OpenAI、ChatGPT広告が年換算売上10億ドルに到達――セルフサービスを4地域に開放
※本記事は2026/09/01時点での情報を基にしており、閲覧時点では内容や状況が変わっている可能性があります。
OpenAIは8月31日、公式ブログ「A milestone in expanding access to AI」で、ChatGPT上の広告事業「ChatGPT Ads」が年換算売上ランレート(annualized revenue run rate)10億ドルに到達したと公表した。原文は「ローンチから200日未満で」到達したと記している。
あわせて、広告主が数万社に達したこと、そしてインド・欧州・中東・北アフリカでAds Managerによるセルフサービス出稿を開放することを明らかにした。
発表の中身は新機能の追加ではなく、売上の規模・提供地域・既存機能の利用状況の報告が中心だ。ChatGPT広告は2月9日の米国でのテストとして始まった。当メディアが5月9日に報じたAds Managerのベータ提供からは、約4カ月が経過した。
そこで、開始から約7カ月で売上・広告主・提供国・機能がどこまで来たのかを、公表された数値と時系列に沿って整理してみたい。日本での提供状況も一次情報の範囲で確認する。
8月31日にOpenAIが公表した3つの新規事実
OpenAIが8月31日に公表した新しい事実は3つある。年換算売上ランレート10億ドルへの到達と、広告主が数万社に達したこと、そしてインド・欧州・中東・北アフリカ4地域でのセルフサービス出稿の開放だ。
年換算売上ランレート10億ドルの意味
OpenAIは「ローンチから200日未満で、ChatGPT Adsは年換算売上ランレート10億ドルに到達した」と書いた。年換算売上ランレート(annualized revenue run rate)は、ある時点の実績を12カ月分に引き伸ばした換算値を指す。
年間の実績額でも通期の見通しでもない。OpenAIは算定方法・基準となる期間・対象範囲のいずれも公表しておらず、どの期間の実績を基準に年換算したのかは分からない。円換算の金額も一次情報には示されていない。
起点となる「ローンチ」が何を指すかも、8月31日の発表本文には書かれていない。OpenAIの別のページは、2月9日に米国で広告のテストを開始したと記している。2月9日から200日後は8月28日に当たるが、10億ドルに到達した日付をOpenAIは公表していない。
広告主数万社と4地域へのセルフサービス開放
広告主の数について発表は「同プラットフォームは現在、数万社の広告主に利用されており、世界展開を続けている」と記した。正確な社数は本文に書かれていない。
地域の拡大については「本日この後から、広告主はインド・欧州・中東・北アフリカでAds Managerを通じてChatGPT広告を直接購入できるようになる」とした。対象はセルフサービス型のAds Managerで、開始時期は「本日この後」である。
この4地域に日本は含まれない。日本については、8月11日の更新でChatGPT広告の提供開始が公表されており、9月1日時点のセルフサービス提供国の一覧にも入っている(後述)。
提供国40カ国超とヘルプページの47カ国
提供範囲について発表は「ChatGPT広告は現在、OpenAI Ads Solutionsチームおよび代理店・技術パートナーを通じて40カ国超で利用できる」と記す。この40カ国超は、直販と代理店経由と技術パートナー経由を合わせた数だ。
OpenAIはこの記述からヘルプページ「Ads Manager Availability」にリンクを張っている。同ページは9月1日時点でセルフサービスが使える国として47カ国を挙げており、その一覧に日本が入っている。
40カ国超と47カ国は数え方が違う。前者は8月31日の発表本文にある提供国の数で、後者は9月1日時点でセルフサービスを利用できる国の数だ。OpenAIは発表本文からこの一覧にリンクしているものの、8月31日時点で47カ国だったかどうかは確認できない。
開始から約7カ月の経緯と既報との対比
ChatGPT広告は2月9日に米国でのテストとして始まり、8月31日の発表までに提供国と機能を広げてきた。当メディアが5月9日に報じた時点の数値と、8月31日に公表された数値を並べると、7カ月弱の変化が数字で読み取れる。ここではOpenAIの一次ページの更新履歴に沿って経緯を追い、既報との差を確認する。
1月16日の広告方針と2月9日の米国でのテスト開始
OpenAIは1月16日、広告への取り組み方をまとめたページを公開した。著者はFidji Simoで、「まだ広告をローンチしていないが、今後数週間のうちに米国の無料プランとGoプランで、ログイン済みの成人を対象にテストを始める予定である」と記している。
同じ日にOpenAIはChatGPT Goを米国とChatGPTの提供全地域に広げ、価格を月8ドルとした。広告を入れる狙いとして、より多くの人が利用制限を減らして、あるいは支払いなしで製品を使えるようにすることを挙げている。
テストが始まったのは2月9日である。一次ページの初出本文には「本日、米国でChatGPTでの広告のテストを開始します」とあり、対象は米国のFree・Goプランでログイン済みの成人ユーザーだった。この時点でPlus・Pro・Business・Enterprise・Educationの各プランは対象外とされていた。
3月26日の米国外への拡大と5月5日のAds Manager
