Marvell、Googleに最大122億ドルの株式購入権|TPU関連カスタムチップ契約で

Marvell、Googleに最大122億ドルの株式購入権|TPU関連カスタムチップ契約で

※本記事は2026/08/20時点での情報を基にしており、閲覧時点では内容や状況が変わっている可能性があります。

半導体大手のMarvell Technologyは現地時間8月19日、Googleに最大5,897万907株を購入できるワラント(新株予約権)を発行したと、米証券取引委員会(SEC)への提出書類で明らかにした。発行日は8月18日で、当初の行使価格は1株206.58ドルだ。

上限株数に当初行使価格を掛けると約122億ドル。ただし契約はキャッシュレス行使も認めており、同額がそのままGoogleから払い込まれるとは限らない。

ワラントは、7月29日に両社が結んだカスタム半導体の商業契約に伴うものだ。対象はGoogleのAI専用チップ「TPU」の周辺チップ群で、権利の大半はGoogleの購入実績に連動する。

8月19日の終値ベースでMarvell株は前日比9.85%上昇し、Googleのカスタムチップを供給してきたBroadcom株は4.61%下落した。

SEC提出書類が示す契約とワラントの条件

一連の取引の詳細は、Marvellが8月19日付でSECへ提出したForm 8-Kと、添付されたワラント契約の本文に記載されている。商業契約の範囲と権利確定の条件を順に整理する。

7月29日締結の商業契約はTPU関連チップが対象

Form 8-Kによると、MarvellとGoogleは7月29日、カスタム半導体製品の開発に関する商業契約を締結した。拡大された協業の範囲は、TPUエコシステムに接続するカスタムシリコンのプログラム一式に及ぶ。

対象として列挙されたのは、AI推論アクセラレータ・ストレージコントローラ・ネットワークインターフェースコントローラ・メモリインターフェースコントローラ・ニアメモリコンピュートの5分野だ。一覧にTPU本体は含まれず、TPUと組み合わせて動作する周辺チップ群が並んだ。

TPUはGoogleが開発したAI向けのカスタムASICで、機械学習モデルの学習と推論に使われている。システム全体の性能や費用対効果は、アクセラレータ単体ではなく、メモリ・通信・対象ワークロードの組み合わせにも左右される。

最大5,897万株・当初行使価格は206.58ドル

ワラントの対象は最大5,897万907株で、当初の行使価格は1株206.58ドルだ。Reutersは、全株の取得を仮定するとGoogleがMarvellの第5位の株主になる規模だと報じた。

行使期限は原則として2033年8月18日まで。ワラントの第三者への譲渡・時間連動分の株式の売却・取得株式の1日当たりの売却量には、それぞれ一定の制限が付く。

ワラント契約は、現金で行使価格を支払う方法と、受け取る株数を減らすキャッシュレス行使の双方を定めている。約122億ドルは契約規模を示す計算値であり、現金の支払いを確定させる金額ではない。

5億ドルの売上ごとに確定する240回のトランシェ

5,897万907株のうち136万867株は時間連動型だ。商業契約とワラントの締結から1年間、四半期ごとに権利が確定していく。

残る5,761万40株は、Googleとその関連会社向けの対象製品の売上に連動する。この部分は240の均等なトランシェ(区分)に分かれ、累計売上が5億ドル増えるごとに1トランシェずつ確定する仕組みだ。

購入実績の測定期間は2026年8月1日から2033年1月29日まで。240回×5億ドルは1,200億ドルで、Reutersも目標達成を前提に約1,200億ドルの売上をもたらしうる契約だと伝えた。

ただし、1,200億ドルはワラントを全て確定させるための累計売上の閾値であり、Googleの購入義務やMarvellの売上保証ではない。実際の取得株数は、購入実績とGoogleの行使判断に左右される。

株価の反応とBroadcomとの関係

契約開示日の終値ベースで、Marvell株は216.00ドルから237.27ドルへ上昇した。Broadcom株は380.00ドルから362.48ドルへ下落し、Googleの親会社AlphabetのClass C株は0.12%高とほぼ横ばいだった。

Broadcomは最長2031年の長期契約を4月に開示

Broadcomは4月6日付のForm 8-Kで、Googleとの長期契約を開示している。将来世代のカスタムTPUの開発・供給に加え、次世代AIラック向けのネットワーク部品の供給保証を最長2031年まで担う内容だ。

同じ4月にはThe Informationが、GoogleとMarvellによる推論向けAIチップの協議を報じていた。今回のForm 8-Kにより、Marvellとの商業契約の存在とワラントの条件が公式文書で明らかになった。

つまりGoogleは、Broadcomとの長期契約を維持したまま、Marvellを2社目の設計パートナーとして公式に加えた形となる。開示された対象を比べると、BroadcomはTPU本体とAIラック向けの部品、Marvellは周辺チップ群と、書類上の役割は分かれている。

「置き換えではない」とみるアナリストの見方

MorningstarのアナリストWilliam Kerwin氏はReutersに対し、今回の契約をMarvellにとって大きな受注と評価した。その上で、Broadcomからの置き換えではなく、Googleのカスタムチップ需要が拡大して新たな調達先が加わったとの見方を示した。

