Google、Gemini 3.8の音声合成モデル2種を公開――声の複製には本人の同意音声が必須、日本語の定型文も用意
※本記事は2026/09/25時点での情報を基にしており、閲覧時点では内容や状況が変わっている可能性があります。
Googleが9月23日付で、Gemini 3.8のテキスト読み上げモデルを2種類公開した。Gemini 3.8 Flash TTSとGemini 3.8 Flash-Lite TTSの2つである。
今回の発表で輪郭がはっきりしたのは、声を新しく作る機能と実在する人の声を複製する機能が、同意の確認・電子透かし・保持期間・価格とセットで製品に組み込まれた点だ。
本記事では、公式ブログと開発者ドキュメント・価格ページの記述を突き合わせ、何ができるようになり、使うために何を満たす必要があるのかを整理した。
公開された2つの音声合成モデル
Googleは今回の2モデルを、あらかじめ用意された声を選ぶ段階から、声そのものを設計する段階への移行と位置づけた。既存のGemini Audioファミリーでは、3.5 Live Translate・3.5 Transcribe・3.8 Live・3.8 Live Extended Thinkingに続くものに当たる。
用途によって2つのモデルが分かれている
Gemini 3.8 Flash TTSは、深い創作方向の制御とキャラクター設計に向けたモデルだ。想定する用途として、ゲーム・没入型のオーディオブック・ポッドキャスト・インタラクティブメディアが挙げられている。
Gemini 3.8 Flash-Lite TTSの方は、大量処理とコスト効率を優先する。大量の吹き替え・音声コンテンツの制作・表現力のある音声エージェントが、想定用途として並んだ。
提供の経路も分かれている。開発者はGemini APIとGoogle AI Studioから当日以降順次使え、企業向けはGemini Enterprise経由のAPIで「Coming soon」とされた。
一般の利用者には、Flash TTSがGemini Notebookに、Flash-Lite TTSがGoogle Vidsに入る。
入出力の上限は、モデルカードでは2モデルとも入力が8Kトークンまでのテキスト、出力が64Kトークンまでの音声とされる。ただし開発者向けのモデルページは出力上限を16,384トークンと記しており、公式資料の間で数字が一致していない。
2,000以上の音声と、言葉で指定して作る声
すぐ使える音声として、Googleは2,000以上の製品利用可能な音声を挙げている。メキシコのスペイン語・ケベックのフランス語・スコットランド英語といった地域的な変種を含むという。
それとは別に、自然言語のプロンプトで声を新しく作れる。役柄・アクセント・声の特徴を指定でき、対象は100以上の言語と方言に及ぶ。音色・ピッチ・速さ・アクセントを後から微調整するボイス・リミックスは、「Coming soon」と記された。
行単位の演技指示と2話者の掛け合い
制御の対象は声質だけではない。読み上げ方にも指示が及ぶ。行ごとに演技を指示でき、数時間の連続音声でも話者の揺らぎを抑える長尺生成に対応した。
1つの台本から2人の話者の掛け合いを作る機能もある。非言語の合図(<laughs>・<sigh>・<gasp>)と相づち(|mhm|・|yeah|)は、タグとして本文に差し込む形だ。
Google AI Studioには、音声生成のプレイグラウンドが用意された。パートナーとしてFigma・HeyGen・Linguana・Wondercraft・99.co・Ollangが、開発者プラットフォームとしてAgora・LiveKit・Pipecat・Vercelが名前を連ねている。
声を複製するには2本の録音が要る
公式ブログは声の複製を、「自分の声、あるいは自分が使う権利を持つ声の30秒の音声サンプル」から一貫した声のプロファイルを再現する機能だと説明している(原文は英語、編集部訳)。手続きの中身は、開発者ドキュメントにより細かく書かれた。
参照音声と同意音声という2本の録音が要る
1回の複製リクエストには、同じ成人話者による実際の録音が2本必要になる。推奨される形式は、24kHzのモノラル・16ビットWAVだ。
1本目は参照音声(source_audio)で、複製したい話者の雑音のない自然な発話を10~30秒。2本目は同意音声(consent_audio)で、同じ話者が定められた同意文を明瞭に逐語で読み上げた録音になる。
複製したい声の録音を用意すれば済む設計ではない。その声の持ち主が、決められた文言を読み上げる録音を別に取る工程が挟まっている。
同意文は30の言語ロケールの定型文で、日本語も用意された
