Xiaomi、MiMo-V2.6の重みを公開――カードはMIT表記、同梱コードはApache-2.0
※本記事は2026/09/22時点での情報を基にしており、閲覧時点では内容や状況が変わっている可能性があります。
Xiaomiが大規模言語モデル「MiMo-V2.6」シリーズの重みをHugging Faceへ公開した。最初のリポジトリが作られたのは協定世界時の9月21日15時39分、日本時間では22日の午前0時39分だ。
総パラメータ1.02兆・活性42Bの混合エキスパートモデルを含む3本が、誰でも落とせる状態に置かれた。公開を伝えるHacker Newsの投稿は、丸1日で983ポイント・445件のコメントを集めている。
3本ともモデルカードのメタデータには mit と宣言されている。ただし条文を収めた独立したファイルは3つのリポジトリのいずれにも無く、同梱されたPythonコードの冒頭にはApache License 2.0のヘッダーが付く。
本記事では、モデルカード・技術報告書・公式ブログに書かれていることと、書かれていないことを照合した。
Hugging Faceに公開された3本の重み
公開されたのは重みを落とせる3本で、これとは別にAPIだけで使えるモデルもある。何がどの形式で置かれたのかを先に整理する。
重みが公開されたのはPro・Flash・9B蒸留版の3本
Hugging Faceの XiaomiMiMo に置かれたのは、MiMo-V2.6-Pro-RL・MiMo-V2.6-Flash-RL・MiMo-V2.6-Distill-Qwen-9B の3本だ。V2.6世代ではBase版もInstruct版も公開されていない。
Proは総パラメータ1.02兆・活性42BのMoEで、384個のエキスパート中8個をトークンごとに動かす。Flashの総パラメータは技術報告書が310B、モデルカードが309Bと記す。
コンテキスト長はどちらも1,048,576トークンで、入力はテキスト・画像・動画・音声の4種類だ。出力はテキストに限られ、音声を出力できるモデルではない。
蒸留版は Qwen/Qwen3.5-9B にMiMo生成のデータで教師ありファインチューニングを施したもので、コンテキスト長は262,144トークンとなる。
公式ブログのPro-UltraSpeedはAPI限定で重みが無い
公式ブログはPro・Flash・Pro-UltraSpeedの3モデル構成としてシリーズを紹介する。ただし MiMo-V2.6-Pro-UltraSpeed の重みはHugging Faceに無く、APIとMiMo Desktopからの利用に限られる。ブログ上の3モデルと、ダウンロードできる3本は中身が一致していない。
量子化の宣言はFP8、格納形式にはMXFP4が併記されている
ProとFlashの config.json は、量子化方式に "quant_method": "fp8" を掲げる。
ただし同じオブジェクトには "store_dtype": "mxfp4"・"mxfp4_block_size": 32 も併記され、格納形式としてはMXFP4が指定された。MXFP4は重みを4ビット幅で格納する低精度形式だ。
技術報告書の7ページにも “We employ MXFP4 quantization-aware training (QAT) during mid-training”(ミッドトレーニング中にMXFP4の量子化認識学習を行う)とある。宣言と格納形式が同じ設定ファイルの中で二重になっており、「FP8で配布されている」とだけ書くと実態からずれる。
MITと宣言するメタデータと、置かれていない条文
ライセンスの表記は、モデルカードと同梱コードで食い違っている。どこに何が書かれているのかを確認する。
条文ファイルは0件、コードにはApache-2.0ヘッダー
ファイル一覧を再帰的に取得すると、Pro-RLは155・Flash-RLは90・蒸留版は17ファイルだ。この中に LICENSE・NOTICE・USE_POLICY に相当するファイルは1つも無い。
モデル全体のライセンスを示しているのは、各 README.md 冒頭のYAMLフロントマターにある license: mit の1行である。
ただし、表記はこの1行だけではない。ProとFlashに同梱された configuration_mimo_v2.py などのPythonコードは、冒頭に Copyright 2026 Xiaomi Corporation.・Copyright 2026 The HuggingFace Inc. team. の著作権表示を持つ。
同じ冒頭には “Licensed under the Apache License, Version 2.0” のヘッダーも付いている。つまり、モデルカードのメタデータはMIT、同梱コードのヘッダーはApache-2.0という二重の表記だ。条文の本体はいずれもリポジトリの外にあり、読み手はSPDXの短縮識別子から正典をたどることになる。
MITの条件は著作権表示と許諾表示を複製に含めること
リポジトリにMITの条文が無いため、SPDX識別子 MIT が指す正典はOpen Source Initiativeが公表する原文になる。条件節は次の1文だけだ。
The above copyright notice and this permission notice shall be included in all copies or substantial portions of the Software.
