Google、Gemini Interactions APIを正式版へ|AIエージェント基盤として一本化を推進
※本記事は2026/07/08時点での情報を基にしており、閲覧時点では内容や状況が変わっている可能性があります。
Googleは2026年6月、Geminiモデル向けの新しいAPI「Interactions API」を正式版(General Availability)として提供開始した。2025年12月のパブリックベータから約半年での正式移行となる。
Interactions APIは、従来のgenerateContent APIを補完しつつ、新規開発向けの推奨インターフェースとして位置づけられている。モデル推論とAIエージェントの運用を単一APIに統合し、サーバー側の状態管理、バックグラウンド実行、Managed Agentsといった機能を標準で扱える点が特徴だ。Googleは今後の先端的なモデル機能やエージェント機能を、Interactions API上で展開していく方針を示している。
Interactions APIの設計と従来APIとの違い
単一APIへの統合
Interactions APIの基本構造は、モデル推論もエージェント実行も同じエンドポイント(/v1/interactions)で処理する点にある。開発者はモデルIDを渡せば直接推論、エージェントIDを渡せば自律的な多段処理を実行できる。SDKの呼び出し形式も共通であり、用途に応じてモデルとエージェントを切り替えられる。
従来のgenerateContent APIは引き続きサポートされ、新しいメインラインのGeminiモデルも提供される。一方で、Googleは長時間実行やエージェント向けの先端機能をInteractions APIに集中させる方針を示しており、新規プロジェクトではInteractions APIを優先的に検討する流れが強まりそうだ。
メッセージ構造の変更
従来APIがロールベース(user / model / system)のメッセージ構造を採用していたのに対し、Interactions APIでは型付きステップ(user_input、thought、function_call、model_output)を中心に実行過程を表現する。
各アクションが独立した型を持つことで、エージェントの思考過程やツール呼び出しの中間結果を段階的に表示・デバッグできる。エージェントUIの構築において、処理の透明性を確保しやすい構造といえる。
サーバー側の状態管理
Interactions APIでは、previous_interaction_idパラメータを使い、会話履歴をサーバー側で保持する仕組みが導入された。従来はクライアント側で全履歴を再送信する必要があったが、この変更により開発者側の負担が軽減される。
データ保持期間は有料プランで55日間、無料プランで1日間とされている。保持を望まない場合はstore=falseの設定で無効化できるが、バックグラウンド実行やprevious_interaction_idを使った継続会話とは併用できない。
新機能の概要
バックグラウンド実行
background=trueを設定すると、長時間を要するタスクをサーバー側で非同期処理できる。クライアントはリクエストの完了を待たずにステータスをポーリングし、完了後に結果を取得する。キャンセル用のエンドポイントも用意されている。
この仕組みは、数分から数十分を要するDeep Researchのようなタスクで特に有効である。クライアントの接続が切れてもサーバー側で処理が継続するため、エージェントの自律稼働を前提とした設計といえる。
Managed Agents
Managed Agentsは、Googleがホストする実行環境をAPI経由で提供する機能である。1回のAPI呼び出しでリモートのLinuxサンドボックスがプロビジョニングされ、エージェントはその中でコード実行・Web閲覧・ファイル管理を自律的に行える。
デフォルトで提供される「Antigravity」エージェントに加え、開発者はインストラクション・スキル・データソースを指定してカスタムエージェントを構築できる。また、Deep Researchには速度重視と深度重視の2つの利用形態が用意されている。
Deep Researchの強化
Deep Researchは、Gemini 3.1 Proの統合により強化されている。Google検索・リモートMCPサーバー・URLコンテキスト・コード実行・ファイル検索を同時に利用でき、Web検索を無効にして独自データのみを対象とする設定も可能である。
Googleは、金融・ライフサイエンス・市場調査などのエンタープライズワークフローの基盤として位置づけている。協調的なプランニング機能や、ネイティブのチャート・インフォグラフィック生成も追加された。なお、Deep Research / Deep Research Maxは有料ティア向けのPublic Previewとして案内されており、Interactions API本体のGAとは提供段階を分けて理解する必要がある。
メディア生成の統合
Interactions APIでは、テキスト生成にとどまらないメディア生成機能も扱える。画像生成のNano Banana 2系、音楽生成のLyria 3、複数話者対応のTTS(テキスト読み上げ)が、同じAPI体系から利用できるようになっている。
料金体系とSDK対応
FlexとPriorityの2ティア構成
料金体系は、コスト重視のFlexティアとレイテンシ重視のPriorityティアの2種類が用意された。Flexティアでは標準価格から約50%のコスト削減が可能で、バッチ処理向けに設計されている。Priorityティアはインタラクティブなアプリケーション向けである。
