Meta、単一GPUで動く300億パラメータのオープンウェイトモデル「Muse Glimmer」を公開

Meta、単一GPUで動く300億パラメータのオープンウェイトモデル「Muse Glimmer」を公開

※本記事は2026/08/11時点での情報を基にしており、閲覧時点では内容や状況が変わっている可能性があります。

Metaは8月10日、手元のパソコンで動く300億パラメータのオープンウェイトモデル「Muse Glimmer」を公開した。ライセンスはApache 2.0で、重みはHugging Faceから入手できる。

想定用途は、計画の立案・ツールの呼び出し・結果の確認・失敗からの復旧までを含むエージェント処理だ。MacやPCにコンシューマ向けGPUが1枚あれば動作するとMetaは説明している。

同社は上位モデル「Muse Spark」を持ち、Glimmerはその出力を使った蒸留で作られた。Mark Zuckerberg氏は、Muse Spark 1.2の重みもまもなく公開する方針を示している。

Metaが公開した「Muse Glimmer」の仕様

単一のコンシューマGPUで動く300億パラメータ

Muse Glimmerは総パラメータ数が約300億のマルチモーダルモデルだ。うち約18億は画像を扱うビジョンエンコーダ(ViT-G/14)が占める。入力はテキストと画像に対応し、学習データは100以上の言語にまたがる。

動作の目安として、Metaは単一のコンシューマ向けGPUを挙げた。具体的にはVRAM 24GBまたは32GBの構成で、RTX 5090・Apple M5 Max・M4 Maxが対象に含まれる。

フル精度では55GBを超えるメモリが必要となり、Metaの表では64GB VRAMを対象にしている。ローカル運用向けには量子化版を用意した。コンテキスト長は131,072トークン以上で、語彙は202,048トークン。知識のカットオフは2026年1月4日だ。

Apache 2.0での配布と量子化版・DFlashによる高速化

ライセンスはApache 2.0で、商用・研究目的での利用や改変が認められている。Hugging Faceのコレクションには、BF16の重みに加えてGGUFのk-quant・ExecuTorchビルド・「DFlash」と呼ばれるドラフターが並ぶ。

k-quantは2種類が用意された。32GBのVRAMを対象とする版は精度低下が0.2%、24GB向けの約17GB版は1.0%だ。低下率は、15の一般的なベンチマークにおける精度指標の平均を基準としている。いずれも4ビット相当の量子化となる。

DFlashはブロック拡散方式のドラフターで、1回の順伝播で16トークンを予測する仕組みだ。本体のモデルが提案を並列に検証し、正しいトークンを採用する。ドラフターは5層で、全層に2,048トークンのスライディングウィンドウ注意を持つ。

K-Quant-17GBと量子化DFlashを組み合わせた計測では、RTX 5090が毎秒74.9トークンから233.4トークンへと3.1倍に伸びた。M5 Maxは26.6から50.2へ、M4 Maxは23.7から37.8へ改善。条件はバッチサイズ1・貪欲デコードである。

Muse Sparkを教師とした蒸留で作られたモデル

Glimmerは、独立して開発された小型モデルではない。Metaの公式モデルカードによると、Muse Sparkを教師とする蒸留によって作られた。

MetaはMuse Sparkを4月に投入し、8月5日にはコーディング向けのMuse Spark 1.2とターミナルエージェント「Muse Code」を公開した。Glimmerは、その系列を手元の端末で扱える規模にしたモデルと位置付けられる。

8月5日の公式発表が示すMuse Spark 1.2の提供先は、Muse CodeとMeta Model APIだ。長工程の開発作業に向けた学習を重ね、Muse Codeと組み合わせた利用を想定している。

上位モデルを外部サービス経由で使い、端末内で済む処理をGlimmerに任せる構成も考えられる。今回の公開は、処理内容に応じて実行場所を分ける選択肢を広げた。

公表されたベンチマークが示す得手不得手

エージェント関連の6指標では比較対象を上回る

Metaが公表した比較対象は、Gemma4-31BとQwen3.6-27Bだ。同程度の規模のオープンウェイトモデルを並べた形になっている。

ベンチマークMuse GlimmerGemma4-31BQwen3.6-27B
MCP Atlas75.554.262.5
SWE-Bench Pro51.236.950.2
AIME 202694.789.294.1
DeepSearch QA74.661.771.1
IFBench77.076.070.8
Gaia243.336.440.0

MCP Atlasは、20超のMCPツールサーバーを使って質問に答える複数ターンの評価だ。Muse Glimmerは75.5を記録し、Gemma4-31Bの54.2とQwen3.6-27Bの62.5を上回った。数学のAIME 2026は94.7、指示追従のIFBenchは77.0という結果だ。

DeepSearch QAは、900の難しい調査質問を自律的なWeb閲覧で解く評価である。検索・ページの表示・ページ内検索を繰り返し、最終回答のF1スコアを算出する。Muse Glimmerの74.6は、比較対象の2モデルを上回った。