3月26日の更新でOpenAIは、カナダ・オーストラリア・ニュージーランドでのパイロットを皮切りに米国外への拡大を始めると告知した。あわせて「消費者の信頼指標への影響は見られず、広告の非表示率も低い」と初期の結果を報告している。
5月5日にはセルフサービス型のAds Manager(ベータ)のロールアウトを開始した。同時にCPC入札を追加している。代理店パートナーはDentsu・Omnicom・Publicis・WPPの4社で、技術パートナーとしてAdobe・Criteo・Kargo・Pacvue・StackAdaptの5社を公表した。
5月5日の発表本文に、出稿対象国の記載はない。Ads Managerは段階的なロールアウトとして始まり、テストと改善を続けながら順次開いていくとされた。
計測面ではConversions APIとピクセルを「最近公開した」と書いており、5月5日より前に提供が始まっていた。同ページは「配信の判断はOpenAIの広告システムが行う」とも記している。
売上・広告主数・提供地域の変化
当メディアの既報と8月31日の発表を並べると、6つの論点で数値と記述が変わっている。
| 論点 | 5月9日時点(当メディア既報) | 8月31日時点(OpenAI公式) |
|---|---|---|
| 売上 | ローンチから6週間未満で1億ドル超の年換算収益(ARR) | 年換算売上ランレート10億ドル |
| 広告主数 | 600社以上 | 数万社 |
| 提供地域 | Ads Managerのベータ提供を段階的に開始(出稿対象国の記載なし) | 40カ国超で提供・4地域にセルフサービスを開放 |
| パートナー | 代理店4社と技術5社 | 技術・計測パートナー50社超 |
| 入札 | CPMにCPCを追加 | CPCと成果最適化型入札がキャンペーンの大半 |
| 計測 | ピクセルとConversions APIを提供 | 計測と最適化の重要な基盤 |
売上について、OpenAIは3月31日の資金調達の発表で「広告のパイロットは6週間未満でARR(年換算収益)1億ドル超に達した」と記していた。8月31日の発表では年換算売上ランレート10億ドルになった。表記は「ARR」と「年換算売上ランレート」で異なり、いずれも算定方法は公表されていない。
広告主数は、既報が二次報道に基づいて伝えた600社以上から数万社になった。600社以上という数字はOpenAIの一次情報では確認できていない。提供地域は40カ国超に広がり、セルフサービスの対象も4地域に開いた。
既報が挙げた2026年の広告収益目標25億ドルと2030年の1,000億ドルは、当メディアがAxiosの報道として引いた数字であり、8月31日の発表には登場しない。
入札・計測・パートナーの位置づけの変化
発表は「CPCと成果最適化型の入札がキャンペーンの大半を占め、PixelとConversions APIが計測と最適化の重要な基盤になっている」と記した。既報の時点ではCPC入札もConversions APIも追加されたばかりで、大半を占めるとは書かれていなかった。
ターゲティングでは、商品フィード・プラットフォーム別と地域別のターゲティング・カスタムオーディエンスが挙がっている。発表はこれらを、広告主が自社に関連の深い顧客に届くための機能として位置づけた。
パートナーについて発表は「その後、当社のエコシステムは50社超の技術・計測パートナーに拡大した」と記す。5月5日時点で公表されていた技術パートナーは5社だった。50社超は技術・計測パートナーの数で、代理店を含むかどうかは明示されていない。
中小企業についても「5月のAds Manager導入によってプラットフォームは中小企業に開かれ、いまでは中小企業が事業の相応の割合を占めている」としている。
日本でChatGPT広告はどこまで使えるか
日本でChatGPT広告を出せるかどうかについて、OpenAIの一次情報から確認できる範囲は限られている。公式ページの更新履歴で日本での提供開始が公表されており、ヘルプページのセルフサービス提供国の一覧にも日本が入っている。一方で、開始日や日本の広告主数は公表されていない。
5月7日の予告と8月11日の提供開始
OpenAIの一次ページ「Testing ads in ChatGPT」の更新履歴で日本が初めて明記されたのは、5月7日の更新である。「今後数週間以内に、英国・メキシコ・ブラジル・日本・韓国でChatGPTの広告パイロットを拡大する予定である」と予告された。
提供開始が公表されたのは8月11日の更新だ。OpenAIの公式日本語版には「ChatGPT 広告は、英国、メキシコ、ブラジル、日本、韓国で提供を開始しました」とある。同じ更新で「今年中にさらに多くの市場へ展開していきます」とも書かれた。
日本での提供開始日そのものは、この更新の日付以上には特定できない。OpenAIの一次ページは更新を随時追記する形式で、8月11日は更新が反映された日付に当たる。日本の広告主数と日本での売上も、OpenAIの公式ページには示されていない。
セルフサービス提供国47カ国に日本が含まれる
ヘルプページ「Ads Manager Availability」は、セルフサービスが利用できる国として47カ国を挙げている。9月1日時点の一覧に日本が含まれ、状態はAvailableと明記された。日本の企業がAds Managerに直接登録して出稿できる状態にあることまでは、この一覧から確認できる。
8月31日に新しくセルフサービスが開くのはインド・欧州・中東・北アフリカの4地域で、日本はこの中に入っていない。9月1日時点で日本はAvailableと表示されているが、その状態がいつから続いているのかは一覧に書かれていない。