注目すべき点は、このティア選択がアカウント単位ではなくインタラクション単位で指定できることだ。同一プロジェクト内でも、用途に応じてコストとレイテンシのバランスを使い分けられる。
SDK対応状況
正式版のSDKは、Python(google-genai v2.3.0以降)とJavaScript(@google/genai v2.3.0以降)で提供されている。サードパーティではLiteLLM・Eigent・Agnoとの統合も進められている。
一方、動画メタデータ設定・Batch API・自動関数呼び出し・明示的キャッシング・カスタム安全設定などは、現時点ではInteractions APIでは未対応である。
競争環境における位置づけ
「モデルAPI」から「エージェント基盤」への転換
Interactions APIの正式版リリースが示しているのは、GoogleがGeminiを単体の言語モデルとしてではなく、エージェント基盤として売り出す戦略へ本格的に舵を切ったことである。
サーバー側の状態管理はセッション継続を前提とし、バックグラウンド実行はクライアントから切り離された自律稼働を可能にする。Managed Agentsはコード実行環境まで含めた実行基盤を提供する。
これらを組み合わせると、従来の「APIにプロンプトを投げて応答を受け取る」というモデルから、「サーバー上で状態を持ち、自律的に動くエージェントを管理する」というプラットフォームモデルへの移行が見えてくる。
開発者囲い込みの構造
Googleは先端的なモデル機能やエージェント機能をInteractions APIに投入していく方針を示している。従来のgenerateContent APIにも新しいメインラインのGeminiモデルは提供されるが、長時間実行やエージェント関連の先端機能を活用するには、Interactions APIへの移行が重要になる。
この構造は、新規プロジェクトを立ち上げる開発者にとって、Interactions APIを有力な第一候補にする。既存のgenerateContent APIで構築されたアプリケーションについても、エージェント機能の恩恵を受けるには移行判断が必要になる。
AI基盤競争の現在地
生成AI市場の競争軸は、モデル単体の性能比較から、エージェント実行基盤の充実度へ移行しつつある。
OpenAIは新規プロジェクトにResponses APIを推奨しており、Assistants APIは2025年8月26日に非推奨化され、2026年8月26日に終了予定とされている。Responses APIはWeb検索・ファイル検索・Computer Use・Code Interpreter・リモートMCPなどの組み込みツールを扱う基盤として位置づけられている。
AnthropicもClaude Codeに加え、Messages APIをGAの中核APIとして提供しながら、Claude Managed Agents向けにAgents・Sessions・EnvironmentsなどのBeta APIを展開している。
Googleの今回の動きは、モデル・ツール・実行環境・状態管理・課金を一体化したエージェントプラットフォームとして、この競争に正面から参入する意思表示といえる。
今後の注目点
Interactions APIの正式版リリースは、技術的にはAPIの成熟を示すものだが、戦略的にはGoogleのAIプラットフォーム構想の起点と見るべきだろう。
今後の焦点は、Managed Agentsの実用性がエンタープライズの要件をどこまで満たせるか、Deep Researchが実際のビジネスワークフローにどの程度組み込まれるか、そしてgenerateContent APIからの移行がどの程度のペースで進むかという3点に集約される。
また、Gemini Omni Flashは2026年6月30日にPublic Previewとして提供開始され、Computer UseもGemini 3.5 Flashの組み込みツールとして利用可能になっている。従って今後の注目点は、これらの機能がInteractions APIやManaged Agentsのワークフローにどの程度自然に統合され、開発者がどこまで一貫したエージェント基盤として扱えるようになるかである。
Interactions APIが単なるAPIの世代交代にとどまるのか、それともAIエージェント市場の標準基盤を狙う存在になるのかは、こうした機能統合とエコシステムの広がりによって決まることになる。
※出典:Google AI Studio’s Interactions API for Gemini models and agents(Google公式ブログ) / Interactions API Overview(Google AI for Developers) / Interactions API v1 Reference(Google AI for Developers) / Next-generation Gemini Deep Research(Google公式ブログ) / Introducing computer use in Gemini 3.5 Flash(Google公式ブログ) / Gemini Omni Flash and Nano Banana 2 Lite(Google公式ブログ) / OpenAI Assistants migration guide / OpenAI Responses API migration guide / Anthropic API overview / Claude Code overview(Anthropic)