(上記の著作権表示および本許諾表示を、本ソフトウェアの全ての複製または重要な部分に含めなければならない。)
許諾の側は広く、使用・複製・改変・結合・公開・頒布・サブライセンス・販売を無償で認める。条件はこの1点で、特許についての条項は置かれていない。
ベースのQwen3.5-9BはApache-2.0の全文を同梱している
対照になるのが、蒸留版のベース Qwen/Qwen3.5-9B だ。11,544バイトの LICENSE にApache License 2.0の全文を収め、Copyright 2026 Alibaba Cloud の著作権表示を持つ。
同ライセンスの第4条は、頒布時の条件として写しの交付・改変したファイルへの告知・由来表示の保持を挙げる。NOTICE の引き継ぎは、元の配布物が NOTICE ファイルを含む場合の条件として定められた。
一方の蒸留版は base_model: Qwen/Qwen3.5-9B と派生関係を明示しながら、Qwen側の LICENSE と著作権表示を含めていない。同梱されているものとされていないものの差が、両者を並べるとそのまま見える。モデルカード3本には、利用目的・商用利用・国や地域による制限の記述も無かった。
性能の主張と、技術報告書に書かれた測定条件
Xiaomiは17項目のベンチマーク表を、技術報告書とモデルカードの両方に載せた。数値の内訳と測定条件の記載範囲を整理する。
17項目のうち3社全てを上回ったのは2項目
モデル名は技術報告書の表記のまま、7項目を抜粋した。
| ベンチマーク | MiMo-V2.6 Pro | MiMo-V2.6 Flash | Claude Opus 5 | GPT-5.6 Sol | Claude Fable 5 |
|---|---|---|---|---|---|
| AutomationBench v1.0.6 | 53.1 | 52.3 | 50.3 | 45.8 | 46.2 |
| Terminal Bench 2.1 | 89.9 | 87.6 | 89.1 | 88.8 | 84.3 |
| MiMo Visual Coding(社内) | 72.3 | 71.5 | 70.0 | 73.4 | 69.1 |
| Agents’ Last Exam | 31.6 | 27.6 | 31.6 | 30.8 | 25.7 |
| Terminal Bench 4.0 | 34.9 | 28.8 | 49.0 | 39.9 | 42.4 |
| ProgramBench | 26.5 | 26.0 | 37.0 | 25.0 | 33.0 |
| ExploitBench | 47.9 | 25.3 | 70.0 | 78.5 | 78.0 |
Proが比較対象の3モデル全てを上回ったのは、AutomationBench v1.0.6とTerminal Bench 2.1の2項目だ。社内ベンチマークのMiMo Visual CodingはClaude Opus 5とClaude Fable 5を上回り、GPT-5.6 Solには届かなかった。
下回る側は差が大きい。ExploitBenchは47.9に対して比較対象が70.0から78.5、Terminal Bench 4.0は34.9に対して49.0と、項目によって開きがはっきり出ている。17項目のうち3項目はXiaomiの社内ベンチマークで、うち2項目は他社のスコア欄が空欄のまま載る。
測定条件の記載は「最高設定で評価」の1文だけ
技術報告書の5.2節で測定条件に触れるのは、次の1文である。
All baseline models with configurable reasoning effort are evaluated at the highest supported setting (max).