利用できるようになった日付は、一次情報にも二次報道にも見当たらない。ヘルプページは9月1日に更新されており、8月31日時点で同じ47カ国だったかどうかも確認できない。日本のローンチパートナーや日本での広告単価も、確認したOpenAIの公式ページには書かれていない。
ChatGPT広告が出る場所と出ない場所
広告がどこに表示され、どこに表示されないのかは、ヘルプページ「Ads in ChatGPT」に現行の条件が書かれている。8月31日の発表本文にプラン別の条件は書かれておらず、プラン・年齢・画面・トピックによる除外の定めはヘルプページ側に置かれている。
広告が表示されるプランと18歳未満の扱い
ヘルプページは「広告はFreeプランとGoプランの利用者に表示されることがある。Plus・Pro・Business・Enterprise・Eduのアカウントに広告は表示されない」と記す。18歳未満に属すると判定されたアカウントにも、OpenAIは広告を表示しない。
1月16日のページで広告を表示しないプランとして挙がっていたのはPlus・Pro・Business・Enterpriseの4つで、Eduは含まれていなかった。2月9日の初出本文とヘルプページの現行版には、Education(Edu)が加わっている。現行の条件を示しているのはヘルプページの記述だ。
無料プランには、広告を見ない選択肢も用意されている。ヘルプページによれば、広告なしの無料オプションを選ぶと1日あたりのメッセージ数が減り、画像生成やdeep researchといった一部のツールを利用できなくなる。
広告が表示されない画面とトピック
表示位置についてヘルプページは「広告は回答の末尾の下に表示されることがある。広告には広告であることが明示され、ChatGPTの回答とは視覚的に分離される」と記す。
広告を出さない画面も定められた。テスト期間中はChatGPT Atlasブラウザに広告を表示せず、一時的なチャット(Temporary Chat)にも広告は出ない。健康・メンタルヘルス・政治のような機微なトピックや規制対象のトピックの近くにも広告を出さず、政治広告そのものを現時点では認めていない。
地域による違いも定められた。欧州経済領域(EEA)とスイスでは、パーソナライズ広告を当初は提供しないとヘルプページに書かれている。
通常の広告配信で広告主が受け取るのは、総表示回数やクリック数のような集計された非識別の情報だけで、利用者のチャットや履歴・氏名・正確な位置情報は渡らない。利用者が広告を通じて広告主にメッセージを送った場合は、直接送ったメッセージだけを広告主が見られる。
8月31日の発表に書かれていない事柄
8月31日の発表は数値と地域の拡大を伝える一方で、書かれていない事柄も多い。今後の予定に時期の記載がなく、出稿の金額に関する数値も本文には出てこない。発表を読む上では、公表された範囲と公表されていない範囲の境目が問題になる。ここでは、発表が触れていない範囲を整理する。
今後の予定に時期の記載はない
今後についてOpenAIは「次の成長段階では、ChatGPT Adsをより多くの市場に広げ、追加のフォーマット・目的・購入方法・計測機能を導入する」と記した。続けて「企業がChatGPTの中でより自然な形で消費者と関わる新しい方法も探る」としている。
今後の具体的な展開項目を示す記述はこの2文で、時期は書かれていない。どの市場をいつ開くのか、どのフォーマットをいつ追加するのかは示されておらず、年内や来年といった目安も置かれていない。
発表は「意図を探り、選択肢を評価し、決定する人が増えるほど、商品やサービスの発見を助ける機会がある」とも書いた。事業の方向としての説明であって、具体的な計画の記述ではない。
金額と利用者数をめぐる記述の範囲
発表本文に登場しない数値は多い。最低出稿額・クリック単価の目安・日本の広告主数・広告収益の目標額は、いずれも8月31日の発表には書かれていない。
5月5日のページにも8月31日の発表にも、出稿の金額に関する数値は登場しない。5月5日のページにあるのはCPMからCPCへの拡張の説明で、入札額の水準には触れていない。
10億人超という数字の扱いにも注意が必要だ。OpenAIは「広告付きの無料プランが、10億人超の週間アクティブユーザーへのChatGPT提供を支えている」と書いており、週間利用者数を単独で宣言した記述ではない。広告効果の例として挙がったROAS3倍と新規顧客80%超も、社名のない1社ずつの事例である。
※出典:A milestone in expanding access to AI(OpenAI) / Testing ads in ChatGPT(OpenAI・2月9日初出・8月11日更新) / ChatGPT での広告のテスト(OpenAI日本語版・2月9日初出・8月11日更新) / Our approach to advertising and expanding access to ChatGPT(OpenAI) / New ways to buy ChatGPT ads(OpenAI) / OpenAI raises $122 billion to accelerate the next phase of AI(OpenAI) / Ads Manager Availability(OpenAI Help Center) / Ads in ChatGPT(OpenAI Help Center)