ドキュメントが求めるのは、定められた文言をそのまま読み上げた録音だ。対応する30の言語ロケールのいずれかで、逐語で読み上げることとされている。日本語(ja-JP)の文言もGoogleが定めており、次の一文だ。
私はこの音声の所有者であり、Googleがこの音声を使用して音声合成モデルを作成することを承認します。
読み上げる言語は30のロケールから選べるため、日本語で話す本人の同意は日本語のまま録れる。声の複製に対応するモデルは、gemini-3.8-flash-tts と gemini-3.8-flash-lite-tts の両方だ。
2本の録音は話者一致の検証にかかる
提出された2本の録音は、同じ人物のものかどうかを確かめる話者一致の検証(speaker verification check)にかかる。ドキュメントは検証が安定して通るよう、参照音声と同意音声を同じマイク・同じ音響環境で録ることを勧めた。
同意が既定でどう設定されているかを公式ドキュメントで確かめる読み方は、9月に扱った広告の計測タグの件とも重なる。
声のデータがどれだけ残るかを選べる
複製した声をサーバ側に残すかどうかは、リクエストの store の指定で変わる。識別子の形式と保持期間も、この指定に従って切り替わる。
既定は1年、store=Falseなら7日
既定の store=True では、作られた声に voice_ で始まる識別子が付く。保存できるのはプロジェクトあたり200音声までで、プロンプトから作った声と複製した声の合算になる。保持期間は1年だ。
store=False を指定すると、識別子は voicekey_ で始まる形に変わる。管理はクライアント側へ移り、保持期間は7日に縮む。
ドキュメントはこの選択肢を、「生体的な声のプロファイルをサーバ側に一切残さない必要がある用途向け」と説明している(原文は英語、編集部訳)。
生成された音声にはSynthIDの透かしが入る
Gemini Audioモデルが生成した音声クリップには、全てSynthIDの電子透かしが入るとGoogleは説明する。知覚できない透かしを音声出力に直接織り込み、AIが生成した音声を検出できる状態に保つという説明だ。
声の複製についてはさらに、C2PA credentialsが付くと公式ブログは書いている。C2PAは、コンテンツの出所と編集の履歴を示すためのオープンな技術標準で、Content Credentialsと呼ぶ記録を付与する枠組みに当たる。
透かしの確認にはGeminiとSynthID Detectorが挙がる
Google DeepMindのSynthIDのページは、透かしを確かめる経路を2つ挙げた。1つは、画像・動画・音声をGeminiのチャットにアップロードし、Google AIが作ったものか尋ねる方法である。
もう1つは検証ポータルのSynthID Detectorで、ジャーナリストやメディア関係者と協働して試験中と書かれ、早期テスターの待機リストへの登録が案内されている。
透かしが入っていることと、それが実際に確認されることは別の話だ。生成画像をめぐる同じ論点は、8月のGoogle Earthの一件でも表に出た。
価格は出力側だけで差がつく
価格ページ(Last updated 2026-09-24 UTC)は、2モデルの単価を100万トークンあたりの米ドルで示している。入力の単価は2モデルで同額で、差が出るのは出力の側だ。
入力は同額で、出力は1.5倍の開き
Standardティアの有料枠の単価は次の通りで、2027年1月1日から倍額になる。
| モデル | 入力(テキスト) | 出力(音声) |
|---|---|---|
| Gemini 3.8 Flash TTS | $0.50 → $1.00 | $9.00 → $18.00 |
| Gemini 3.8 Flash-Lite TTS | $0.50 → $1.00 | $6.00 → $12.00 |
※単位は100万トークンあたりの米ドル。左が2026年12月31日まで、右が2027年1月1日から。
入力はどちらも$0.50で、出力はFlash TTSの$9.00に対してFlash-Lite TTSが$6.00となる。倍額になったあとも$18.00対$12.00で、1.5倍という比率は変わらない。
音声は1秒あたり25トークンで数える
Googleは「オーディオトークンは音声1秒あたり25トークンに相当する」と注記した(原文は英語、編集部訳)。音声の長さがそのままトークン数に変わるため、1分の音声は1,500トークンに当たる。
この換算でFlash TTSの出力$9.00を割り戻すと、1分あたり約$0.0135になる。Flash-Lite TTSの$6.00では約$0.009だ(いずれも2026年12月31日までの単価・当メディアによる換算)。
