している。

今回の公開書簡は、防御側にAIを渡すという方向では同氏の主張と重なる。一方で、確認した公開書簡本文には、立法や事前審査の義務化を求める記述は見当たらない。政府への要求として確認できるのは、調整・資金の投入・信頼できるアクセスの拡大・攻撃者へのコスト賦課である。

発信の形は個社の提唱から128組織の連名に変わったが、要求の中身は法制度の新設ではなく実務の底上げに寄っている。

署名企業が置かれた立場をめぐるTechCrunchの指摘

TechCrunchは8月27日の記事で、署名したAI企業の多くが、より高度なAIモデルの開発を今も進めている点を挙げた。防御を呼びかける立場と能力を高め続ける立場が同居している、という指摘だ。

同メディアによると、署名企業の一部は防御に高度なAIを活用するプログラムやシステムを展開している。OpenAIの「Daybreak」・Anthropicの「Claude Mythos 5」・Microsoftの「Project Perception」が例に挙げられた。

これらはTechCrunchが挙げた事例であり、公開書簡の本文には記載がない。同メディアは記事の背景として、7月のHugging Face侵害事件と、その後に報じられた他社のAIエージェントによる侵入にも触れている。確認した公開書簡本文では、特定の事件を取り上げた記述は確認できない。

公開書簡が残した実行の担保と検証の余地

確認した公開書簡本文には、達成期限や履行を確かめる仕組みを定めた記述は見当たらない。署名した128組織を束ねる事務局や、進捗を集約する主体についても同様である。

進捗の測り方として示された三つの物差し

具体的な進捗指標は、セキュリティ企業と技術パートナーに向けた項目で確認できる。どれだけ多くの組織が保護されたか・どれだけ速く攻撃が封じ込められたか・修正が機能しているかで進捗を測れと書いている。

守った組織の数・封じ込めまでの速さ・修正の有効性という三つの物差しは、製品の販売数や導入社数とは別の軸に置かれた。

確認した公開書簡本文では、この三つを誰がいつ集計するかを定めた記述は見当たらない。測定の呼びかけと、測定結果を持ち寄る場の設計は、書簡の中では切り離されたままである。

期限と拘束力に関する記述の不在

確認した公開書簡本文には、署名組織が負う義務や達成期限を定める条項は見当たらない。原則も要求も呼びかけの形で書かれており、履行しなかったときの扱いも確認できなかった。

時間の幅について本文が示すのは、「今後数カ月のうちに」攻撃が広範かつ高度になるという見通しと、「サイバー防御を強化できる時間は限られている」という冒頭の一文である。

128という署名数は、公開書簡のページを8月28日に確認した時点の数だ。書簡が呼びかけた共同行動が実務としてどう動くかは、署名数だけでは判別できない段階にある。

※出典:A call for collective action on cyber defense(OpenAI) / Daybreak(OpenAI) / Claude Mythos 5(Anthropic) / Rethinking security for the age of AI(Microsoft) / NTT DATA Group Corporate Profile(NTT DATA Group) / Octane Joins OpenAI’s Call for Collective Action on Cyber Defense(Octane Security) / OpenAI, Anthropic, Google, and 100 other companies call for action to defend against rogue AI(TechCrunch) / ‘We are hitting a different chapter’: OpenAI leader warns of threat of ‘persistent’ AI cyber-attacks(The Guardian)

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