ただし、これらはMetaが公表した評価結果だ。Metaの評価方法書は、第三者モデル向けのツールやシステムプロンプトが各モデルの強みに最適化されていない可能性を明記している。数値だけで一般的な優劣が確定するわけではない。

コーディング指標では評価が分かれる

ソフトウェア開発課題のSWE-Bench Proでは、Muse Glimmerが51.2を記録した。Qwen3.6-27Bは50.2、Gemma4-31Bは36.9であり、Glimmerが比較対象を上回る。

一方、SWE-Bench VerifiedではMuse Glimmerが76.0にとどまり、Qwen3.6-27Bの77.2をわずかに下回った。同じSWE-Benchでも、課題セットが変われば順位も入れ替わる。

Terminal-Bench 2.1とOSWorld-Verifiedでは差がより大きい。Metaの公表値では、Terminal-Bench 2.1がGlimmer 51.7に対しQwen3.6-27Bは60.7、OSWorld-VerifiedがGlimmer 65.9に対しQwen3.6-27Bは75.6だ。

Gaia2は、メール・カレンダー・メッセージなどを模した状態付き環境で、複数ターンのツール利用を評価する指標である。Muse Glimmerは43.3で、Gemma4-31Bの36.4とQwen3.6-27Bの40.0を上回っている。

したがって、Glimmerが全てのコーディング・コンピュータ操作で優位とはいえない。手元のモデルに何を任せ、どこから外部のモデルへ渡すかという判断には、用途ごとの検証が必要となる。

端末内で処理が完結することの意味

外部送信を抑える構成という選択肢

モデル推論を端末内で完結させれば、入力データをクラウドAPIへ送らずに処理できる。取引先の資料や個人情報を扱う際に、外部のモデル提供者への送信を避けられる点はローカル実行の特徴だ。

Metaは発表時点で、llama.cpp・MLX・ExecuTorch向けの最適化連携を今後数日で提供すると案内した。これらの連携により、ダウンロードから動作するエージェントまでを数分に短縮する構想を示している。

ただし、モデルが端末内で動くことと、クライアントソフトが外部へ何を送るかは別の問題だ。ローカル実行を選んだだけで通信面の懸念が全て解消されるわけではない。

常時稼働のエージェントという用途

Metaが挙げた用途は、ローカルエージェント・関数呼び出し・端末上のコーディング・LLM-as-a-judgeによる評価だ。Muse Glimmerは常時稼働するローカルエージェント向けに最適化されている。

Metaは、インターネット接続の有無を問わずローカルで利用できる点も説明した。通信の届かない環境で使えることは、クラウド基盤に依存しない処理経路につながる。

Zuckerberg氏は公式文書で、人間関係・健康・仕事・資産・家庭管理・趣味などを支える個人エージェントが24時間動く構想を示した。無償版を数十億人に提供し、追加の計算資源も手頃に利用できる状態を目指すとしている。

Glimmerがその構想を全て実現するわけではない。しかし、端末上で常時動かせるオープンウェイトモデルは、個人向けエージェントの実装手段の一つとなる。

オープンウェイト競争とMetaの立ち位置

Zuckerberg氏が示した分散の論理

Glimmerの公開に合わせ、Zuckerberg氏はAIの将来像をまとめた長文の公式文書を出した。同氏は超知能を一部の機関へ集中させず、広く分散して個人が方向付けられる状態を支持している。

また、Meta Superintelligence Labsが稼働したことを踏まえ、一部のオープンソースモデルの公開を近く再開すると表明した。Glimmerの公開は、この方針を具体化した動きだ。

同氏は、米国のAI開発組織が学習データに関する追加の制約を負う点にも言及した。国外の競合と比べて不利になり得るため、米国のオープンソースモデルが競争できる政策環境を求めている。

Muse Spark 1.2の重み公開という次の焦点

今回重みが公開されたのはGlimmerだ。Muse Spark 1.2について、8月5日のMeta公式発表はMuse CodeとMeta Model APIでの提供を案内している。

その後、Zuckerberg氏は8月10日のX投稿で、Muse Spark 1.2の重みもまもなく公開する方針を示した。投稿では具体的な日付・ライセンス・配布条件までは示していない。

Spark 1.2の重みが実際に公開されれば、Metaはローカル向けのGlimmerに加えて上位モデルも利用者へ渡すことになる。オープンウェイト市場の競争条件に影響し得る動きだ。

Metaにとっては、どのモデルをどの条件で公開し、どこまでを自社サービス経由で提供するかが焦点となる。Glimmerの公開とSpark 1.2の予告は、その線引きが動き始めたことを示している。

※出典:Introducing Muse Glimmer: An Open Agentic Model That Runs on Your Device(Meta AI Research) / Muse Glimmer Model Card(Meta・Hugging Face) / Muse Glimmer Evaluation Methodology(Meta AI Research) / Introducing Muse Code and Muse Spark 1.2(Meta AI Research) / The Future is for Everyone(Meta) / Muse GlimmerとMuse Spark 1.2の重み公開に関する投稿(Mark Zuckerberg・X)

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