Google自身も10秒あたりの換算値を併記しており、Flash TTSが$0.00225、Flash-Lite TTSが$0.0015である。
無料枠と有料枠でコンテンツの扱いが違う
価格表には各モデルについて「Used to improve our products」の欄があり、無料枠はYes・有料枠はNoと記されている。無料で使う限り、送ったコンテンツはGoogleの製品改善に使われるという整理だ。
無料枠が用意されているのはStandardとPriorityの2ティアで、BatchとFlexの欄には「Not available」と記された。ページ冒頭のプラン説明でも、無料プランは「コンテンツが製品改善に使われる」、有料プランは「使われない」と書き分けられている(原文は英語、編集部訳)。
地域による制限と、公表された数値の出所
使える範囲には、地域による線が引かれている。ただしその一文は、発表ページの本文ではなく脚注に置かれた。あわせて、公表された評価の数値がどこから来ているのかも見ておく。
制限が名指ししたのはAI Studio経由の声の複製
脚注の原文は次の1文である。
Voice replication through AI Studio is not available in Illinois, Texas, EEA, UK, Switzerland, and India.
(AI Studioを通じた声の複製は、イリノイ州・テキサス州・EEA・英国・スイス・インドでは利用できない。原文は英語、編集部訳)
この注が付いたのは、AI Studioの音声プレイグラウンドを紹介する段落の「自分の声を複製する」という語だった。ページ上では、記事本体の後ろに表示される。
対応地域の一覧には英国・スイス・インドが載っている
Gemini APIとGoogle AI Studioの対応地域を示す公式ページ(Last updated 2026-04-28 UTC)は、英国・スイス・インドを利用できる国・地域として挙げている。EEAの構成国では、フランス・ドイツ・アイルランドが一覧に並ぶ。
日本も同ページの国・地域の一覧に掲載されている。脚注が名指しした6つの地域に、日本は含まれていない。
同ページが示すのは、Gemini APIとGoogle AI Studioを使える国・地域である。AI Studio自体は使えて、その中の声の複製が地域によって外れる、という構図だ。
評価の数値はGoogleの発表と評価資料による
公式ブログは、Hume AIのVoice Design BenchmarkでFlash TTSが総合1位(71.4)、アクセントの再現でも首位(60.8)と書いている。Hume AIのOverall Quality Indexについては、Flash TTSが1位・Flash-Lite TTSが2位という表記だ。
Voice Arenaのブラインド人手評価では、日本語を含む主要な言語で上位に入ったとしている。Googleが公開した評価資料では、日本語のEloはFlash TTSが1232だった。これらの数値の出所は、Googleの発表とGoogle自身が公開した評価資料である。
声を新しく作る自由度と、実在する人の声を複製する条件が、同じ製品の中に並んだ。複製する側が用意するのは、10~30秒の参照音声と、Googleが定めた文言を読み上げた同意音声の2本。生成された音声にはSynthIDの透かしが入り、声のデータは1年と7日のどちらで持つかを選ぶ。地域の線は、脚注の1文に引かれている。
※出典:Gemini 3.8 text-to-speech says hello(Google The Keyword) / Voice replication(Gemini API ドキュメント) / Gemini Developer API pricing(Google AI for Developers) / Available regions for Google AI Studio and Gemini API(Google AI for Developers) / Gemini 3.8 Flash TTS(Google AI for Developers) / Gemini 3.8 Audio model card(Google DeepMind) / Gemini 3.8 TTS Model Evaluation(PDF・Google DeepMind) / SynthID(Google DeepMind) / Advancing digital content transparency and authenticity(C2PA)