Firmus、20億ドル調達で評価額105億ドル超 NVIDIAとBlackstoneが出資

Firmus、20億ドル調達で評価額105億ドル超 NVIDIAとBlackstoneが出資

※本記事は2026/08/08時点での情報を基にしており、閲覧時点では内容や状況が変わっている可能性があります。

オーストラリアでAIデータセンターを手がけるFirmusは8月7日、20億ドルの株式ラウンドで全額の確約を得たと発表した。投資後の企業価値は105億ドルを超え、4月に公表した55億ドルからほぼ倍増した。資金はAIデータセンター群「Project Southgate」の建設とアジア太平洋への展開に充てる。

20億ドルの調達と105億ドル超の評価額

今回の調達には、既存投資家の追加出資と新規投資家の参加がともに含まれる。金額・評価額・投資家の顔ぶれのいずれも、4月の発表から大きく動いた。

出資したのはNVIDIA・Coatue・Blackstone・Jane Street

Firmusの発表によると、今回の20億ドルは全て確約済みの株式投資に当たる。既存投資家のCoatueとNVIDIAが追加参加し、Blackstone Tactical Opportunitiesなど、運用ファンドによる新規株式投資も含まれているようだ。

グローバル取引・テクノロジー企業のJane Streetも参加している。Blackstoneのシニア・マネージング・ディレクターであるジョン・ワトソン氏は、AIインフラを世界の成長に欠かせないものと位置付け、確信度の高い投資テーマだと説明した。

Coatueのゼネラルパートナーであるロバート・イン氏は、独自の技術と製造面の工夫、反復可能な建設手法をFirmusの特徴として挙げている。

4カ月で評価額はほぼ倍増

Firmusは4月、一定のクロージング条件を前提に、Coatue主導で5億500万ドルの追加株式投資を確保する見通しだと発表した。この取引後の評価額は55億ドルになる見込みだった。今回の105億ドル超は、4月に公表した水準からほぼ倍増に当たる。

評価額の上昇そのものは、事業の収益力を直接示さない。ただし、AIデータセンターの建設に必要な資金を短期間で集められる状態にあることは読み取れる。

過去1年の株式調達は30億ドルを超える

Firmusは4月、取引完了後に直近6カ月の株式調達が13億5,000万ドルに達する見通しだと説明した。今回の発表では、過去1年の新規株式調達が30億ドルを超えたとしている。

株式以外の資金も動いてきた。2026年2月には、Blackstone Tactical Opportunities・Blackstone Credit & Insuranceなどが主導し、Coatueが支援する100億ドルの債務融資枠を確保した。

資金はAIファクトリーの建設に充てる

調達資金の使い道は、オーストラリア国内のAIデータセンター建設と、アジア太平洋への展開だ。今回の資金は、発表済み計画の実行を早めるために使われる。

オーストラリアで2028年に1.6GWを目指す

Project Southgateは、Firmusがオーストラリアで進めるAIデータセンター建設計画だ。2025年10月の発表では、初期投資45億豪ドルから最大733億豪ドルへ拡大し、2028年までに1.6GWを稼働させる構想を掲げている。

建設はCDC Data Centresとの戦略提携で進める。NVIDIAのDSX AIファクトリー参照設計を土台にした構成を採用する。タスマニア・メルボルンなど複数拠点への展開構想だ。

タスマニアとメルボルンにGB300を数万基

2025年10月の発表では、タスマニアとメルボルンの初期段階を合計最大150MWとし、2026年半ばまでに5万4,000基のGB300を導入する計画を示した。そのうちメルボルンでは1万8,500基を発注し、2026年4月の稼働を見込んでいた。

2026年3月の別発表では、タスマニアの新設キャンパスに約3万6,800基を配置し、2026年後半に完成させる計画を明らかにした。いずれも発表時点の計画値であり、実際の稼働状況を示す数字ではない。

インドネシア・バタムでは最大17万基の計画

アジア太平洋への展開先には、インドネシアのバタムも含まれる。Firmusは6月、NVIDIAとの提携に基づき、360MW規模のAIファクトリー・キャンパスを建設すると発表した。

契約は2027年・2028年にかけて最大17万基のNVIDIA製アクセラレータを対象とする。開発は、シンガポールに本社を置くDayOneとの共同だ。今回の20億ドルは、この案件の初期段階にも充てられる。

電力の確保が計画の前提になる

AIデータセンターの建設では、用地と機材だけでなく電力の確保が制約になる。Firmusは電力の長期調達と消費の抑制策を、建設に先んじて固めてきた。

南オーストラリア州で600MWを12年契約

Firmusは6月、資源商社のGunvor Groupと600MW・12年間の電力供給契約を結んだ。Gunvorは2032年までに1.2GWの新規再生可能エネルギー電源と1.5GWhの蓄電池整備を支える。

供給先は、南オーストラリア州のTailem BendとStirling Northに計画する2つのキャンパスだ。両拠点の計画容量は合計2.7GWとされる。

電力価格が高いときは消費を絞る

契約には需要応答の約束も含まれた。卸電力価格が合意した水準を超えたとき、Firmusは年間220時間を上限に電力消費を落とす。

大規模なデータセンターは、系統から見れば単一の巨大な負荷だ。消費を抑える仕組みを契約段階で組み込む形は、系統側の懸念に対応するものとなっている。

液浸冷却による電力効率の主張

Firmusは液浸冷却の技術を自社で開発し、電力効率の高さを訴えてきた。同社は2021年、自社の液浸冷却システムがPUE 1.03で安定稼働すると公表した。Project Southgateでは設計値として1.10を掲げる。

