Mistral AI、1兆パラメータ級「Mistral Large 4」を公開プレビュー――APIは2週間半額、重みは月末予定でライセンスは未公表

Mistral AI、1兆パラメータ級「Mistral Large 4」を公開プレビュー――APIは2週間半額、重みは月末予定でライセンスは未公表

※本記事は2026/10/07時点での情報を基にしており、閲覧時点では内容や状況が変わっている可能性があります。

仏Mistral AIは10月6日(現地時間)、同社で最大のモデル「Mistral Large 4」の公開プレビューを始めた。「Mistral Studio」でAPIが同日から使え、価格はローンチ価格として2週間50%オフで提供する。

一方、モデルの重みは月末までに公開する予定で、利用条件を決めるライセンスはまだ示されていない。重みの公開までは、サイバーセキュリティ分野の主要な組織・審査済みパートナー・国家当局が、制限を緩めた同じモデルでレッドチーミングを行うという。

本稿では、10月6日から使えるものとまだのものを分け、性能は同社の発表と第三者の評価を分けて整理する。

10月6日から使えるAPIと価格

今回公開されたのは、APIのプレビューだ。Mistral AIの発表文・ドキュメント・更新履歴(changelog)から、すぐに使える範囲を確認する。

Mistral Studioで、モデルID「mistral-large-4」のAPIを公開

発表文は「プレビューのAPIを今日からMistral Studioで試せる」と書いた。ドキュメントの表示は「Public Preview」・バージョン「v26.10」で、APIで指定するモデル名は mistral-large-4 だ。

発表文は略称を「ML4」とし、愛称として「le Chonk」も添えた。ドキュメントが挙げる機能は、構造化出力・関数呼び出し・文書への質問応答・バッチ処理・エージェント機能を含む。テキストと画像を入力できるマルチモーダルのモデルで、指示応答・推論・エージェント機能を一つのモデルにまとめたと同社は説明している。

通常価格は入力1.36ドル、コンテキスト長は資料で記載が分かれる

トークンは、AIが文章を処理するときの区切りの単位だ。コンテキストは1回のやり取りで扱えるトークン数の上限で、Mistralのドキュメントによれば入力と出力のトークンを合わせて数える。

Large 4のコンテキストは、ドキュメントとchangelogでは100万トークンだ。一方、Artificial Analysisの記事は51.2万トークンと記載している。

通常価格は100万トークンあたり、入力1.36ドル・キャッシュ入力0.14ドル・出力4.18ドルと示された。同じ料金表で、前世代のMistral Large 3は入力0.5ドル・キャッシュ入力0.05ドル・出力1.5ドルとなっている。

ローンチ価格として、2週間は50%オフ

changelogの10月6日の項は「Launch pricing: 50% off for 2 weeks.」と書く。ドキュメントの料金表でもLarge 4の行に割引価格の表示が付き、入力0.68ドル・キャッシュ入力0.07ドル・出力2.09ドルになっている。

ただし、2週間をいつから数えるのか、割引がいつ終わるのかは、確認した資料に書かれていない。発表文の末尾に載る価格は、割引前の入力1.36ドル・出力4.18ドルだけだ。

重みの公開予定・ライセンス・公開前の事前テスト

Large 4は「オープンウェイト」のモデルとして発表された。オープンウェイトとは、学習済みのモデルの重み(パラメータ)を公開し、利用者が自社の環境で動かせるようにする提供の形を指す。ただし10月6日の時点では、重みもライセンスもまだ公開されていない。

重みは「今月末までに」公開予定

発表文は「We will release the weights by the end of the month.」と書いた。重みと合わせて、モデルの構造・追加のベンチマーク・学習後の調整手法の詳細も公開するという。

Hugging FaceのMistral公式ページにも公開予定のリポジトリが置かれ、「Open weights drop at the end of the month.」と書かれている。同ページの表示では、現時点の見込み(Current ETA)は10月31日。

重みが出れば、プライベートクラウドやオンプレミスでも動かせるようになると同社は説明している。現在、一般に公開されているのは、Mistralが運用するAPIのプレビューだ。

ライセンスはドキュメントでも「Coming soon」

ライセンスは未公表だ。ドキュメントのWEIGHTSタブでは、重み(Weights)とライセンス(License)の欄がともに「Coming soon」と表示されている。発表文にも、ライセンスの記載は見当たらない。

前世代のLarge 3は、2025年12月2日の発表と同時に、基本版と指示調整版の重みをApache 2.0ライセンスで公開した。両世代の公表値を並べると次の通りだ。

項目Mistral Large 3Mistral Large 4
発表2025年12月2日2026年10月6日(公開プレビュー)
総パラメータ6,750億1兆(発表文)/1.05兆(ドキュメント)
アクティブパラメータ410億490億(発表文)/520億(ドキュメント)
学習に使ったGPUNVIDIA H200を3,000基NVIDIA Grace Blackwellを3,800基
重みとライセンス発表と同時にApache 2.0で公開重みは月末予定・ライセンスは未公表
API価格(100万トークンあたり)入力0.5ドル・出力1.5ドル入力1.36ドル・出力4.18ドル(2週間は半額)