満額行使を前提とする約122億ドルは、購入実績と行使の条件に連動する上限値に当たる。Googleが実際にどれだけの株式を手にするかは、今後の購入の積み上がりと行使の判断次第だ。

複数の設計パートナーが並走する体制が定着するかどうかは、現時点の開示だけでは判断できない。BroadcomとMarvellそれぞれの受注の中身は、今後の各社の開示を待つ必要がある。

GoogleのTPU戦略とチップ調達網

今回の契約は、クラウド事業者が用途別のAIチップを開発する流れの中に位置づけられる。独自チップへの投資は、Googleに限った動きではない。

Amazon・Meta・Microsoftも自社チップを開発

AmazonはTrainium、MetaはMTIA、MicrosoftはMaiaと、主要各社がAI向けの自社チップをそれぞれ開発している。Reutersは、各社がNVIDIA製品より低コストな選択肢を求めていると報じた。

ただし、カスタムチップの効率やコストは対象ワークロードとシステム構成に依存し、GPUより常に優位になるとは限らない。協業する半導体企業の選び方も、費用や導入日程に影響しうる。

GoogleがBroadcomとの契約を維持しながらMarvellを加えた動きは、この開発競争の中で調達先を広げる選択に当たる。TPU関連の開発をどう分担するかまでは、現時点の開示からは読み取れない。

MarvellはAWS・NVIDIAとも関係を築いてきた

Marvellは2024年12月、AWSとの戦略的協業を5年間・複数世代にわたって拡大すると発表した。対象にはカスタムAI製品・光通信用DSP・AEC用DSP・PCIeリタイマー・データセンター相互接続用の光モジュール・イーサネットスイッチが含まれる。

2026年3月にはNVIDIAとの戦略的提携を発表し、NVIDIAから20億ドルの出資を受け入れた。NVLink Fusionを通じて、Marvellのカスタム半導体とNVIDIAのAIインフラを組み合わせられるようにする提携だ。

今回のGoogleとの契約が加わり、Marvellはクラウド事業者とGPU大手の双方との関係を深めた。AIインフラ向けのカスタム半導体が同社の事業で占める比重も、一段と高まっている。

広がる顧客向けワラントの取引構造

大口顧客へ株式購入権を発行し、購入実績に応じて権利を確定させる。同じ構造の取引は、AIインフラを巡る大型契約に先行例がある。2025年10月に発表されたAMDとOpenAIの合意だ。

AMD・OpenAI契約との違い

AMDはGPU「AMD Instinct MI450」シリーズを起点に、計6ギガワット分のGPU供給でOpenAIと提携した。あわせて、最大1億6,000万株のワラントをOpenAIへ発行している。

AMDのForm 8-Kによると、行使価格は1株0.01ドルだった。権利確定は購入量・AMD株価・技術と商業上の条件に連動し、Reutersは全て行使すればOpenAIがAMD株の約10%を保有しうる規模だと報じている。

Marvellのワラントは当初の行使価格が206.58ドルで、名目的な水準に設定したAMDの0.01ドルとは性格が異なる。またMarvellの契約にはキャッシュレス行使の選択肢もあり、全株分の現金が払い込まれる前提の設計ではない。

購入規模1,200億ドルの実現性が焦点に

購入実績に連動するワラントは、供給側と大口顧客の利害を長期で結び付ける可能性がある。その効果や特定顧客への依存の度合いは、実際の購入額と権利行使の状況次第だ。

Marvellの場合、最大1,200億ドルという購入の閾値がどこまで積み上がるかが焦点となる。契約上の購入報告はGoogle向けに行われる仕組みで、進捗が公開資料でどこまで示されるかは現時点で確定していない。

8月18日付で発行されたワラントは、Googleの購入実績とMarvell株式の取得可能数を結び付けた。約122億ドルと1,200億ドルはいずれも条件付きの上限や閾値であり、確定した支払額・売上額ではない点も含めて、今後の開示が注目される。

※出典:Form 8-K(2026年8月19日提出・Googleとの商業契約とワラント発行)(Marvell Technology・SEC EDGAR) / Warrant to Purchase Common Stock(Exhibit 4.1)(Marvell Technology・SEC EDGAR) / Form 8-K(Googleとの長期供給契約)(Broadcom・SEC EDGAR) / AMD and OpenAI Announce Strategic Partnership(AMD) / Form 8-K(OpenAIへのワラント発行)(AMD) / NVIDIA AI Ecosystem Expands as Marvell Joins Forces Through NVLink Fusion(Marvell・NVIDIA共同発表・SEC EDGAR) / Marvell Expands Strategic Collaboration with AWS(Marvell) / Introduction to Cloud TPU(Google Cloud) / AWS Trainium(AWS) / Next-generation Meta Training and Inference Accelerator(Meta) / Maia 200: The AI accelerator built for inference(Microsoft) / Marvell gives Google option to buy $12.2 billion stake in custom AI chip deal(Reuters・Yahoo Finance) / Google in Talks With Marvell to Build New AI Chips for Inference(The Information) / MRVL Stock Price History(Stock Analysis) / AVGO Stock Price History(Stock Analysis) / GOOG Stock Price History(Stock Analysis)

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