GMOインターネットグループがAnthropicと戦略提携:セキュリティ・フィジカルAI・全社業務でClaude活用を計画

GMOインターネットグループがAnthropicと戦略提携:セキュリティ・フィジカルAI・全社業務でClaude活用を計画

※本記事は2026/07/28時点での情報を基にしており、閲覧時点では内容や状況が変わっている可能性があります。

GMOインターネットグループは7月28日、米Anthropic PBCとの戦略的パートナーシップ契約を締結したと発表した。契約締結日は7月10日で、公表までに18日の間隔がある。

発表された適用方針は、サイバー攻撃対策サービス・フィジカルAIとロボティクス事業・グループ全体のAI活用に及ぶ。あわせてグループ全体でClaude Enterprise契約を結び、企業向けのセキュリティ機能を用いたAI基盤を整備する計画だ。

国内では2026年に入ってから、Anthropicと大手企業との提携発表が続いている。今回の契約は、自社サービスへのAI適用と社内でのAI活用を1つの枠組みに束ねたものとなる。

契約で示された4つの取り組み

締結は7月10日、公表は7月28日

契約の当事者は、GMOインターネットグループ株式会社(代表取締役グループ代表・熊谷正寿)とAnthropic PBCである。公式発表日は7月28日。PR TIMESでの配信時刻は同日14時だが、GMO公式ページには時刻が記載されていないため、発表時刻の断定は避ける。

7月28日のリリースは、現在のグループ規模を153社・パートナー約8,300名、インターネットインフラサービスの契約数を1,951万件と説明している。今回の契約は、この事業基盤にClaudeを横断的に活用する方針に当たる。

公表された取り組みは4項目

公式リリースが挙げた骨子は、サイバー攻撃対策サービスへのAnthropicのAI適用・AI/ロボティクス事業での活用・グループ内でのAI活用強化・AI活用推進に向けた共同の取り組みという4項目。

前3項目は「適用する」「実装する」「活用を推進する」といった今後の方針として記されている。4項目目はさらに確度が低く、「ハッキングコンテスト(CTF)など、AI活用を推進するためのイベントをAnthropicと共同開催することを検討しております」との記述にとどまる。CTF共同開催は決定事項ではない。

Claude Enterpriseで社内利用の前提を整える

グループ全体でClaude Enterprise契約を締結し、Zero Data Retention・多要素認証(MFA)・IP制限などを活用したAI基盤を整備すると説明されている。

ただし、Anthropicの公式説明では、Zero Data Retentionは承認を受けた組織との個別の取り決めであり、対象は適格なAPIやClaude CodeのEnterprise利用などに限られる。法令対応・不正利用対策のための例外や、30日保持が必要な対象モデルもある。GMOのリリースだけでは、同グループにおける対象製品・機能の範囲までは分からない。

機密情報を扱う業務でAIを使う際は、モデル性能だけでなくデータの保持条件やアクセス制御も重要な判断材料となる。今回の発表は機能名を示したものの、具体的な設定や運用範囲は今後の開示を待つ必要がある。

セキュリティ製品への組み込み

「Takumi byGMO」とClaudeのMCP連携

サイバー攻撃対策サービスへの適用例として名指しされたのが、GMO Flatt Securityのセキュリティ診断AIエージェント「Takumi byGMO」である。公式リリースは、ClaudeとのMCP連携と最新AIの搭載を図り、より高度で迅速なセキュリティ診断を実現する方針を示した。

Takumi byGMOは、ブラックボックス診断(DAST・動的解析)とホワイトボックス診断(SAST・静的解析)の双方に対応し、脆弱性の自動修正機能も提供している。製品ページでは、従来型のSASTでは検出が難しい認証・認可の不備やビジネスロジックの脆弱性も対象に挙げる。

MCP(Model Context Protocol)は、AIアプリケーションを外部のツールやデータソースにつなぐためのオープンな接続規格だ。ただし、Takumi byGMOとClaudeがどちらの機能をどのように呼び出すのかは、今回の発表では示されていない。