その前日の10月5日には、米Reflection AIが初のオープンウェイトモデル「Beam」を発表した。Beamは総5,010億・アクティブ230億パラメータで、今月中に重みをApache 2.0で公開するとした。公開前に最終的なレッドチーミングを行う段取りは、両社に共通だ。

サイバー分野の組織・審査済みパートナー・国家当局がレッドチーミング

重みを公開するまでの間、Mistral AIはモデルを実際の環境で試す。発表文によれば、相手はサイバーセキュリティ分野の主要な組織・審査済みパートナー・国家当局(cybersecurity leaders, vetted partners, and state authorities)だ。

これらの相手は、モデレーションを緩め、サイバー関連の能力を広げた同じモデルにアクセスするという。レッドチーミングとは、攻撃者の立場でモデルを試し、悪用の余地や弱点を探す検証のことだ。発表文は、参加する国や機関の名前を挙げていない。

TechCrunchは、現時点では公開のガードレール付きエンドポイント経由でしか使えず、安全性テストの完了後、3週間で重みを公開する計画だと報じた。

規模の公表値と、示された性能

Large 4の規模は、発表文とドキュメントで数値が分かれている。性能については、Mistral AIが発表文で示した値と、Artificial Analysisが独自に公表した値がある。

アクティブ数の違いは集計範囲、総数の差は説明なし

Large 4は、専門家混合(MoE)と呼ばれる構造を採る。トークンごとに、内部の「専門家」と呼ぶ部分モデルの一部だけを動かす方式で、アクティブパラメータは1トークンの処理で実際に使う部分の規模を指す。

発表文と公式Xは、総パラメータ1兆・アクティブ490億とした。一方、ドキュメントは総1.05兆・アクティブ520億と書き、16億パラメータのビジョンエンコーダ(画像を処理する部分)も挙げている。

アクティブ数の違いは、Hugging FaceのMistral公式ページが説明している。トークンあたりのアクティブは490億で、埋め込み層と出力層を含めると520億になるという。公開予定のリポジトリ名は「Mistral-Large-4.0-1T05-A52B」だ。

一方、総数の1兆と1.05兆の差は、確認したどの資料にも説明が見当たらない。Internet Archiveが10月6日13時26分(UTC)に保存した発表文も、総数を1兆と記していた。

「米国・欧州のオープンウェイトを大きく上回る」は同社の主張

Mistral AIは、Large 4が世界の最も強いオープンソースモデルと競える性能にあると主張した。米国や欧州で開発されたどのオープンウェイトモデルも大きく上回るとし、サイバーセキュリティ・金融・法務ではオープンモデルの中で最高水準だと述べている。

発表文の冒頭に並ぶ7つのグラフのうち、米国のオープンウェイトモデルとして登場するのはBeamだけだ。DeepSWE 1.1のグラフに「Beam (self-reported)」(自己申告値)として44が載り、Large 4のプレビュー版は62だった。

グラフでは中国のモデルが上回る項目も

DeepSWE 1.1とTerminal-Bench 4.0の2つのグラフは、Artificial Analysisが評価環境の一般公開前に非公開で測った値として、Mistralが示したものだ。

DeepSWE 1.1にはQwen3.8 Max(51)・DeepSeek-V4-Pro(57)・GLM-5.3(61)・Kimi K3(68)が並び、Kimi K3がLarge 4(62)を上回った。

Terminal-Bench 4.0では、DeepSeek V4 Pro(10)・Qwen3.8 Max(17)・Kimi K3(21)に対し、Large 4は28だった。このグラフで最も高いのはGLM-5.3の40だ。

同社が発表文で示した金融のグラフ(Finance Agent V2)でも、GLM-5.3の55.8がLarge 4の54.7を上回った。当メディアは7月19日の記事で、比較相手の一つであるKimi K3の公開を扱った。

サイバーの測定値と、クローズドモデルの拒否

サイバー分野では同社は、Artificial AnalysisのCyber Indexに含まれるテストで82%を記録し、全モデルで最高だとした。このテスト(CyberGym-E2E-AA)は、脆弱性を見つけて再現し、既存のテストを壊さずにクラッシュを止めるパッチを書くまでを採点する。

パッチが本来の脆弱性を直せたかどうかは、採点に含まれない。Artificial Analysisの記事も、このテストの結果を82%としている。同社はCybenchで93%の課題を解いたとも述べた。

脆弱性を再現するこのテストで、Claude Opus 5.5とGPT-6 Astraはタスクを拒否するためほぼ0点になるとも同社は述べている。サービス提供者側の拒否が正当な脆弱性調査や障害対応を妨げることがあり、重みを公開して自社で動かせることがその解決になる、というのが同社の説明だ。