PUEは、データセンター全体の消費電力をIT機器の消費電力で割った指標だ。1.0に近いほど、冷却などの付帯設備が使う電力は小さい。いずれもFirmusの公表値であり、同じ測定対象ではない。

NVIDIAが計算基盤の企業に出資する構図

今回の調達で目を引くのは、GPUを売る側のNVIDIAが出資者として並ぶ点だ。同社は2026年に入り、AI関連企業への投資を急速に増やした。

2026年のエクイティ投資は400億ドル規模

CNBCは、NVIDIAが2026年5月上旬までに400億ドル超の投資を確約したと集計した。NVIDIAは年次報告書で、2026会計年度に非公開企業やインフラファンドへ175億ドルを投資したと明らかにしている。

同社の2027会計年度第1四半期の報告書では、4月26日時点の投資確約額は270億ドルだった。CNBCの個別案件集計とは対象・時点が異なるため、両数値は単純比較できない。

最大の投資先はOpenAIで、OpenAIはNVIDIAから300億ドルの投資を受けると発表した。NVIDIAはCoreWeaveとNebiusにも、それぞれ20億ドルを投資している。

出資先が自社製品の購入者になる

Firmusが建てるのはNVIDIA製アクセラレータを収める施設である。今回の出資確約は、その建設を後押しするものだ。投資と自社製品の需要が同じエコシステム内で結び付くため、循環性を懸念する声もある。

NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、投資を自社の技術圏の拡大・深化へ向けていると説明してきた。評価が分かれる論点であり、決算や受注の実態と合わせて見る必要がある。

Blackstoneは債務に続いて株式でも参加

Blackstoneは2月の100億ドルの債務融資を主導し、今回は株式にも参加した。同じ相手に対して、融資と出資の両方の立場を持つ。

FirmusはProject Southgateで長期契約を獲得しており、こうした契約が資金調達の裏付けになる。一方、需要が想定を下回れば、債権者・株主の双方が影響を受ける構図だ。

オーストラリアの制度設計が次の焦点になる

オーストラリアはAIの計算拠点としての存在感を強めつつある。ただし、大規模データセンターの電力を扱う全国基準は、法制化に向けた検討段階にある。

大規模データセンターに新規電源の確保を求める方針

オーストラリア政府は7月、大規模データセンターに対し、自ら新規の電源を確保させる方針を示した。接続費用の全額負担・必要時の消費電力削減・水利用の効率化も法的義務に含める。

アンソニー・アルバニージー首相は、新規の再生可能エネルギー電源と安定化設備を整備し、系統から使う量以上の電力を供給する考えを説明した。政府は2026年8月にNational Cabinetで検討し、2027年初頭の法制化を見込む。現時点では方針段階であり、具体的な要件は今後の制度設計に左右される。

系統需要に占める比率の見通し

Data Centres AustraliaとDC Byteの報告書によると、オーストラリアには162の稼働中データセンターがある。国内の稼働容量は2025年の約1.4GWから、2030年に3.2GWへ増える見通しだ。

AEMOは別の電力需要予測で、2024~25年度のデータセンター消費量を約4TWh・系統需要の約2.2%と推計した。2029~30年度には約12TWhへ増え、約6%を占めると見込む。

日本でもNTTが、データセンターのIT電力容量を2033年度に約1GWへ引き上げる計画を発表した。今回のFirmusの調達は、AIに向かう資金がGPUだけでなく、建屋と電源にも及んでいることを示す事例だ。

※出典:Firmus Announces Fully Subscribed USD$2 Billion Strategic Equity Investment(Firmus) / Firmus Raises USD$505 Million in Strategic Equity Investment Led by Coatue(Firmus) / Firmus Secures US$10 Billion Financing led by Blackstone and Coatue(Firmus) / Firmus Expands Project Southgate Across Australia(Firmus) / Firmus Signs Multi-Year Agreement with Global Hyperscale Customer at Project Southgate(Firmus) / Firmus secures 600 MW energy supply agreement in South Australia(Firmus) / Firmus to Build 170,000 GPU AI Factory Campus with NVIDIA for Global AI-Natives(Firmus) / Carbon-aware Computing(Firmus) / NVIDIA Corporation Form 10-K for Fiscal 2026(SEC) / NVIDIA Corporation Form 10-Q for the Quarter Ended April 26, 2026(SEC) / Scaling AI for everyone(OpenAI) / NVIDIA and CoreWeave Strengthen Collaboration to Accelerate Buildout of AI Factories(NVIDIA) / NVIDIA and Nebius partner to scale full-stack AI cloud(Nebius) / AI in Australia’s interests(Prime Minister of Australia) / Digital demand surge: Preparing Australia’s power systems for the rise of data centres(AEMO) / Australian Data Centre Forecast Report Issue 1(Data Centres Australia・DC Byte) / AI活用の進展に合わせたリソース最適化・オペレーションを実現するAIネイティブインフラ「AIOWN」の展開(NTT) / Nvidia embraces role of AI investor, pushing past $40 billion in equity bets this year(CNBC)

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