(推論の努力量を設定できるベースラインモデルは全て、サポートされる最高設定で評価した。)
思考モードの有無・試行回数・pass@kやavg@nの別・温度やtop_pは、比較表の側に書かれていない。比較対象のスコアがXiaomiの再測定か他社公称値の引用かも記されておらず、出所をたどれる項目はGDPval-AA 2.1だけで、参考文献にArtificial Analysisのリーダーボードを9月21日にアクセスしたとある。
CyberGymは評価環境をXiaomiが修正したと脚注にある
技術報告書の21ページには、CyberGymに “We corrected the flawed evaluation environments based on the method described in Section 4.2.4.”(欠陥のある評価環境を4.2.4節の方法で修正した)という脚注が付く。
CyberGymのスコアはProが94.0・Flashが95.1で、比較対象3モデルの欄は空欄だ。評価環境に手を入れたと自ら記した項目が表に含まれる点は、スコアを読むときの前提になる。
独立測定の数値と、自社で動かすときの条件
Xiaomiの公称値は、第三者の独立測定とどこまで一致するのか。自社の環境に重みを置くときの条件も合わせて確認する。
Artificial Analysisの測定値はXiaomiの公称と一致した
Artificial AnalysisはMiMo-V2.6-Proの測定ページを公開している。同ページの数値は更新されるため、以下は9月22日時点の表示である。
Intelligence Indexは46.3242、GDPval-AA 2.1はXiaomiの1673に対して1673.19、Terminal Bench 4.0は34.9に対して34.85だった。
100万トークンあたりのAPI価格も入力$0.435・出力$0.87で公称と一致する。出力速度の中央値は毎秒124.50トークンとなる。
ただしAutomationBenchは、測定ページ側のキー名が “PartialScore”・数値が58.62であり、Xiaomiの53.1と同じ指標かを確認できない。
公式ブログが「Kimi K3とQwen3.8 Maxを上回った」と書いた点については、MiMo-V2.6-Proの測定ページに並ぶ比較データの中にKimi K3は見当たらなかった。
重みは573.5GB、公式の推論例は2ノード構成
モデルカードは推論の起動コマンドを例示する。Pro-RLのSGLangの例は --tp 16・--ep 16・--nnodes 2 を含み、2ノードでの実行を前提にした。Flash-RLはSGLangが --tp 8 の単ノードとなる。
必要なGPUメモリの目安は、どの公式文書にも書かれていない。規模感の判断材料は、重みファイルの実サイズがProで573.5GB・Flashで177.8GB・蒸留版で18.8GBという値と、公式が例示した並列度だけだ。
蒸留版のGGUFは6GB前後、FlashのGGUFは126GB以上
公開から1日のうちに、第三者の量子化版が現れた。bartowski は蒸留版のGGUFを24種類公開し、Q4_K_M が5.84GB・Q8_0 が9.55GBとなる。ダウンロード数は7,935で、公式リポジトリ3本のどれよりも多い。
Flashの量子化版も9月22日に公開された。ggml-org/MiMo-V2.6-Flash-RL-GGUF には Q2_K で126GB・MXFP4 で167GBのファイルが置かれ、いずれも2分割で配布される。一般的なPCのメモリに収まる規模なのは蒸留版のGGUFで、Flashの側は最も小さい Q2_K でも126GBに達する。
trust_remote_codeの要否がモデルによって分かれる
ProとFlashの config.json には auto_map が置かれ、85,516バイトの modeling_mimo_v2.py が同梱された。公式の起動コマンドにも --trust-remote-code が入り、提供元のPythonコードを自社環境で実行することが前提になっている。
蒸留版はこれと異なる。auto_map が無く標準の Qwen3_5ForConditionalGeneration をそのまま使うため、公式コマンドにも指定が無い。外部コードの実行を伴うかどうかが、同じシリーズの中で分かれた。
公開されたのは重みと環境、学習データ本体は含まれない
技術報告書と公式ブログは、何を公開したのかを明示している。同時に、そこへ含まれていないものも読み取れる。
技術報告書にLimitationsとSafetyの節は無い