Artificial AnalysisはIntelligence Index 38と公表

第三者の評価会社Artificial Analysisも10月6日、独自に測ったLarge 4プレビュー版の結果を公表した。総合的な知能を測るIntelligence Indexは38で、GPT-6 Luna(max、38)・DeepSeek V4.1 Flash(max、39)と同じ水準だという。

Artificial Analysisはこの値から、Large 4を米国と中国以外で開発された中で最も知能の高いモデルと評価した。Cyber Indexは50で、GLM-5.3-Flashと同点だった。

一方、Intelligence Indexの1タスクあたりのコストは、通常価格で1.13ドル、割引価格で0.57ドルだった。同程度の知能のオープンウェイトモデルと比べ、4倍を超えるとしている。

欧州の自社基盤で学習し、同じ基盤で提供

発表文は、Large 4を欧州のAI主権と結び付けて説明した。学習と提供の基盤・提供地域・資金について、一次資料で確認できる範囲を整理する。

自社データセンターのGrace Blackwell 3,800基でゼロから学習

Large 4は、欧州にあるMistral自社のデータセンターで、NVIDIA Grace Blackwell 3,800基を使ってゼロから学習した。公開プレビューも、同じ基盤から提供している。

学習データのかなりの部分は多言語で、EUの全公用語を含む160以上の言語にわたるという。学習には、同社が顧客向けの「Mistral Forge」で提供するものと同じ学習・調整・強化学習の環境を使った。強化学習はまだ続いており、性能の伸びは止まっていないと同社は説明している。

欧州のデプロイは「欧州法の下で」Mistralが単独で運用する予定

提供は世界の複数の地域で予定している。そのうち欧州のデプロイは、他のデジタルサービス事業者から独立して、Mistralが一貫して欧州法の下で運用するという。

ただし、Large 4をどの地域でいつから提供するかは示されていない。Mistralのドキュメントには、EUまたは米国の拠点で推論を処理する地域エンドポイント(標準価格の1.1倍)が載るものの、提供モデルは地域で異なるとあり、Large 4が対象かは記載がない。

30億ユーロのSeries Dで調達した資金の最初の成果

発表文は、Large 4を30億ユーロのSeries Dで資金を得たロードマップの最初の節目と位置付けた。同社はこの調達を、欧州のテクノロジー企業として過去最大の株式による資金調達だとしている。

同社のSeries Dの発表によれば、調達後の評価額は210億ユーロを超える。同社は調達した資金で、欧州の自社データセンターの計算能力を大きく増やしているという。当メディアは6月17日の記事で、欧州のAI主権と米国への依存をめぐる議論を扱った。

日本の企業から見て、10月6日時点で確認できること

Large 4の発表は、今使えるものと予定のものが混在している。日本の企業の立場から、確認できる事実と確認できなかった点を整理する。

今試せるのはAPIのプレビュー、重みは月末までに公開予定

10月6日時点で試せるのは、Mistral Studio経由のAPIのプレビューだ。自社の環境で動かせる重みは、月末までに公開される予定となっている。

一方、重みの利用条件を決めるライセンスは未公表だ。前世代のLarge 3はApache 2.0で公開されたが、Large 4の商用での使い方や改変の可否は、ライセンスが出るまで確かめられない。

提供地域とプレビュー中のデータの扱いは確認できない

欧州法の下で運用するデプロイは示されたが、どの地域で提供されるかは今回の発表で確認できなかった。地域エンドポイントでLarge 4を使えるかも、確認したドキュメントの説明だけでは判断できない。

プレビュー期間中に入力したデータを学習に使うかどうかと、稼働率の保証(SLA)・利用回数の上限も、発表文・ドキュメント・changelogでは確認できなかった。

同社の測定に加え、第三者の評価も出始めている

本稿で挙げた性能の数値の多くは、Mistral AIが発表文で示したものだ。一方、Artificial Analysisは独自に測った結果を公表し、知能の指標ではGPT-6 Luna(max)と同じ水準、1タスクあたりのコストは同程度のオープンウェイトモデルより高いと示した。

同社は重みの公開時に、追加のベンチマークと学習手法の詳細を出すとしている。総パラメータの1兆と1.05兆の差についても、現時点では説明がない。

※出典:Introducing Mistral Large 4(Mistral AI) / Mistral Large 4(Mistral AIドキュメント) / Changelog(Mistral AIドキュメント) / Pricing(Mistral AIドキュメント) / Regional inference(Mistral AIドキュメント) / Known limitations(Mistral AIドキュメント) / mistralai/Mistral-Large-4.0-1T05-A52B · Upcoming release(Hugging Face) / Making sovereign, open-weight AI the technology frontier(Mistral AI) / Meet Mistral Large 4, aka Le Chonk(Mistral AI公式X) / Introducing Mistral 3(Mistral AI) / Introducing Beam: Reflection’s 501B open-weight model(Reflection AI) / Mistral has released Mistral Large 4, making France home to the most intelligent model outside the US and China(Artificial Analysis) / CyberGym-E2E-AA Benchmark Leaderboard(Artificial Analysis) / Mistral’s new 1T model aims to leapfrog closed and open rivals(TechCrunch)

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