前日に公表された「AIホワイトハッカー byGMO」

提携発表の前日に当たる7月27日、GMOサイバーセキュリティ byイエラエは、サイバーセキュリティ特化のAI基盤「AIホワイトハッカー byGMO」を構築したと公表した。脆弱性診断・ペネトレーションテスト・攻撃の検知や監視・インシデント対応を高度化し、関連サービスを順次展開するという。

同社は背景情報として、Anthropicが2026年4月7日に発表した「Project Glasswing」と「Claude Mythos Preview」に言及している。Anthropicは、同モデルを使って主要なOSとWebブラウザーを含むソフトウェアから数千件のゼロデイ脆弱性を特定したと説明した。

一方、「AIホワイトハッカー byGMO」の公式発表は、この基盤が「特定のAI企業・サービスとの提携によるものではない」と明記している。自社開発モデルまたは一般に利用できるフロンティアAIを用いる構想であり、7月28日のAnthropic提携に基づく実装とみなすことはできない。2つの発表は、サイバーセキュリティへのAI活用という共通領域を持つものの、技術構成上の直接関係は未公表だ。

バグバウンティ1位のリサーチャーを抱える接点

GMOインターネットグループは2026年5月15日、GMO Flatt SecurityのセキュリティリサーチャーであるRyotaK氏が、5月7日に公開された「Anthropic バグバウンティプログラム」の順位表で1位を記録したと発表している。

同社の発表によれば、受理された脆弱性報告数は5月13日時点で45件。2位のリサーチャーの15件を上回った。同プログラムのスコープには、ClaudeのWebサイト・Claude Desktop・Claude Codeなどが含まれる。順位と件数はいずれも5月時点の記録であり、7月末時点の現況を示す数字ではない。

GMOインターネットグループは、約200名の体制を「国内最大規模のホワイトハッカー」と自社リリースで表現している。7月28日の発表は、この体制の実績を生かしたCTFなどの共同開催を検討するとしており、人材基盤と検討項目の関係はリリース内で明示された。

フィジカルAIとロボティクス事業への適用

GMO AI&ロボティクス商事が担う領域

2つ目の柱として挙がったのが、GMO AI&ロボティクス商事(GMO AIR)によるフィジカル領域への実装方針だ。同社はAnthropicのAI技術と、グループが30年にわたり培ってきたインターネットサービス基盤を組み合わせ、「フィジカルAI」の進化を加速させるとしている。

フィジカルAIは、AIをロボットなどの物理システムに組み込み、現実空間での認識・判断・作業に用いる領域を指す。画面内で完結する業務支援とは異なり、現実空間での安全性や動作精度も実装上の論点となる。

ヒューマノイドの国内展開との関係

GMO AIRは2026年6月19日、Unitree Roboticsと国内正規代理店契約を締結し、同日からロボットの販売を始めた。発表は国内正規代理店としており、独占契約とは記載していない。

この代理店契約は、GMO AIRがロボット事業を進めていた事実を示す。一方、7月28日の提携発表は、Unitree Roboticsの機体にClaudeを搭載するとは述べていない。Anthropicの技術を動作制御・指示解釈・計画生成のどこに使うのか、対象機種や実装時期を含めて未公表である。

グループ全体のAI変革との接続

7月に集中した組織側の動き

今回の提携は、7月に相次いだ組織変更と時期が重なる。熊谷正寿氏は2026年7月13日付で、代表取締役グループ代表などとの兼務により「グループAI変革最高責任者(Group CAIO:Chief AI Transformation Officer)」に就任した。本人は公式リリースで、「コーディングはすでに人間だけの仕事ではなくAIの仕事になりました」と述べ、エンジニアを含む組織体制と業務の在り方を見直す方針を示している。

翌14日には「グループAI推進本部」を新設し、グループ副社長執行役員の山下浩史氏が「グループAI変革担当」と同本部長を兼務した。設立発表では、2027年11月30日までに、AIエージェントをフル活用する「日本で最もハイパーオートメーション化された企業グループ」を目指す目標が示されている。

8,300人を83,000人分にという表現

熊谷氏は7月28日のリリースで、「AIの活用力の差は、安全に・大量に・高精度にデータをAIに投入できるかどうかで決まります」とコメントした。そのうえで、8,300人のパートナーの力を83,000人分に変えるべく、グループのハイパーオートメーション化を加速する意向を表明している。