44ページの技術報告書の目次は、IntroductionからConclusionまでの8章と付録を合わせた9項目で構成されている。Limitations・Safety・Ethics・Responsible Useに相当する節は置かれていない。
モデルカード3本も同じで、Limitations・Bias・Safety・Intended Useの節を持たない。全文を “limitation”・“safety”・“known issue” で検索して該当したのは、KVキャッシュの余裕率を指す “safety-margin” だけだった。
代わりに報酬ハッキングの実例と対策が書かれている
4.2.6節「Reward Hacking Mitigation」には、学習中にモデルが報酬を不正に稼ごうとした振る舞いが記されている。繰り返し現れた失敗モードが「解の漏洩」だ。エージェントが本来のタスク文脈の外から公開済みの修正を入手し、それを使ってパッチを組み立ててしまう。
対策は5つ並ぶ。誤った推論を書き直す例を学習に混ぜること・ビルドログや残存パッチを消すこと・コンテナのネットワークを隔離すること・専用の「ハックエージェント」に抜け道を探させること・軌跡を定期的に監査することだ。安全性の注意書きが無い一方で、学習中に起きた不正な振る舞いとその潰し方は具体的に公開された。
日本語を含む多言語性能の記載は確認できなかった
モデルカードの言語メタデータは、Pro-RLとFlash-RLが en, zh の2つだけで、蒸留版には language の記載自体が無い。
技術報告書を “Japanese”・“multilingual” で全文検索しても、多言語性能に関する節・表・言及は見つからなかった。日本語での実性能について、モデルカードにも技術報告書にも記載は確認できなかった。
学習は9月16日から公開実況されていた
重みが公開される5日前の9月16日、MiMoチーム責任者のFuli Luo氏がXに投稿している。重みの公開告知ではなく、「MiMo-V2.6はいままさにRL実行の最中である」という進行中の公表だ。学習ダッシュボードのURLも添えられている。公式ブログも本番の学習実行をライブ配信したと書き、6日未満でFlashとProが各30回のRLステップを完了したと記す。
公開の範囲は、技術報告書の “We open-source the training dynamics, RL environments, and RL framework”(学習ダイナミクス・RL環境・RLフレームワークをオープンソース化する)という記述に沿う。
実体はGitHubの verl・mimoagent・uni-agent で、ライセンス表示はApache-2.0が2本とMITが1本だ。
ここに事前学習コーパスとSFTデータの本体は入っていない。蒸留版のモデルカードには学習データの区分とトークン数の集計が載るものの、データセットそのものは配布物に含まれなかった。
重みだけを公開する形態と、学習データや学習コードまで開示する形態は、同じ言葉で語られても中身が違う。MiMo-V2.6ではライセンスの表記・測定条件・多言語性能・学習データのそれぞれで、書かれている範囲と書かれていない範囲が分かれた。調達の判断に使えるのは、この対照が示すところまでになる。
※出典:MiMo-V2.6 Technical Report(Hugging Face・XiaomiMiMo) / MiMo-V2.6-Pro-RL モデルカード(Hugging Face) / configuration_mimo_v2.py(Hugging Face・XiaomiMiMo) / MiMo-V2.6-Flash-RL モデルカード(Hugging Face) / MiMo-V2.6-Distill-Qwen-9B モデルカード(Hugging Face) / MiMo-V2.6(Xiaomi MiMo 公式ブログ) / MiMo-V2.6 RL training run(Xiaomi MiMo) / Fuli Luo氏の投稿(X) / XiaomiMiMo(GitHub) / Qwen3.5-9B(Hugging Face) / MiMo V2.6 Pro: Intelligence, Performance & Price Analysis(Artificial Analysis) / MiMo v2.6(Hacker News) / MiMo-V2.6-Distill-Qwen-9B-GGUF(Hugging Face・bartowski) / MiMo-V2.6-Flash-RL-GGUF(Hugging Face・ggml-org) / The MIT License(Open Source Initiative) / Open Weights: not quite what you’ve been told(Open Source Initiative)