10倍という数字は経営上の目標を示す表現であり、生産性の実測値ではない。Claude Enterpriseの導入は、その目標に向けた基盤整備の1つとして発表された。

支援金による利用の下支え

GMOインターネットグループは2025年5月に「GMO AIブースト支援金」を創設した。制度原典では、パートナー1人当たり最大1万円を目安とし、各会社や部署が「パートナー数×1万円分/月」の費用を負担する仕組みと説明されている。

2026年2月には、Claudeに特化した「GMO AIブースト支援金 for Claude」を開始した。GMOの公式発表によると、従来制度は年間約10億円、Claude向けの追加投資は最大11億5,000万円で、合計のAI活用投資は年間最大約21億5,000万円規模となる。11億5,000万円は別枠の一般投資ではなく、「GMO AIブースト支援金 for Claude」の最大投資額である。

国内大手のClaude採用が続く局面

NEC・富士通に続く大型契約

Anthropicと国内大手企業の提携は今回が初めてではない。NECは2026年4月23日、日本のエンタープライズ領域におけるAI活用を対象とする戦略的協業の開始を発表した。業種別AIソリューションの共同開発・BluStellar ScenarioへのClaude活用・NECグループ約3万人への展開を計画している。

富士通は同年5月27日、Anthropicとの戦略的パートナーシップを発表した。当社グループ全社員約10万人によるClaude活用と、Anthropicの最新AIモデルへの早期アクセスを明記している。

3社の発表は、いずれも社内でのClaude利用と顧客向け事業・ソリューションへの適用を併せ持つ。そのうえでGMOの発表は、セキュリティ診断・フィジカルAI・グループ内AI活用という異なる領域を4項目の骨子として並べている。

実装範囲の広さが持つ意味

今回の発表は複数領域への適用方針を示したが、各施策の開始時期や工程は一律には示していない。社内AI基盤の整備・Takumi byGMOとのMCP連携・フィジカル領域への実装では、必要な開発と検証が異なる。

セキュリティ診断にAIモデルを組み込む場合は、検出精度だけでなく、誤検知・見逃し・モデル更新時の挙動変化も運用上の検証対象となる。発表段階では、Takumi byGMOにおける評価方法や提供開始時期は明らかにされていない。

追加開示が必要になる論点

現時点で公表されているのは契約の締結と主な内容・計画であり、契約金額・期間・排他性の有無はリリースに記載されていない。「グループ全体でClaude Enterprise契約を締結」とする一方、153社へのアカウント展開方法や導入工程も明示されていない。

Takumi byGMOとのMCP連携の時期、GMO AIRにおける対象機種と実装機能、CTF共同開催の可否も続報を待つ段階にある。今回の契約がどのような成果につながるかは、今後の個別発表で確認する必要がある。

※出典:GMOインターネットグループ、Anthropicと戦略的パートナーシップ契約を締結(GMOインターネットグループ) / Project Glasswing: Securing critical software for the AI era(Anthropic) / Zero Data Retentionの対象製品に関する説明(Anthropic Privacy Center) / GMOサイバーセキュリティ byイエラエ、サイバーセキュリティ特化AI基盤「AIホワイトハッカー byGMO」を構築(GMOサイバーセキュリティ byイエラエ) / Takumi byGMO 日本初・セキュリティ診断AIエージェント(GMO Flatt Security) / GMO Flatt Securityのセキュリティリサーチャー RyotaKが「Anthropic バグバウンティプログラム」で1位を記録(GMOインターネットグループ) / GMO AI&ロボティクス商事、Unitree Roboticsの国内正規代理店に(GMOインターネットグループ) / グループ代表・熊谷正寿が「グループAI変革最高責任者(グループCAIO)」に就任(GMOインターネットグループ) / GMOインターネットグループ、新たに「グループAI推進本部」を設立(GMOインターネットグループ) / 「GMO AIブースト支援金」を創設(GMOインターネットグループ) / Claudeの急進化に即応し最大11.5億円を追加投資(GMOインターネットグループ) / NEC、AnthropicとエンタープライズAI分野を中心に戦略的協業を開始(NEC) / 富士通とAnthropic、戦略的パートナーシップ契約を締結(富士通)

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